毒を食らわば、愛を喰らわば最後まで。
 冷たい風が肌を撫でるその国は、今まできたどこよりも異質な空間が広がっていた。華街を通り抜け見えてきたその建物を前に、暘谷(ようこく)は思わず顔をしかめる。
「汚い……」
 きらびやかに並べられた街並みは、仮面を被っているだけだ。薄く汚れたそれと――澱んだ空気を見ながら暘谷は胃液がせり上ってくる感覚を覚える。なんとか飲み込みながら肩を落とし、ふうと深く息を吐いた。
 各国を回る、商人キャラバン隊。
 各地の商品はもちろん伝統舞踊を披露する集団は、行く先々で人気を博している。
(はく)、俺ちょっと外出てくるよ」
「え、暘谷くんその格好で!? 気をつけてね?」
 布切れ一枚を羽織りながら、キャラバン隊の外へ出る。後宮の目の前であるその街は今回滞在をする拠点であり、つい興味本位で見たいと思った気持ちが半分ある。そう、半分だけだ。
「本当に、汚いなぁ……」
 暘谷にとっては文字通り澱んでいるその視界は、まるで黒い霧と錯覚してしまうほど。この国には、欲と憎悪で溢れていた。  
 大陸一の大国、陵。
 一人の帝が支配をするその国は、名前が知らないものはいないというほどの規模を誇っている。そんな国で、名の知れたキャラバンがくる。それは国にとってもキャラバンにとっても、有益なはずだったのに。
(なんだか、息苦しい)
 街の喧騒は、どこの国だって同じだ。同じはずなのに、陵の空気は明らかに違う。
 憎悪の澱みは世界を支配するようで、それが暘谷には不快でしかなかった。
(ここまで濃いのは、いつ以来だろう)
 それは、そう。暘谷が物心ついた頃から。
 暘谷の最初の記憶は、喜びを示す黄色をいっぱいに広げた、両親の顔すら判別できないほどの世界だった。
 それが人の感情や憎悪であり、ものによって色が違うと気づいたのはかなり後になってから。濃さや色はそれぞれが違い、それはキャラバン隊に入ってからどの国に行っても見る事が多かった。しかしそれでも、この濃さは話が違ってくる。
「やっぱり、あれが理由かなぁ……」
 黒い霧は、ある一点の方へ向かうにつれ濃くなっていく。それがこの国の誇る帝の側室達――男の身なりをした暘谷には関係のない、後宮と呼ばれる女の園である事はもちろんわかった。
 前に寄ったどこかの国でも、似たようなものはあった。しかしそれと比にならない大きさのそこは、関係のない暘谷からしても目を見張るほどだ。
「明日、あそこにねぇ」
 暘谷は明日、関係ないはずの後宮へ足を踏み入れる。時折外からのキャラバン隊や商人を招き入れ物の購入をするらしく、そこで外の文化を妃達に披露する事になっている。
 男の身なりでありながら踊り子のセンターである暘谷も、もちろん披露する側の一人だ。ミスは、許されない。
「早く、この国を出たいんだよな」
 誰に言うでもなく、そんな事を呟いた時。喧騒の中で、ドン、となにかに肩が当たったような気がした。
「おい兄ちゃん、痛てぇな」
「っ……」
 あからさまにガラの悪い男達数人に、暘谷は目を細める。あぁ厄介なのにぶつかったと、不快な黒い澱みがかかっているのを見つめながら。
「すみません、ちょっとボーッとしてて」
「へぇ、自分から当たってきてそれで許されると思ってんのか?」
(……これだから、華街の近くは苦手だ)
 街中であっても、その毛並みは立地によって異なる。暘谷の今いる通りは、華街からすぐの道。ゴロツキや貧民は当然のように通り、他の国と同じなら追い剥ぎもいるはずだ。そもそも暘谷は一応ではあるが人に当たらないよう歩いていたからこそ、どちらの不注意かと言えば完全にそれは目の前の男達だ。
「ほら兄ちゃん、謝る気があるならなにか置いてけよ」
「ないならそうだな、綺麗なその服でもいいんじゃねぇか?」
(やっぱり、追い剥ぎ)
 どどめ色の澱みは、欲望。
 嫌悪感を抱くものを孕んだそれは色濃く目に見えてしまい、それだけで暘谷は顔をしかめた。どのようにこの場を乗り切ろうかと思考を巡らせているところで、突然の痛みが暘谷の意識を引き戻した。
「ほら聞いてるのか、兄ちゃん」
「痛っ!?」
 ぐいと手首を掴まれて、呻き声をあげた。
 同い年ほどの男よりは確実に細いその腕は簡単に悲鳴をあげ、逆に男達は気を良くする。周りには邪な気持ちである桃色の澱みが生まれていて、暘谷に欲情しているのは見るだけでわかった。
「物が置いてけねぇってなら、身体でもいいけど」
「……へぇ、あんたそっちの気でもあんの? ずいぶんと桃色が周りに、あっ」
 口が滑って出た言葉は、運良く聞かれてなかったらしい。ただし、運が良いのはそれだけだ。
「いや、兄ちゃんならいけそうだね」 舐め回すような視線に、ゾッとする。
 この状況は明らかに不味いと、本能がそう叫んでいる。どうこの状況を切り抜けるべきか、どうやってキャラバン隊に戻るか。それを考えても、今の暘谷には逃げる事ができない。

