【side:ユナ】
私、ヒメハタ=ユナは去年、異世界にクラスの皆と共に召喚された。 勇者召喚って言うみたい。
異世界から召喚された人物にはチートスキルが授けられている事が多く、チートスキルでは無かったとしてもこの世界で活躍出来るくらいには強いスキルを持っているらしい。
そのスキルを使って魔王を倒して欲しい、って国王さんと女王さんにお願いされたの。
クラスの皆は《勇者》とか《聖女》とかでちやほやもてなされてたけど、私が持っていたスキルは《掃除》と《洗濯》といった平凡的なスキルらしく、ゴミを見るような視線を向けられて、皆にも避けられ始めた。
最初こそ無視だけで済んでいたけど日にちが経つにつれて行動はエスカレートしていった。
訓練で思い通りに行かなかったからと殴られたり蹴られたり、気絶するまで腹パンされたりもした。
酷い時には剣や魔法の練習台にもさせられた。
身体も心もボロボロになっていき、いつか殺されちゃうんじゃないかって思うと毎日震えが止まらなかった。
そして私は皆が実践練習でダンジョンに潜った時に城から抜け出した。 ずっと必死に走り続けて隣国に逃げ込んだ。
何十時間も走り続けたから当然疲労は蓄積されていき、回復魔法はかけられているものの殴られたり、蹴られたりして出来た傷や痣は当然そのままで身体に限界が訪れる。
意識が飛び、倒れそうになった時、咄嗟に私に抱きつき受け止めてくれた男の子。
それが私とルード様の出会いだったーーー
ふんふんふふーん♪ 今日、私は鼻歌を歌いながら廊下を掃除していた。
なんたってルード君と昼からお話出来たから! 嬉しすぎて当主様からの伝言を伝えるのを忘れちゃって、メイド長のマドアンナさんにまた怒られちゃったんだけどね。
ルード様と二人でこうやって怒られるのも、私は生きてるんだなって実感出来て嬉しい。
あの後私は勤務をサボったバツとして、玄関近くの掃除道具部屋で道具の手入れを申し付けられた。
真面目にこなさないと行けないのは分かっているが……どうしても気になってしまい集中力が削がれてしまう。
伝えたいことってなんだろう? 愛の告白だったりして!? ……って、そんな訳無いか。
私、全然可愛くないし。 一人で悶えてると、何処か悲しそうで、死んだ顔をしたルード君が地図を片手にとぼとぼと通り過ぎ、玄関のドアを開く。
何処かに出かけるのかな? そう思い、道具の手入れを続けようと戻ろうとした際にルード君がぽつりと呟いた言葉に衝撃が走る。
「今まで世話なったな、さよなら」
それは私に言ったのかは分からない。 けど、さよならって。
思えばルード君は死んだような顔をすることはよくあった。だがあんな悲しそうな顔を見たのは初めてだ。
当主様がルード君を呼ぶ、なんてことも今まで殆ど無かった。 まさか、と嫌な予感が頭の中を埋め尽くす。
「ルード君待って!!! 」
感情が抑えられなくなり、玄関へと駆け出す。
「え? ……なんで」
けどそこにもうルード君は居なかった。 ルードがドアを開けてから数秒しか経っていない。
まるで《転移》でもしたかのように綺麗さっぱりこつぜんと居なくなってしまったのだ。
「そんな……ルード君が居なくなっちゃったら私どうしたらいいの……なんで……なんでなの……? 【あの時】何があっても傍でお前を絶対守るって……言ってくれたじゃん……いつか必ず言うって約束してくれた秘密も教えてくれてないし、お昼に夜話すって約束もしたじゃん……」
涙が溢れはじめる。 ぽつりぽつりと思い出を口に出すと止まらなくなり、更に泣いてしまう。
立つ気力も無くなり、へなへなと地べたに座り込んでしまう。 そんな私を発見した他のメイドが駆け寄ってきてくれる。
けど何も聞こえない。 そんな騒ぎを聞きつけて、屋敷の色んな人が集まって私に心配の声をかけてくれる。
なんでこんなに泣いてしまうのか自分でも怖いくらいに分からない。
「ルード君の……嘘つき」
そう呟いたと同時に私は倒れてしまった。
