ずっと雨宮くんに会いたかった。
真実を確かめたかった。
雨宮くんには聞きたいことがたくさんある。
それなのに季節外れの晴れ予報で、雨宮くんには会えていなかった。
ハンカチと傘だって返せていない。
朝晴れていても、毎日ハンカチと雨宮くんの傘は持ち歩いていた。
夕方には雨が降るかもしれない。
いつ雨宮くんに会えても大丈夫なように準備していた。
雨宮くんと最後に話してから1週間。
変わったのはいじめが無くなったことと、彩乃とまた一緒にお弁当を囲めるようになったこと。
「杏子、一緒に帰らない?」
「ごめん、彩乃。今日は寄りたいところがあって……」
「そっか、じゃあまた明日ね」
「うん、また明日」
彩乃と別れて、生徒玄関を出る。
ぺトリコールだ。雨の匂いがする。
もしかしたらもうすぐ雨が降るかもしれない。
私の予想は的中した。
公園へと向かって歩いている途中で、雨が降り始めてきた。
雨宮くんに会える。
自然と足早になる。
「……いた」
雨宮くんは今日も雨の降る公園で1人、ブランコを漕いでいた。
「雨宮くん」
「あっ、杏子。お久しぶり」
雨宮くんはいつものように優しく微笑んだ。
「雨宮くん。雨宮くんに聞きたいことがたくさんあるの」
「うん」
頷いた雨宮くんは、全てを察しているようだった。
「あのね、私の誤解が解けたの。ある動画がSNSに上がって拡散されて。そこに私と信田くんの告白シーンが映ってて、会話のやり取りも録音されてたの。その動画を流したアカウントが“雨”って名前で。もしかしたらって」
「杏子の思ってる通りだよ。そのアカウントは僕。僕、映像部に入ってて、その時に近くで撮影してたんだ。それがたまたま僕の手元にあって」
それを雨宮くんがSNSに投稿したみたいだった。
「やっぱり雨宮くんだったんだ」
雨宮くんが私を助けてくれた。
「うん。最後の悪あがき。杏子を救えてよかった」
良かったと雨宮くんはどこか悲しげに微笑んだ。