 男の身なりでも――結局暘谷は乙女他ならないのだから。

(あれなら、こいつの股間蹴り上げて!)
 自分でも、少し物騒な事を考えている自覚はあった。しかし、それしか今は思いつかない。だからと地面を踏みながら、ゆっくりと呼吸を整える。ぐっと足に力を入れたところで目の前の男達は気づいておらず、だからこれが好機だと思ったが、その足が蹴り上げられる事はなかった。

「こんなところで、なにをしている」

 凛とした、鋭い声が聞こえる。
 暘谷も男達も、聞いた事のない声。しかしそれは異様な存在感を放ち、それだけで通りは凍りつくような感覚だった。誰一人として逃がさないという、そういった空間。おそるおそる声した方へ目を向けると、そこにいたのは上質な布で作られた服を身に纏う一人の青年だった。
「ここは後宮の警備員も通る場所だが、そんなところで年端も行かない子を襲うのはいかがなものかな?」
 あくまでも優しく、しかし有無を言わせないような声。
 それだけで、今目の前の奴らを揺さぶるにはじゅうぶんだ。
「くそっ……」
 悔しそうに悪態をついたそいつは、乱暴に暘谷から手を離す。そのまま仲間と共に逃げていく姿は、正直滑稽なものだった。
「大丈夫か?」
 青年は暘谷を、心配そうに覗き込む。
 手首は痛みがあり痕が残りそうだったが、それ以外はなんともない。
「……どうも、正直助かったよ」
 だから素直に、頭を下げる。おそらく身なりから貴族辺りである事まではわかったが、挨拶の仕方まで今は気が回らなかった。
「その格好は……もしや、キャラバン隊か」
「あぁ、明日は後宮で舞をさせてもらうんだ」
 そんな、世間話のような内容。
 それを聞いた青年の指先が一瞬跳ねたように見えたが、それを隠すように頬を緩ませていた。
「その姿で、踊るのか?」
「その姿って、当たり前だろ?」
 薄い舞の衣装を指さす青年は、少し驚きと羞恥の顔を滲ませていた。自分が躍る訳ではないのに、と喉元まで出てきたがそれは飲み込んでおく。
「なんだ、こういった衣装はこの辺りでは破廉恥になるのか?」
「いやそんな事は、とても似合っているという方が……」
「嬉しい事言ってくれんじゃん……あ、そろそろ帰らないと。ありがとうお兄さん、しばらくこの国にはいるからもし暇があったら寄っておくれ!」
 長居をしては、最終の打ち合わせに間に合わない。そう思いながら簡単に言葉を投げると、足早に青年から離れていく。
「あ、おいちょっと、君、名前を……!」
 なにかを言っているのは聞こえた気もするが、曖昧で。ただ暘谷は青年に対して、一つ気になる事があった。これだけ澱んだ国の中で、毒のような黒い霧のかかる世界で。彼の周りだけは、他とは少し異なっていて。
「なんであのお兄さんの周りだけ、白かったんだ?」
 そして青年も、ものは違えど暘谷にある疑問を持つ。

