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アリシアと両親が、会場に入ると、国王、王妃、宰相のほか、間違いがないように審査役として、司祭1人、龍巫女1人、聖女3人と、見届け役として無作為で選ばれた貴族10人が、見守る中、厳かに、聖女認定式が始まった。

式が始まると、
『これまでにないほど、強い光の魔力を持っていると噂に聞き、アリシアに会える日を楽しみにしておった。』
とノア王から言葉が掛けられた。

アリシアが、祭壇に置かれた水晶に向かって歩いていくと、1mほど手間から、水晶が光り、
その瞬間、
『オオッ。』
という声が上がった。

(ふふふっ。まだ、手をかざしてもいないのに、こんな遠くから光ったわ。
これで強い光の魔力があることを正式に認められるわ。ランドール様の花嫁に選ばれる日も、きっと直ぐ来るわね。)

次の瞬間、
『待て‼︎』

王より声がかかった。

アリシアが立ち止まり不安気な顔を見せる。

アリシアの胸から、水晶に向かって、光の筋が見える。

『アリシア、胸に何をつけている。つけているものを出してみせよ。』

『えっ‼︎お気に入りのネックレスだけど…。特に何も怪しいものじゃ…。』

『いいからとって見せよ。』

アリシアが言われるままに、ネックレスを外すと、司祭が受け取って確認する。

『これは‼︎…龍の鱗でコーティングしてある魔石ですね。』

そう言うと、王の元に持って行き手渡す。

ネックレスが無くなると、胸から、水晶まで伸びていた光の筋も、水晶の光も消えた。

その様子を見て王が、司祭に、ネックレスを水晶にかざすように言う。

言われた通り、ネックレスを持って、水晶に近づくと、先ほどのようにネックレスから光の筋が延びると同時に、水晶が光った。

『もう良い。司祭よ。下がれ。』

『アリシアよ。このまま、水晶に触れて見よ。』

今、起きていることに動揺しつつも、自分には、光の魔力が確かにあるから大丈夫だといい聞かせ、水晶の前まで歩いて立ち止まり、
大きく息を吐いてから、水晶に手をかざす。

水晶がアリシアのもつ、光と水の魔力の色、透明と水色の淡い光を放つ。

先程の強烈な光とはいかないが、確かに2属性の反応を示したことで安堵する。

『こちらに参れ。』

『はい。』

王の前に行き、礼をする。

『顔をあげよ。』

顔をあげると、王の質問が始まった。

『このネックレスは誰のものだ?』

『…私、私のものです。子どもの頃、お姉様から貰いました。』

『子どもの頃とは、何年前だ?』

『5才の時です。11年前です。』

『先程、お気に入りと言っていたが、それからずっとこのネックレスをつけているのか?』

『…はい、そうです。』

『司祭、どう思う?』

『この魔石には魔力は感じません。龍の鱗でコーティングしてあるので、ひょっとすれば神力があるのではと思われます。私には、神力は感じ取れませんので…、龍巫女のアンナ様に確認して頂いても宜しいでしょうか?』

『そうしてくれ。』

司祭から、アンナにネックレスが手渡される。

『これは、凄いですね。
凄く強い神力がたまっています。
アリシア様からも、今は同じ神力を感じますが、同時に、魔力も感じます。
同じ人間が、魔力と神力、両方を放つことは考えられませんから、水晶が透明に光ったのはこれが原因だと思います。
それに、私の加護龍、(はやて)がこの龍の鱗は龍王の物だと申しております。』

『龍王の鱗だと‼︎』

『はい。』

『王様、申したいことがございます。』

『よいぞ。話してみよ。司祭。』

『光の魔力の色は出ましたが、ネックレスをつけていた時の光と、外してからの光の強さの違いの大きさから、ネックレスを長年つけていた影響だと考えられます。
ネックレスの影響が消えてから、もう一度、魔力判定をやり直した方が宜しいかと思います。』

『そうだな。もう一度、魔力判定をやり直そう。アリシアよ。姉の名はなんと申す?』

『ソ…、ソフィアです。』

『司祭。ソフィアの魔力判定の記録は?』

『魔力なしということで、12歳と16歳の2回とも判定を受けておりません。』

『そうか…。ソフィアに、一刻も早く話を聞きたい。ソフィアの両親よ。ソフィアは今、何処にいる?』

『えっと、それは…。王宮の控え室に…。』

『一緒に王宮まで来てなぜ控え室に…?』

『それは…、その…

『進言させて頂きたく思います。』

後方から、騎士が声をあげた。

『申してみよ。』

『はい。私、控え室より、こちらまで、アリシア様とご両親をお連れしました。
その際、控室に残られたのは、侍女服を着たソフィアという女性だけです。』

騎士の言葉に、その場にいる者が一様に、怪訝な顔をした。

『こちらに一緒に来られようとされましたので、聖女認定式は家族以外は立ち会えないとお断りしたところ、奥様も、アリシア様も、ソフィアと名を呼ばれましたが、侍女ではないとはおっしゃらず…、その…様子がおかしかったのです。』

『様子がおかしいとは、どういうことか?ハッキリ申してみよ。』

『アリシア様と奥様が、まるでソフィアという侍女をさげずんでいるようでした。』

王の眉間に皺が寄る。

『ソフィアとアリシアの両親よ。控室に残った侍女の服を着たソフィアという女性は、侍女なのか?娘なのか?どちらだ?』

『……娘でございます。』

『別室にて、ソフィアの魔力判定を2度とも受けさせなかった件と、娘に侍女服を着せて王宮に連れて来た件をガパトーニ夫妻、其々、個別に聴取し、全ての事情がつまびらかになるまで、3人を王宮に留めておけ。

ソフィアをすぐこちらに連れて来るように。龍王と関わりがあるものやもしれん。丁重に扱え。

今日の聖女認定式は、中止とする。
立会人の貴族らは、もう下がって構わぬ。』

皆に聞こえるように、そう言い終えると、今度は、宰相にだけ聞こえる声で、指示を囁く。

王の命を受け、其々が迅速に動き出した。