昨日から梅雨に入ったらしい。
今日の朝、ニュースでそう報道されていた。
なんて憂鬱な朝だろう。
部屋のカーテンを開けても、どんよりとした空からはあまり光が届かない。
やっぱり雨の日は嫌いだ。
「行ってきます」
つま先をコンコンとついて靴を履き、家を出た。
玄関を出てすぐに傘をさす。
この天気のせいで学校までの道のりもすごく長く感じた。
学校に着き、傘を折りたたみ傘立てに立て、靴を履き替えて教室へ向かう。
教室に迎えに連れて、話し声が大きくなる。
なにやら今日は騒がしい。
何があったのだろうと足早に教室へとむかった。
教室前の廊下で、見慣れた姿を見かけた。彩乃だ。
なぜか元気がなさそうで俯いている。
「おはよう、彩乃。どうかした?」
背中越しにそう問いかけた。
「えっ」
すると一斉に浴びる視線。
ありえないという顔でこちらを見てくる。
私が一体何をしたというのだろう。
元気がなさそうな友達に声をかけただけだというのに。
「ねぇ、杏子(あんず)。あんた何したのかわかってる?」
「何って……」
「あんなことしておいて何事もなく話しかけるなんて、神経どうかしてるんじゃないの?」
四方八方から浴びせられる罵倒。
周りにいる人全員が敵に見えた。
「あんなことって?」
「とぼけるのもいい加減にしなよ!彩乃のことこんなに傷つけて楽しい?」
「ちょっと意味が……」
「はぁ、あんたには絶望したわ。もう私らに話しかけないで。本っ当に最低」
最後の最後まで意味がわからない。
私が何をしたって言うの?
彩乃は最後まで顔を上げず、何も話さなかった。
意味がわからないまま、教室の中に入り、その真実を知る。
黒板に大きく書かれた“友達の彼氏を奪った女”という文字。
「何、これ……」
そこには私の名前が書かれていて、信田くんと一緒にいる写真が貼られていた。
「最低だよね」
「彩乃が可哀想」
後ろで声がする。
この日から私は、クラスのみんなから無視されるようになった。