「今のはなぜ――あのような姿をしているんだ?」

 二人の疑問は、まだお互いに知る由もない。

 ***

 暘谷という名前は、本名だ。
 中性的な声や男とも女とも取れるその名は、こうして男装をしながら舞う事になってからは、とてもやりやすいと思っている。
 男装のきっかけは、元は些細な事だ。出身である国の流行病で両親を亡くし金もなく困り果てていた時に、当時のキャラバン隊の隊長が男装をして踊る事を提案してきた。元は商人として売り子をしていた暘谷だったが、金を弾むと言われれば一瞬の事。すぐに二つ返事をしたところで、今の地位に至っている。
 金が貰えれば、暘谷はそれでよかったのだ。それ以上でも、それ以下でもない。生きるために暘谷自身が、選んだ道だった。それがいつしか男装のままで生活をするようになり、今では彼女が女であると知るのはキャラバン隊のメンバーだけとなっている。
 そんな男装の踊り子である暘谷は今、舞台の上にいない。それなのに心臓の音はやけにうるさく、自分のものではないと錯覚するほどだ。
 後宮に入り、準備をしていた矢先。暘谷に遣いの者だと言った宦官達は、そのままあれよあれよとこの部屋に案内をしてきた。理由もわからず、誰からの用なのかもわからない。それが暘谷にとって、今最も恐れている事だ。
(私、なにか粗相でもした?)
 通されたのは上のお方が出入りすると聞く部屋で、暘谷はそこで一人腰をおろしていた。本来なら踊り子の一人が入れるような、そんな簡単な場所ではない。今頃、本当ならリハーサルをしているはずなのに。それなのに、なぜこのような場所に自分は呼ばれているのか。それは検討もつかず、ただ肩を竦めて自分を呼びつけた相手を待つ他ない。
 そんな時間が、どれだけ続いただろうか。
 突然締め切られていた扉がガラリと開けられると、そこには柔和な笑みを浮かべる青年がいた。暘谷はこの顔を、知っている。
「あんた、昨日の」
「あぁ急にお呼びだてをして申し訳なかった、私は(るい)と言います……しがない、帝の付き人です」
(しがないなら、こんな部屋は使えないと思うけど)
 そこには触れずに、そっと言葉を飲み込んだ。
「そんな作らなくても、昨日の言葉遣いでいいよ。呼び方は暘谷でいい……それでその付き人が、俺にどんな要件で?」
「では、お言葉に甘えて……」
 茶化すように言葉をかけると、睿は少しだけ顔をしかめながらかんとも言えない表情を作る。瞬間的に彼の周りに広がったのは青灰色の澱みで、それだけで言葉に悩んでいるのは察する事ができた。
「キャラバン隊随一の踊り子暘谷に折り入ってお願いがあり……この国には、七日滞在すると聞いている。今日を抜くと残り五日、その間に後宮内で舞を披露して貰えないだろうかと」
「舞を、か? それなら俺ではなく隊長に言えば、全員呼ぶ事ができるのに」
「いや、舞うのは暘谷一人だ」
「……俺だけ?」
 我ながら、素っ頓狂な声であったとは思う。
 しかし睿の表情は真剣そのもので、嘘をついている様子はまったくなかった。
「けど俺、男だぞ?」
「そこは安心していい、気がいってしまうような妃や侍女はこの後宮にいないからな……下女はどうかわからないが、そこは俺がなんとかしよう」
 一切フォローにもなっていない気がしたが、どうやら暘谷に断る選択肢は用意されていないらしい。
 諦めながら力なく首を横に振り、すうと睿の顔へ目を向ける。
「……俺は、なにをすればいいんだ?」
「……と、言うと?」
「踊り子を、しかも男を一人後宮に招き入れるのは考えにくい、なにか裏があるんだよな?」
 遠慮はせず、言葉を投げつける。
 そんな暘谷の様子をどう思ったのか、睿はすうと目を細めていた。
「話が早いようで助かる……一つだけ、協力をしてほしい。その目で、どのような感情を持っているか見極められる瞳で、帝を暗殺しようとしている不届き者が誰なのかを」
 情報の多い言葉に、暘谷はどこから反応をするべきかわからなかった。帝を暗殺しようとしている者がいる事に対してか、それとも自分の事を過信している睿に対してか。そんな呑気な事を考えたところで、もっと触れるべき部分がある事に気づきながらがばりを顔を上げる。
「ま、待て、なぜそれを、目の事を睿がっ」
「昨日の悪漢との事だ。悪いが声をかける前から見させてもらっていた……君はなにやら、色の事に触れていたな?」
「それは、イメージというか」
「いや、そんな簡単な話ではないはずだ……それにそれは隠す事ではない――この国で、澱みが見える者は一割にも満たないが確かに存在をしていると聞く」
 極稀な話だがな、と付け加えた睿はなにかを考えるように薄く笑っている。
どこか毒を孕んだようなその目には、気づかないふりをした。
 一方の暘谷からすれば、自分以外で同じように澱みが見える人物がいるかもしれないという事が、驚きでしかなった。今までどの国へ行っても同じような人間の話を聞いた試しはなく、にわかには信じられない。
「けど、本当にそんな帝の命を奪おうとする不届きな奴がいるのか? 聞いた話、この国は帝様が絶対権力らしいじゃないか」
「あぁ、絶対権力だ。しかしその帝を邪魔だと思うような存在は、どの時代にも存在をする……信頼できる情報筋から、今回のキャラバン隊入国の混乱に乗じそいつが事を起こすと聞いてな」
 低い睿の声に、暘谷はつい肩を揺らす。
 まるで肉親を殺されたような、それか肉親を殺しそうなそれは黒い澱みを伴い、顔をしかめる。
「……すまない、澱みが出ているだろうな。俺には見えないが、今のは反応でわかる」
 申し訳なさそうに目線を逸らした睿は、すぐに感情を収めたのは黒い澱みが消えて行く。
「あんた、警戒心とかないわけ? その暗殺犯が俺だったらどうするんだよ……キャラバン隊がなにも知らず隣国で殺害依頼されるのだって、よくある話だろ」
「なんだ、暘谷はされたのか?」
「いや、されてないけど……」
「ならいいじゃないか」
 やけにあっけらかんとした態度を見せる睿に、言い返すのはやめた。
「暘谷がキャラバン隊にいる理由も、申し訳ないが調べさせてもらった……孤児でお金がなく、それでキャラバン隊に引き取られたとの事だったな。報酬はその倍出そう」
「いいよ、そこまでしなくても……役に立つかはわからないけど、俺でよければやる。昨日の借りもあるしな」
 厄介なのに絡まれたのだって、もしあそこで睿がいなければどうなっていたか想像もしたくない、だからと思い小さく頷くと、睿は嬉しそうに顔を上げた。黄色い澱みのおかげで、言葉を聞く前から反応はわかる。
「ありがとう、恩に着る……! 後宮内での暘谷の身の安全と衣食住は保証しよう!」
「そこまでしなくてもいいって……なぁ睿、今なんて言った?」
 聞き捨てならない一言に顔を上げると、睿は逆に首を傾げている。まるで、なにをおかしい事を言っているのだと言いたげな顔で。
「まさか俺、ここに住むのか?」
「あぁ、期間中ずっと舞ってもらう予定だからな。その間は後宮内を自由に移動していい。それなら澱みも見やすいだろ?」
 確かに、それは睿の言う通りだ。しかし後宮を男の身なりの人間がうろついて問題ないのかと思ったが、それを考えているのも先周りするように心配するな、と言葉を続けてきた。
「陵の後宮は医師なども出入りをする……そのための練も用意されているからな、そこに泊まれば問題ない」
 簡単な事だろ、と暘谷の悩みはあっさりと解決させられてしまう。
 そこまで先回りで言われてしまっては、暘谷もなにも言えない。
「…………わかった、じゃあ世話になる」
「こちらこそ、世話になるよ」
 薄く笑った睿には、深い深海のような――なにかを言いたげな澱みを漂わせていた。

