残ったのは、王と王妃、司祭と龍巫女、ランドールとイーサンとソフィアと一部の者にしか見えてはいないが、颯とハル。
ハルは、周りを見渡し、自分が姿を現しても良いか、確認し、徐に、姿を露わにした。
いつも、ソフィアに見せている小さいサイズではなく、それなりの大きさになり、神気を感じぬ者でも、畏怖を感じるほどの強い神気を纏った白い蛇が、皆の前に現れた。
静まりかえった広間に、皆が息を呑む音が響く。
龍王の見参に、風の龍、颯も姿を現し恭しく挨拶をする。
『お久しゅうございます。龍王様。』
『まだ、ほんのひと瞬きしか経っておらぬだろう?颯。』
『80年余りは、人の世では中々の長さでございますよ。』
『そうか…。よう数えておったな。』
龍が加護する巫女以外に姿を見せること自体が滅多にないので、龍の加護の国であっても、龍同士の会話など見たものは殆どいない。
しかも、どう見ても片方は蛇にしか見えない。皆が二匹の霊獣の会話を固唾を呑んで見守る。
ハルが口を開いた。
『ノア王。先程の話だが、ネックレスは、アリシアがソフィアから奪ったんじゃ。
自分が加護する魂がこの世に生まれたら、龍は天界をおり加護につく。
龍の力に応じて、生まれた巫女の力も強い。
強い神力を持ち生まれると、力が暴走しコントロールできないため、生まれるとすぐ、その子の神力を封印する。
その時、姿が蛇になる。
それでも、成長と共に、少しずつ神力も現れて増えてくる。
少ない神力の状態で神力の力をコントロールできるように練習しながら、大きくなっていくのだが、小さい頃は激しく感情が揺さぶられると思いがけない大きな神力が吹き出してしまうことがある。
それを吸収するために、そのネックレスをソフィアが生まれた時に持たせた。
魔石には強い神力がたまっていただろう?
ソフィアの母親、カトリーナは、ソフィアを生んでから、病に伏せ、寝たきりのような状態になってな。それでも、体調が少しでもいい時は、赤ん坊だったソフィアを抱いては、このペンダントにソフィアのことを祈っておった。
カトリーナは、ソフィアが1歳になる前に亡くなってな。ペンダントを握ってよく祈っておったことを、乳母に聞かされていたソフィアは、母親を感じたかったんだろう。
何か辛いことや悲しいことがあるとペンダントを握りしめて祈っておった。
アリシアが、5歳の頃、流行り病いで、生命が危ぶまれたことがあった。
義母は、ソフィアを酷く嫌って、アリシアに近づけなかったから、こっそり夜に寝込んでいるアリシアの部屋に忍び込んでな。
まだ、病を治せるほどの神力が体になかったソフィアは、ネックレスを握りしめて、祈ったまま、ベッド脇で眠ってしまってな。
それまでネックレスに溜まっていた神力の力とソフィアの祈りで、病がケロっと治ったアリシアは、ソフィアが眠っている間に、握っていたネックレスを奪ってしまった。
「お母様の思い出の品だから、返して。」
と言って、泣きながら力づくで、アリシアからネックレスを奪い返したが、
父親がソフィアに無関心で、義母のアニーシャとアリシアが、ソフィアに何をしようと、何も言わないことをいいことに、
義母が、ソフィアがくれたものを奪ったと言うアリシアの嘘に乗っかって、
『あげたものを奪うのは、泥棒だ。アリシアに返せ。』
と奪って、アリシアに与えて、ソフィアを納戸に閉じ込めたんだ。
家の中に味方がいないソフィアには、ネックレスを取り戻すことができなかった。
ソフィアはわしに自分のことは願わぬ。
わしは、例え、加護する巫女であっても、人間同士の諍いにこちらから手出しはできぬから、手をこまねいているより無かった。
それにだな‼︎
