それから毎日公園に通っている。
もしかしたら今日は雨宮くんに会えるかもしれないという期待を持ちながら。
でも次の日もその次の日も雨宮くんは来なかった。
公園に通い始めてから5日目。
今日は久しぶりに雨が降っていた。
そんな今日もいじめを受けて、必要な傘を隠されていた。
こんなにたくさん傘が並んでいる中で、なんで私の傘がわかったんだろう。
朝、姿を見られていたのだろうか。
名前を書いているわけじゃないし、そうでもしないとわからないはず。
いじめる方もご丁寧に大変だなと思いつつ、校内中を探し回った。
かなり探したけれど、傘は見つからなかった。
学校の外に捨てられたのだろうか。
あいにく折りたたみ傘は持っていないし、梅雨の雨は病みそうにもない。
このまま帰るしかなかった。
今日は公園に寄るのはやめようかな。
雨はそこそこ強く降っていて、髪の毛から雨の雫が滴っていた。
そう思ったのに、足は公園の方へと向かっている。
ある会話を思い出したのだ。
なんで雨の日なんかに公園にいるのかと尋ねた時、雨宮くんは落ち着くからと言っていた。
雨の日の今日ならもしかしたら……そう思った。
もしかしたらいるかもしれない。
そう気持ちが高ぶってくる。
気持ちと同時に公園へ向かう足も速くなっていた。
公園に着く。
晴れの日は毎日のように遊びに来ていた小学生たちの声はしない。
その代わりに、君がいた。
「杏子!?どうしたの、そんなびしょ濡れで!」
ブランコに乗っていた雨宮くんが驚いてこちらへ向かってきた。
今日はちゃんと傘を持ってきているらしい。
雨宮くんはその傘に私を入れてくれた。
「あはは、ちょっとね」
「今日は一日中雨が降っていたのに傘を忘れたなんてことはないでしょ?」
「うん……」
「もしかして傘無くしちゃった?」
雨宮くんには全てお見通しだ。
それがいじめで隠されたとは思ってもいないだろうけれど。
雨宮くんの言葉に、私はこくんと頷いた。
「そっか、大変だったね。あそこ、座ろう?」
雨宮くんが指さしたのは、公園のベンチ。
そこには屋根があって、ベンチは濡れていなかった。
「これ使って?」
手渡されたのは少し厚手のハンカチだった。
「でも……」
「いいから、ね、ほら」
傘を折りたたんだ雨宮くんは、私の濡れた髪や制服を拭いてくれた。
「杏子、大丈夫?」
「え?」
「泣きそうな顔してるから」
そんなつもりはなかった。
雨宮くんに会えたことが嬉しかった。
嬉しくて泣きたくなったのかもしれない。