 ***

 後宮内のはずれにあるのは、馬小屋も同然の宦官の住居になっている。薬師や下女はまだ他の場所に住居を用意されているが、どれも最低限のもの。つまり暘谷も、同じ場所に一時的でも住まうのだろうと、そう思っていた。
 しかし蓋を開ければどうだろうか、通されたのは他の妃が住まう練のすぐ傍であり、睿と話した部屋ともほど近い場所。雨風はもちろん凌げるそこは、少なくも馬小屋ではない。
(いや、ここって明らかに医師や宦官の部屋ではないでしょ……)
 どこからどう見ても来賓の部屋と遜色ないそれに、つい顔をしかめた。
 暘谷が割り当てられるべき部屋は、少なくとも今いる場所の三ランクは低いはずだ。いくら宦官などとは違う客人とは言え、このような部屋を当てるだろうか。それが暘谷はどうしても気になり、じっとしている方が難しかった。
「失礼します、暘谷様」
 静かに部屋へ入ってきたのは、下女らしき女性。
 柔和な笑みを浮かべるその存在は、暖かい湯気のたつスープを盆に乗せていた。
「こちら、睿様からお持ちするよう言われたので」
「お、おかまいなく!」
「いえ、私が叱られてしまいます」
 自分のせいで誰かが叱られるのは、あまりいい気分ではない。それを言われてしまうと遠慮もできないと思いつつ目の前に置かれたそれを見ると、ごろりと肉の入ったスープがなみなみと注がれていた。
(美味しそう……)
 キャラバン隊の食事が、悪いとは言わない。それでもやはり旅商人と変わらないからこそ、後宮の食事と比べるには申し訳ないほどだった。
 暖かいスープは、いつ以来か。おそらく、二つ前の国が最後だったと記憶はしている。それを思い出すと心がじんわりと暖かくなるような感覚で、暘谷は素直に手を伸ばした。
 横に添えられたスプーンで少量掬い、口へ運ぶ。生姜の効いたそれは舞を披露しながら歌う事もある踊り子への配慮なのか、どこか優しさが見えた。
「お口に合いました?」
「えぇ、とっても」
 少しだけ、暖かさに男の仮面が取れた気がした。
 食器を片付けるためなのか横で飲み終わるのを待つ下女に申し訳なくなり急いで飲むと、火傷しますよと笑われた。言われた矢先に喉を通ったスープはかなり熱く、頭を下げながらゆっくりと流し込む事にする。
 そんな時間が、どれほど続いたか。
 スープも残り数口になった頃に、下女はそういえば、と口を開く。
「まさか、この部屋に男の方が招かれるなんて」
「え……?」
 なにを言っているのか、暘谷にはわからない。
 目を丸くしながら下女へ目を向けると、下女も下女で驚いた様子で暘谷を見つめている。
「まさか暘谷様、ご存知ないのですか?」
「なんの事を……」
「この部屋は、陛下やその親族……弟君がお気に入りを招き入れる部屋です」
「お気に入り……お気に入り!?」 男になりきれない、少し高い声が部屋に響く。
「陛下はよくお使いになります。陛下の弟君……然様も一応は使うと伺ってますが、あの方はそこまで表に出てこないので」
「お身体が、悪いのですか?」
「いえ、お仕事で西都へ行かれていると。私どももあまりお会いした事はありません。もしかすると暘谷様のキャラバン隊ともお会いになられていたかもしれませんね」
「なる、ほど……?」
 なおさら、ここに招いてきたのは帝という事になってしまう。男の身なりである暘谷を部屋に置くとは、なにを考えているのか。
(睿はその事に触れてこなかったけど、まさか私が呼ばれたのって……女娼の真似事?)
 今の暘谷を見れば、男娼の方が適切ではあるかもしれない。
 そんな場違いな事を考えながら、残っていたスープを喉へ流し込んだ。