育った神力の量が、生まれた時に封印した神力を超えれば、封印は解け、わしの姿も元に戻る。
ソフィアが14〜16くらいになる頃には、封印が解け、ソフィアは本来持つ力が開花し、この国の龍巫女になり、わしは龍になって姿を現せるはずだったが…。
あの馬鹿な家族たちが、毎日、飽きもせず、寄ってたかって、ソフィアを虐げ無駄な心労を与えた上に、
着る物や、生活に必要な物、食事や、寝起きする場所すら満足に与えぬのに、
手当ても出さずに、家の使用人やアリシアの侍女をやらせたり、自分の懐の為にポーションを毎日、作らせたり…と、小間使いのようにこき使うから、
ソフィアに、封印が解けるだけの神力がたまる暇がなかった。
ランドールがソフィアが巫女であると見抜き、というか、あれは単に、花嫁に出会って一目惚れしただけだな。』
そう言ってニヤリと笑う。
『それでも、そのお陰で、アリシアのズルを見抜いたノア王たちに、今、やっと正体を明かせる。
こちらから人間界に知らせることは、理に反するからできぬからな。
このままでは、我が愛し子のソフィアが不憫じゃし、どうなるかとヤキモキしたわい。』
『聞くほどに、ソフィアの家族は、酷いな…。許せない。やっぱりソフィアは、僕のところに来たらいい。
疲れが取れるまでゆっくり休んで、神力をため、封印が解けたら、自分のために生き、ソフィアが望むようにその力を使えばいい。
龍に愛される者は、純粋で清らかな心を持つ。ソフィアの望みは国を豊かにし、民を幸せにするはずだからね。
何処にいても、力が届くなら、ソフィアを貰っていいだろう?ノア王。』
『古より、龍神と巫女の花嫁が結ばれるのは、国の大安を約束されると伝えられておる。ソフィアがそれを望むなら歓迎する。
だが、ソフィアが望まぬなら、ソフィアの封印が解けるように、生活の安全と安心は、私が保証しよう。
ソフィアが望む未来を決めればよい。
これでよいかな。龍王よ。此度は、我が臣下がすまなかった。』
『ノア王が賢王で良かった。』
そう言って、ハルが満足そうに笑った。
ハルは、周りを見渡し、自分が姿を現しても良いか、確認し、徐に、姿を露わにした。
いつも、ソフィアに見せている小さいサイズではなく、それなりの大きさになり、神気を感じぬ者でも、畏怖を感じるほどの強い神気を纏った白い蛇が、皆の前に現れた。
静まりかえった広間に、皆が息を呑む音が響く。
龍王の見参に、風の龍、颯も姿を現し恭しく挨拶をする。
『お久しゅうございます。龍王様。』
『まだ、ほんのひと瞬きしか経っておらぬだろう?颯。』
『80年余りは、人の世では中々の長さでございますよ。』
『そうか…。よう数えておったな。』
龍が加護する巫女以外に姿を見せること自体が滅多にないので、龍の加護の国であっても、龍同士の会話など見たものは殆どいない。
しかも、どう見ても片方は蛇にしか見えない。皆が二匹の霊獣の会話を固唾を呑んで見守る。
ハルが口を開いた。
『ノア王。先程の話だが、ネックレスは、アリシアがソフィアから奪ったんじゃ。
自分が加護する魂がこの世に生まれたら、龍は天界をおり加護につく。
龍の力に応じて、生まれた巫女の力も強い。
強い神力を持ち生まれると、力が暴走しコントロールできないため、生まれるとすぐ、その子の神力を封印する。
その時、姿が蛇になる。
それでも、成長と共に、少しずつ神力も現れて増えてくる。
少ない神力の状態で神力の力をコントロールできるように練習しながら、大きくなっていくのだが、小さい頃は激しく感情が揺さぶられると思いがけない大きな神力が吹き出してしまうことがある。
それを吸収するために、そのネックレスをソフィアが生まれた時に持たせた。
魔石には強い神力がたまっていただろう?
