「それじゃ、まずは問題点挙げてこ」
 それにしても頸を縦に3回も降り終わらないうちに作戦会議を始めるとは思っていない俺は、少々動揺したものの表には出さず、東條さんの出した問いに応える。
 「まず、敵軍の侵攻だろ。今はまだ岡山攻略の途中らしいが、じきにここまで来る」
 「確かにね。あとは———物資とか?」
 「え?」
 まさか物資面を突っ込まれるとは思わなかった。自分の見込みの甘さがここから姿を表してくることとなる。
 「当たり前じゃん。購買や食堂の備蓄分だけじゃ食糧も足りないし、衛生用品なんかも保健室とかの備蓄分しかないよ」
 「そりゃそうだ」
 昔から軍隊なんかでは兵站、つまり食糧や生活必需品の輸送が重視されてきたのだ。それは今の俺たちも変わりない。そんな簡単なことも考えてこない、自分の甘い考え方が恥ずかしくなってくる。だが、そんな俺のことを放って東條さんは問題を列挙し続ける。

 「それで、これはどうしようもないけど人的資源は絶対足りないよねー」
 「あと、インフラも問題。自動発電所が攻略されたら電力がほぼほぼなくなる」
 「そっから、指揮統制。要するに、ここの人がいくら三条君の話を聞くか、それに従うか、ってこと」
 「それにさ、———」

 かれこれ10分間くらい列挙し続けたあと、東條さんはふぅ、と息を吐いた。一拍置いて、俺が思ったことを言う。
 「とりあえず、このままじゃ立て篭もりは失敗するってことは分かった。でも」

 と前置きしてから、俺はなんとか言葉を紡ぐ。

 「東條さんの力を借りたい」

 これが正しいのかは分からないが、俺が暫く前から想いを寄せていた人への言葉としては、これで充分だったと思う。

 「手伝うって言ってるじゃん」

 そう笑いながら言う東條さんを見て、俺はなんとなくで始めた防衛作戦の覚悟を決めた。


  ———最期までここを護り切る。———