 ***

 陵滞在、三日目。
 心地よい鈴の音と、弦楽器の音が後宮の真ん中で響く。昨日までキャラバン隊の為に作られていたはずのその舞台は、今は暘谷一人のために存在している。
 リン、と響いた鈴は暘谷の服に付けられたもので、舞う度にその心地よい音が後宮を魅了する。普段の暘谷なら、それだけでよかった。そのはずなのに今は目を細め、客席の方へ意識を集中させている。理由はわかりきっている、あの帝の付き人である睿からの依頼だった。
(暗殺を企てる不届き者、と言われても、そこまではわからないのに……)
 あくまでも暘谷がわかるのは、その相手が持っている感情。それが澱みとなり判別をできるだけであり、それ以上は難しい。 現に今見ている世界は暘谷に対する好奇のものばかりで、街から見たあの黒い澱みはどこにもない。しかしあれだけの黒さを見間違うはずがないからと、暘谷は顔をしかめる。睿の言う通り、ここには言葉には出来ないほどの憎悪を持っている人物がいる。それを、暘谷は見つけなければいけない。
(無理難題だなぁ……)
 キャラバン隊に穴を開ける事を最初は恐れたが、これについては睿が根回しをしていた。帝のご意志と言えば、どうにでもなるのがこの国らしい。
 今日の分の舞を終え、小さく頭を下げる。名残惜しそうな下女の声を聞きながらそそくさと舞台裏へ行くと、出会って二日のはずが見慣れてしまったその姿がある。
「お疲れ様、暘谷」
「睿……」
 涼しい顔で手を振る睿は、あれからどうだ、と声をかけてくる。
「そんな早くわかるわけないだろ、踊っている時だってだいたい向けられるのは俺に対しての感情ばかりだし」
「そうか」
 この男は、無理難題を押し付けておきながら簡単に言う。スカーフを鈴付きのものから普段着用のものへ変えると、じっと暘谷の事を見てきた。
「な、なんだよ」
「……いや、少し失礼」
「なにを、うわ!?」
 ふわりと、なにかが肩にかけられる。
 スカーフよりも重いそれが睿の羽織りである事に気づくのは時間がかかり、咄嗟に返そうとする。明らかに柔らかいその布地は、ただの布切れ一枚を普段羽織っている暘谷には不釣り合いだった。
「お、おいこれ絶対高いやつだろ、俺にはもったいねぇよ」
「しかし、寒いだろ」
「そんなヤワな身体じゃ、くしゅんっ」
 言われて早々に、くしゃみが出てしまう。
「この辺りは寒いからな、身体には気をつけろ」
 まるで割れ物を扱うように言われて、暘谷は反応に困ってしまう。きっと睿は帝の付き人として、男女問わず扱いに長けているだけだ。誰がなにをされる事が喜ぶとわかっているからこそ、こんな事をしているはずだと暘谷は考える。
「暘谷、今日はどこを見たい」
「んん、人が多そうで、なおかつ俺に意識が向かなそうなところとか……ん?」
 暘谷がここにいるのは、あくまでも暗殺を企てる存在を探すため。踊り子としてはメインでない。だからと今日の予定を考えていると、ふと視界の先で見慣れた人影を見つけた。
 本来ならそこにいないはずの存在は暘谷を見つけるなり、犬のように人懐っこい笑みを浮かべ暘谷と睿の方へ近づいてきた。
「暘谷ー、元気か?」
「は、白!」
 ひょいと顔を出したのは、同じキャラバン隊の白。
 なにやら袋を手に持った彼は、当然のような顔でそこにいた。
「お前、どうやって入ってきたんだよ!」
「暘谷の忘れ物を届けにきたって言ったら、すんなり入れて貰えたぜ」
 そんな簡単に入れるわけがないと、絶句した。白はキャラバン隊に入る前に、スラムで盗人紛いをしていたと聞いている。絶対に良からぬ方法で入っていると、暘谷は言葉にせずとも思った。
 そんな白とのやり取りをしていたが、ふと肩を抱き寄せられる。なにかと思えば怖い顔をした睿で、じっと白の事を警戒するように睨んでいた。目で人を殺せそうだったそれから、暘谷も無意識に視線を逸らす。
「……彼は」
「あぁ、同じキャラバン隊で薬売りの白だよ、俺と同じ孤児出身」
 仲良いんだ、と話した暘谷に、なぜだか睿は少し不機嫌そうに目を細めていた。
「そうか……私は睿と申します、よろしく白さん」
「あぁ、あんたか、暘谷を取った奴」
「おい、白!」
 仮にも帝の付き人である睿に出た言葉は明らかに不敬なもので、暘谷もこれには声を荒げた。
「睿に失礼だろ」
「失礼なのはどっちだ、暘谷はうちの踊り子だ。あんた達帝の物ではない」
(いくら睿でも、それを言っては……!)
 この国の不敬罪はあまり詳しくないが、どこの国も処刑と相場が決まっている。睿自身が帝でないにしても、それでも身分は確実に高い。白の進退を想像しただけで、暘谷は血の気が引きそうだった。
「安心しろ暘谷、俺は不敬罪なんか振りかざさない」
 あくまでも変わらない声音だったが、目は確実に笑っていない。
 白も睿を睨みつけたまま、じっと睨みつけている。男の身なりをしていても、暘谷は乙女だ。肩身が狭くつい目線を落とす。
(この二人、絶対に相性が悪い……!)