私、ヒメハタ=ユナは去年、異世界にクラスの皆と共に召喚された。 勇者召喚って言うみたい。
異世界から召喚された人物にはチートスキルが授けられている事が多く、チートスキルでは無かったとしてもこの世界で活躍出来るくらいには強いスキルを持っているらしい。
そのスキルを使って魔王を倒して欲しい、って国王さんと女王さんにお願いされたの。
クラスの皆は《勇者》とか《聖女》とかでちやほやもてなされてたけど、私が持っていたスキルは《掃除》と《洗濯》といった平凡的なスキルらしく、ゴミを見るような視線を向けられて、皆にも避けられ始めた。
最初こそ無視だけで済んでいたけど日にちが経つにつれて行動はエスカレートしていった。
訓練で思い通りに行かなかったからと殴られたり蹴られたり、気絶するまで腹パンされたりもした。
酷い時には剣や魔法の練習台にもさせられた。
身体も心もボロボロになっていき、いつか殺されちゃうんじゃないかって思うと毎日震えが止まらなかった。
そして私は皆が実践練習でダンジョンに潜った時に城から抜け出した。 ずっと必死に走り続けて隣国に逃げ込んだ。
何十時間も走り続けたから当然疲労は蓄積されていき、回復魔法はかけられているものの殴られたり、蹴られたりして出来た傷や痣は当然そのままで身体に限界が訪れる。
意識が飛び、倒れそうになった時、咄嗟に私に抱きつき受け止めてくれた男の子。
それが私とルード様の出会いだったーーー
ふんふんふふーん♪ 今日、私は鼻歌を歌いながら廊下を掃除していた。
なんたってルード君と昼からお話出来たから! 嬉しすぎて当主様からの伝言を伝えるのを忘れちゃって、メイド長のマドアンナさんにまた怒られちゃったんだけどね。
ルード様と二人でこうやって怒られるのも、私は生きてるんだなって実感出来て嬉しい。
あの後私は勤務をサボったバツとして、玄関近くの掃除道具部屋で道具の手入れを申し付けられた。
真面目にこなさないと行けないのは分かっているが……どうしても気になってしまい集中力が削がれてしまう。
伝えたいことってなんだろう? 愛の告白だったりして!? ……って、そんな訳無いか。
私、全然可愛くないし。 一人で悶えてると、何処か悲しそうで、死んだ顔をしたルード君が地図を片手にとぼとぼと通り過ぎ、玄関のドアを開く。
何処かに出かけるのかな? そう思い、道具の手入れを続けようと戻ろうとした際にルード君がぽつりと呟いた言葉に衝撃が走る。
「今まで世話なったな、さよなら」
それは私に言ったのかは分からない。 けど、さよならって。
思えばルード君は死んだような顔をすることはよくあった。だがあんな悲しそうな顔を見たのは初めてだ。
当主様がルード君を呼ぶ、なんてことも今まで殆ど無かった。 まさか、と嫌な予感が頭の中を埋め尽くす。
「ルード君待って!!! 」
感情が抑えられなくなり、玄関へと駆け出す。
「え? ……なんで」
けどそこにもうルード君は居なかった。 ルードがドアを開けてから数秒しか経っていない。
まるで《転移》でもしたかのように綺麗さっぱりこつぜんと居なくなってしまったのだ。
「そんな……ルード君が居なくなっちゃったら私どうしたらいいの……なんで……なんでなの……? 【あの時】何があっても傍でお前を絶対守るって……言ってくれたじゃん……いつか必ず言うって約束してくれた秘密も教えてくれてないし、お昼に夜話すって約束もしたじゃん……」
涙が溢れはじめる。 ぽつりぽつりと思い出を口に出すと止まらなくなり、更に泣いてしまう。
立つ気力も無くなり、へなへなと地べたに座り込んでしまう。 そんな私を発見した他のメイドが駆け寄ってきてくれる。
けど何も聞こえない。 そんな騒ぎを聞きつけて、屋敷の色んな人が集まって私に心配の声をかけてくれる。
なんでこんなに泣いてしまうのか自分でも怖いくらいに分からない。
「ルード君の……嘘つき」
そう呟いたと同時に私は倒れてしまった。