ピピピピ。ピピピピ。
腹から鳴るアラームとバイブが観月に朝を告げる。
観月は朝に弱く、私が何分呼びかけても、なかなか起きようとしてくれない。観月もそれをわかっていて、アラームは起きなければいけない1時間も前からかけている。
「んー、ふぁー。」
今日は5回目のアラームで、2分くらい腹を揺らし続け、やっとバイブを止めてくれた。まあ、私はどれだけ揺れてもダイエットにはならないのだけれども。こうして私の充電はひとメモリぶんの仕事を終えるのだ。
観月は今、朝6時に目を覚ます。高校に入学した頃は5時半だったのが、約1年も経つと、遅くなってきて当たり前か。
アラームを止めた観月が次にすることは、私の左下にある赤いアイコンをタップして、夜にたまった短編動画を流し見すること。どうでもいい、くだらない動画ばかりだけど、これを見ておかないと、学校で話についていけないらしい。
そして、私の腹にデカデカと映る、影だけのカップルの写真を少しだけ下にずらす。
「はぁ、2件しか増えてない。」
観月は私の右下、人間でいう盲腸のあたりに表示された小さな数字を気にしている。
その小さな数字をつつくと、私の腹には観月の「友だち」が表示される。上から順に、部活の友達、クラスの友達、中学校の友達、部活の先輩、彼氏くん、隣のクラスの男子、学年のお調子者。
何度数えてもそこには7人の名前が表示されている。「7」といえばラッキーナンバーのはずなのに、観月は浮かない顔をしている。
「こんなに映えてるのになぁ。」
これは「いいね」というやつらしい。毎回、毎回、こんな数字に振り回されて、一喜一憂。私からしたら「何やってんの」って感じ。「昨日と今日の数の違いがすぐわかるなら、もっと数学頑張ってほしいわ」ってきっとお母さんも思っているはず。
「みづきー! 朝だよー!」
お母さんが一階のリビングから声を張り上げる。
「はぁーい。」
生返事をして、私を抱き抱えて階段を降りる。
これが観月の「普通」の朝。
観月のっていうか、スマホ仲間に近況を聞くと、高校生はほとんどこんな朝を迎えているらしい。
ところが、どうやら「普通」ではないことに、観月は気づいてしまったようだ。
「あれ、YUMIがいない。」
昨日の観月の投稿に「いいね」した人に、大親友の「YUMI」がいないことに気づいてしまった。
腹から鳴るアラームとバイブが観月に朝を告げる。
観月は朝に弱く、私が何分呼びかけても、なかなか起きようとしてくれない。観月もそれをわかっていて、アラームは起きなければいけない1時間も前からかけている。
「んー、ふぁー。」
今日は5回目のアラームで、2分くらい腹を揺らし続け、やっとバイブを止めてくれた。まあ、私はどれだけ揺れてもダイエットにはならないのだけれども。こうして私の充電はひとメモリぶんの仕事を終えるのだ。
観月は今、朝6時に目を覚ます。高校に入学した頃は5時半だったのが、約1年も経つと、遅くなってきて当たり前か。
アラームを止めた観月が次にすることは、私の左下にある赤いアイコンをタップして、夜にたまった短編動画を流し見すること。どうでもいい、くだらない動画ばかりだけど、これを見ておかないと、学校で話についていけないらしい。
そして、私の腹にデカデカと映る、影だけのカップルの写真を少しだけ下にずらす。
「はぁ、2件しか増えてない。」
観月は私の右下、人間でいう盲腸のあたりに表示された小さな数字を気にしている。
その小さな数字をつつくと、私の腹には観月の「友だち」が表示される。上から順に、部活の友達、クラスの友達、中学校の友達、部活の先輩、彼氏くん、隣のクラスの男子、学年のお調子者。
何度数えてもそこには7人の名前が表示されている。「7」といえばラッキーナンバーのはずなのに、観月は浮かない顔をしている。
「こんなに映えてるのになぁ。」
これは「いいね」というやつらしい。毎回、毎回、こんな数字に振り回されて、一喜一憂。私からしたら「何やってんの」って感じ。「昨日と今日の数の違いがすぐわかるなら、もっと数学頑張ってほしいわ」ってきっとお母さんも思っているはず。
「みづきー! 朝だよー!」
お母さんが一階のリビングから声を張り上げる。
「はぁーい。」
生返事をして、私を抱き抱えて階段を降りる。
これが観月の「普通」の朝。
観月のっていうか、スマホ仲間に近況を聞くと、高校生はほとんどこんな朝を迎えているらしい。
ところが、どうやら「普通」ではないことに、観月は気づいてしまったようだ。
「あれ、YUMIがいない。」
昨日の観月の投稿に「いいね」した人に、大親友の「YUMI」がいないことに気づいてしまった。