 ***

 陽だまりの暖かい後宮内の回廊は、下女達があわただしく行き来をする。
 それぞれが仕える妃のわがままや要望に応えている証拠で、それだけで暘谷はげんなりした表情を浮かべる。陵に滞在して四日目、後宮にきてすでに三日目ではあるが、この気持ちだけは絶対に変わる事がない。
(私には、絶対無理だ……)
 元々、誰かに仕えるなんて自分の性に合っていない。その日を暮らして生きていけるなら、それだけで満足だ。それが、男装の踊り子である暘谷の考えだ。
 だからこそ、今ここにいる空間はやけにむず痒い。真綿で縛り付けられるような感覚はキャラバン隊にいる時には絶対にないもので、暘谷はそれに慣れる事ができなかった。
 そしてなにより慣れないのは、横で少し楽しそうな表情を浮かべる帝の付き人だ。
「……睿、どこ行くんだよ」
「ついてこればわかる」
 今日の舞が終わってから、睿は突然暘谷を連れ出した。理由がわからずされるまま、睿の後ろをついて歩いても行き先はわからず、ただ回廊を歩いて行く。
(ここにも、澱みはなさそう)
 キョロキョロと目線を動かしながら人の顔を見ても、おかしな様子はなに一つとしてない。
本当に帝暗殺計画があるのかと錯覚するほどだ。
 しかし、確かに黒い澱みもある。それは下女や回廊とは違う、部屋の中から漏れ出たもの。世継ぎを生むための妃達が住まうその部屋は、正真正銘黒い澱みが漂っていた。
(あれは嫉妬……殺意ほどの憎悪ではないけど、東宮妃が懐妊でもされたとかかな)
 そんな噂と遜色ない事を、つい考えてしまった。澱みを見ただけでそこまで妄想を広げる自分の発想力が、今は恨めしい。
 頭を力なく振りながら、目線を睿へ戻す。ちょうど庭の方へ降りようとしていた背中は大きく、男の身なりをしていても結局は女である暘谷でもその体格差に目を細めた。
 言葉には絶対できないそんな事を考えていると、ふと睿の足が止まった。ぶつかりそうなところをなんとか踏ん張ったところで前を覗き込むと、睿も目の前のそこを指さしていた。
「ここだ」
「ここって……」
 つい、顔をしかめる。
 そこは明らかに仕事をするような場所ではなく、明らかに休息を取るような木の陰だ。間違っても、仕事をするような場所ではない。
「今日案内をしたかったのは、ここだ」
「……ここで、なにすんの」
「昼寝だ」
「おい、サボり魔」
 つい、本音が口を突いて出た。
 そんな暘谷の態度を気にする様子もなく、睿はお前も寝っ転がれと笑っていた。言われるまま横に腰をおろすと、他には聞こえないだろう声で暘谷、と名前を呼ばれる。
「今、かなりの人数とすれ違っただろ……怪しい奴は」
「んん、それがなにも」
 むしろ、そんなのは最初からいないのではと思えるほどだった。
「そうか……ありがとう」
 そのまま大きく欠伸をした睿は、今日の仕事は仕舞だと笑いながら昼寝の姿勢を取っている。
「いや、仕舞って言われても」
「ここは人もそうこない、ゆっくりするといい」
「そうではなく」
「暘谷」
 優しく、名前を呼ばれる。
 すうと暘谷の髪を梳いた手は優しく、その瞳は暖かい。
「慣れない環境での無理は身を滅ぼす……帝の命だと思ってここにいてくれ」
「帝の命って、あんたねぇ……」
 この数日でわかっている。この男は帝の付き人という立場のはずなのに、どこか傲慢で人の話を聞かない部分がある。それこそ、帝なのではと錯覚してしまうほど。
 じいとしばらくそんな睿を眺めていると、やがて聞こえてきたのは心地よさそうな寝息。すうすうと気持ちよさそうで無防備なそれに、暘谷は目を細めた。

