「あと、もう一つだけ確認したいことがあるの」
「雨宮くんって──」
なんて聞いたらいいのかわからない。
こうして会って話しているのに、雨宮くんは死んだなんて考えられない。
それなら、今ここにいるのは誰?
「僕は雨宮 奏。杏子の隣のクラスで、本当は最初から杏子のことを知ってたんだ。黙っててごめんね。それで1ヶ月くらい前に交通事故に遭って寝たきりだった。でもそのまま死んじゃった」
雨宮くんは淡々と話す。
「その、つまりそれって……」
「今の僕は幽霊って言うのかな?死ぬ前に杏子を助けたいって思ってたから未練タラタラでなかなか逝けなかったみたい」
雨宮くんは幽霊。
そんなの信じられない。
こうして話だってできているのに。
「ずっと生死をさ迷っていたから、明るい陽の光の元には出られなかった。だから、雨の日にしか杏子に会うことができなかった」
そう言われて妙に納得が行く。
魂のままだから、雨の日の辺りが暗い時にしか会えなかった。
だから、いつも雨宮くんは雨の日にいた。
「でも、やっと杏子を救うことができたから、僕の未練はなくなったみたい」
「それって……」
死んでしまった人間の魂は、未練があると現世に留まると聞いたことがある。
そして、それが解消されると成仏できるんだと。
「じゃあ……もう雨宮くんとは会えないの?」
そう聞くのが怖かった。
雨宮くんが亡くなったと学校で聞いた時からずっと。
もう雨宮くんと会えないんじゃないかって。
「うん、もう今日でさよなら」
雨宮くんはそう言って微笑んだ。
私の大好きな雨宮くんの笑顔だった。