ソフィアの母親、カトリーナは、ソフィアを生んでから、病に伏せ、寝たきりのような状態になってな。それでも、体調が少しでもいい時は、赤ん坊だったソフィアを抱いては、このペンダントにソフィアのことを祈っておった。
カトリーナは、ソフィアが1歳になる前に亡くなってな。ペンダントを握ってよく祈っておったことを、乳母に聞かされていたソフィアは、母親を感じたかったんだろう。
何か辛いことや悲しいことがあるとペンダントを握りしめて祈っておった。
アリシアが、5歳の頃、流行り病いで、生命が危ぶまれたことがあった。
義母は、ソフィアを酷く嫌って、アリシアに近づけなかったから、こっそり夜に寝込んでいるアリシアの部屋に忍び込んでな。
まだ、病を治せるほどの神力が体になかったソフィアは、ネックレスを握りしめて、祈ったまま、ベッド脇で眠ってしまってな。
それまでネックレスに溜まっていた神力の力とソフィアの祈りで、病がケロっと治ったアリシアは、ソフィアが眠っている間に、握っていたネックレスを奪ってしまった。
「お母様の思い出の品だから、返して。」
と言って、泣きながら力づくで、アリシアからネックレスを奪い返したが、
父親がソフィアに無関心で、義母のアニーシャとアリシアが、ソフィアに何をしようと、何も言わないことをいいことに、
義母が、ソフィアがくれたものを奪ったと言うアリシアの嘘に乗っかって、
『あげたものを奪うのは、泥棒だ。アリシアに返せ。』
と奪って、アリシアに与えて、ソフィアを納戸に閉じ込めたんだ。
家の中に味方がいないソフィアには、ネックレスを取り戻すことができなかった。
ソフィアはわしに自分のことは願わぬ。
わしは、例え、加護する巫女であっても、人間同士の諍いにこちらから手出しはできぬから、手をこまねいているより無かった。
それにだな‼︎
育った神力の量が、生まれた時に封印した神力を超えれば、封印は解け、わしの姿も元に戻る。
ソフィアが14〜16くらいになる頃には、封印が解け、ソフィアは本来持つ力が開花し、この国の龍巫女になり、わしは龍になって姿を現せるはずだったが…。
あの馬鹿な家族たちが、毎日、飽きもせず、寄ってたかって、ソフィアを虐げ無駄な心労を与えた上に、
着る物や、生活に必要な物、食事や、寝起きする場所すら満足に与えぬのに、
手当ても出さずに、家の使用人やアリシアの侍女をやらせたり、自分の懐の為にポーションを毎日、作らせたり…と、小間使いのようにこき使うから、
ソフィアに、封印が解けるだけの神力がたまる暇がなかった。
ランドールがソフィアが巫女であると見抜き、というか、あれは単に、花嫁に出会って一目惚れしただけだな。』
そう言ってニヤリと笑う。
『それでも、そのお陰で、アリシアのズルを見抜いたノア王たちに、今、やっと正体を明かせる。
こちらから人間界に知らせることは、理に反するからできぬからな。
このままでは、我が愛し子のソフィアが不憫じゃし、どうなるかとヤキモキしたわい。』
『聞くほどに、ソフィアの家族は、酷いな…。許せない。やっぱりソフィアは、僕のところに来たらいい。
疲れが取れるまでゆっくり休んで、神力をため、封印が解けたら、自分のために生き、ソフィアが望むようにその力を使えばいい。
龍に愛される者は、純粋で清らかな心を持つ。ソフィアの望みは国を豊かにし、民を幸せにするはずだからね。
何処にいても、力が届くなら、ソフィアを貰っていいだろう?ノア王。』
『古より、龍神と巫女の花嫁が結ばれるのは、国の大安を約束されると伝えられておる。ソフィアがそれを望むなら歓迎する。
だが、ソフィアが望まぬなら、ソフィアの封印が解けるように、生活の安全と安心は、私が保証しよう。
ソフィアが望む未来を決めればよい。
これでよいかな。龍王よ。此度は、我が臣下がすまなかった。』
『ノア王が賢王で良かった。』
そう言って、ハルが満足そうに笑った。