「……変な奴」

 しかし嫌とは、不思議と思わなかった。

 ***

「暘谷、あいつ危ねぇよ、帰ってこい」
 陵滞在五日目は、そんな白の言葉から始まる。
 またどういった手を使って侵入してきたのか、白は当然のように目の前にいた。
「帰ってこいって、こっちも依頼で受けてんだよ」
 そう、これはなにも帝の傲慢ではない。れっきとした、依頼なのだ。暗殺犯を特定しろというそれは暘谷自身も見過ごす事ができず、なによりあの悪漢の件で借りもある。だからこそこれは、暘谷の意思でやっている事だ。
 しかし白はそうじゃなく、と顔をしかめる。綺麗に整った顔は鬼面のように恐ろしいもので、長い付き合いの暘谷も思わず肩を揺らすほどだった。
「……暘谷、こっち」
 ぐいと手を引っ張られ、草陰へ連れ込まれる。
「俺知ってるぜ、あのいけ好かない男の正体!」
「いけ好かないって、睿の事か?」
「あぁ」
 まっすぐな目で暘谷を見つめる白は、ゆっくりと言葉を紡ぎ出す。

「あいつは、睿って奴は帝の弟だ――本来ならアイツだって帝の暗殺を企んでも、おかしくない存在だ」

 ***

 後宮の回廊は、前の日とは打って変わって静まり返っている。歩く足音も暘谷のものだけで、世界から切り離されたような感覚に陥る。
「暘谷」
 そんな中で、ふと声をかけられる。
 低く響く声は、暘谷の耳に届く。今もっとも聞きたくなかったその声へ目を向けると、少ししんぱい 睿が立っていた。
「どこにもいないから心配したぞ」
 涼しい顔を貼りつけたまま暘谷に近づいてくるその姿は、今ではなにを考えているかわからず目を細める。この数日一緒にいたはずのその存在の腹の底が、そしてその存在が何者であるのかも。
「……なぁ睿、俺に隠している事はないか」
「隠している……?」
「あぁ、本当はさ――帝の弟なんだろ?」
「っ……」
 明らかに動揺の色を見せた睿に、暘谷はつい顔をしかめた。自分でも、どうしてこんな顔をしてしまったのかはわからない。ただ悲しみがあったのは事実で、胸の辺りが苦しくなったのも気のせいではない。少しだけ、裏切られた悲しみがあったのだと思う。
「……教えてくれ暘谷、それは誰から」
「否定しないって事は、そうなんだな」
 視界が、薄く澱んだ気がする。それが涙なのか澱みなのか、暘谷にはわからなかった。
「確かにあんたは、街であった時白い澱みを出していた……あの時に気づけばよかった。白い澱みは、正義のものだ。こんな華街が近い場所でそんな澱み、なかなか見ないもんな」
 その暘谷の言葉に、睿は目を細めた。なにやら感情を抑えるような表情には、どんな思いが込められているのか。

 「――あぁ、帝の弟然睿は俺の事だ。騙したつもりはなかったが、悪かった」

 零すように、言葉を紡いだ。
 その瞬間、暘谷の中では言葉にできない感情が沸き上がる。協力してほしいとか、優しく接してきたりしておきながら自分も同じ疑いを持たれる側だというのに。それなのに黙っていた睿に、暘谷は言葉にできないような気持ちでいっぱいになる。
「なんだよ、あんたが一番帝を暗殺しそうな立場じゃないか」
 乾いた笑みを浮かべた暘谷は、力なく首を横に振った。
「あんたなんかに、助けられなければよかった」
 拳を握りしめて、肺に残っていた息をふう、と吐き出す。この気持ちは、多分好意のものだったはずだ。男の身なりをしていた暘谷でも、誰かを好きになる感情を捨てたわけではない。だから、これは少なくとも彼に好意の感情を持っていた現れだ。
 街での事も、肩にかけられた布も優しすぎる言葉も。いまさら、今こんな時にこの感情は知りたくもないもの達だ。
「……俺、キャラバンに帰るわ、金はいらない」
 踵を返し、目は合わせない。
 しかし睿は引き下がる事なく、むしろその背中を追いかけてくる。
「教えてくれ、誰から聞いたかを――俺が然睿である事は、この後宮内でもほとんどの人間が知らないんだ!」
(そんな事、誰が信じると思っているの!?)
 唇を噛み締めながら、その言葉に惑わされないようにする。誰からと聞かれても、と暘谷は考える。それは他でもない白であり、とてもではないが嘘をつくような人間とは思えなかった。ほとんどの人間が知らぬなど、信じられるか。それなら、それならば白は。
「……え?」
 そこまで考えて、暘谷は歩みを止めた。
 今の話が、本当ならば。
「……じゃあ、白は、誰からその事を聞いたの?」
「やはり、あの薬売りか」
 後ろに追いついた睿が、顔をしかめる。
 嘘だと、ただそう思いたかった。しかしそれは、無情にも打ち砕かれる。

