その日、二限目の授業をサボって三限目から大学に行くと、同じ授業をとっているはずの菜々が講義室にいなかった。大学に来るまでに何度かラインも入れているのに、既読にはなっても返事がない。

 どこにいるんだろう。

 スマホを気にしつつ空いている席に座ると、同じ学部の高本が横に座って話しかけてきた。

「なあ、コウキ。おまえ、あの写真なに?」
「写真?」
「学部内でちょっと話題になってたよ。コウキがついに、カナエに落ちたって」
「はあ……?」
「ほら、これ」

 高本がスマホを操作して、俺に見せてくる。気怠げに隣に視線を向けた俺は、画面に表示されたSNSの投稿に真っ青になった。

「は、なにこれ……」
「なにこれ、って。コウキだろ」

『コウキ、20歳おめでと〜♡』

 そんな投稿文とともにSNSにアップされていたのは、同じゼミのカナエとの自撮りっぽいツーショット。もちろん、投稿者はカナエだ。

 ツーショットのあとには、酔い潰れて眠った俺の顔のアップの写真まで投稿されていて。

『寝顔、かわい〜』と、あらぬ誤解を受けそうな一言が添えられている。

 同じゼミのカナエは派手目の美人で、いろんな男と遊びまくってるらしいというウワサのある女の子だった。

 カナエは、なぜかゼミのメンバーの中でも俺のことが気に入っているらしく……。これまでに何度か「ふたりでごはん行こうよ」と誘われ、その度に「ふたりはムリだ」と断っていた。菜々に誤解をされたくないし、カナエと接するときは気をつけていたつもりだった。

 だけど昨日の夜の家飲みに、カナエは途中から参加してきて。いつもすごく気をつけているのに、酔っ払ったノリで一緒に写真を撮ってしまった。だけど、彼女と絡んだのはそれだけだ。