「なんだ、バレたのかよ」

 聞き慣れたはずの、しかし聞いた事のない声。
 冷たい声は回廊に響き、暘谷と睿はそちらへ目を向ける。
「白……?」
「暘谷、帰ってこいって言っただろ?」
「……お前が、帝の暗殺を計画した奴か」
「あぁ、元々前の国で頼まれててね……金の少ないキャラバン隊ではよくある事だよ」
 睿の言葉に目を細めた白は、悪びれる様子もなく笑っていた。
「なぁ、どこで気づいた?」
「俺と初めて会った時からだ、後宮はいくら来賓の忘れ物を届けるからと言って中に入れるわけはない……そこからだ、おかしいと思ったのは」
「へぇ……じゃあ、自分が殺されるかもしれないというのまでは、考えなかったわけ?」
 白の手元に光るそれが、目に入る。 鋭利なそれはまっすぐ睿に向けられていて、それに気づくのと暘谷の身体が動くのはほぼ同時だった。
「睿、危ない!」
「おい、暘谷!?」
 驚いたように目を丸くした睿は、暘谷と白の間に割って入るように手を伸ばした。そのまま白の手を掴んだ睿は、腹部に素早く拳を落とす。途端、小さな呻き声と共に崩れ落ちた白をそのまま置くとふらふらと睿は暘谷の方へ顔を向け。
「はぁぁ……」
 深い溜息を零した睿は、その場に座り込む。
「る、睿?」
「暘谷、自分が怪我したらとかは考えなかったのか」
 若干の、怒りの感情が見えた。
 返す言葉もなく目線を落とした暘谷は、ごめん、と小さく呟く。
「まったくだ、俺を疑ったのは気にしていないが、仮にも嫁入り前の女性がこんな」
「……待って、睿」 聞き捨てならない言葉に、暘谷はつい口を挟む。

「俺の事、なんで、どこで女って」

「どこからどう見ても、女だろ。今は俺なんて言わなくともいいぞ」

「…………」
 上手く隠したつもりだった、今までだってバレていない。それなのにこの男は、どこでわかったと言うのだ。
「そもそも睿、私の事男みたいに、扱っ、て……」
 そこで、暘谷の言葉が途切れる。
 思えば、睿が暘谷に向ける目はどれも優しく柔らかいものばかりで、自分が女の振る舞いをしてしまっていたのではと勘違いしそうなものばかりだ。肩を抱き寄せる大きな手も、背中もなにもかも。
 はくはくと音のない言葉と共に口を動かすと、それを見た睿はどこか楽しそうに笑っている。
「街であった時から、わかっていた。だから同時に、なぜそのような男装をしているのだろうと疑問に思ってな……あぁ、あとそれから」
 少し勿体ぶりながら、言葉を選ぶ。
「一目惚れだったと言えば、暘谷はどうする?」
「いや、どうするとか、そんな冗談言われても――!」
「冗談ではないかもしれないぞ? あの部屋を割り当てたのだって、本当に宦官達と同じ場所に泊めるのは気が気じゃなかったからな……少しでも手の届く範囲に、俺は置いておきたかったと言えば?」
 割れ物を触るように髪を梳き、微笑む。
 すべて最初から、バレていたのだ。
 それを思うと今までの振る舞いに頭がカッと熱くなる。羞恥からくるそれと共に顔を覗かせたのはさっきまで蓋をしようとしていた彼に対する感情だ。
「ところで暘谷、まだ二日契約が残っているが……もうしばらく、俺の横にいてくれないだろうか?」
「それ、は……!」
 少し意地悪笑ったその表情は、まさに毒だ。一度口にしてしまえば、逃れる事ができない。
「暘谷?」
「…………もう少し、なら、どうせ今回の事で、滞在は長くなるだろうし」
 そっぽへ目を向けながら、もごもごと言葉を転がす。
 毒のように笑った睿に、暘谷はほんの少しだけ愛をこめながら首を縦に動かした。