突然起きた衝撃的なことの数々に、頭が混乱したまま、なんとか落ちつこうとハルに話しかける。

『ハル、一体、何が起きたのかしら?この広い部屋はどこかしら?ランドール様は、ハルは見えるし、声も聞こえるみたいだし…、そんな人、今まで会ったこと無いわ。
それに、私のことを花嫁って…、どういうことかしら?それに…、このままここで待っていて本当にいいのかしら…。』

『落ち着け、ソフィアよ。』

『そんなこと言っても、無理よ。いきなりあんな…』

途中まで話して思い出したのか、顔を真っ赤にして黙る…。

お姫様抱っこなんて初めてされたのよ…。

『全ての疑問は、ランドールに聞くしかなかろう。今は、待つよりない。』

『……そうね。確かにそうよね。ハルの言う通りね。でも…、アリシアたちが戻ってくる前に話が終わるかしら…。』

アリシアたちが戻った時に居ないだけでも、大変になるのに、アリシアがお気に入りのランドール様と私なんかが一緒に居たと知ったら癇癪を落とすわ。きっと…。

凄く面倒なことになると思うと頭が痛いわ…。

『ランドールがここに連れて来たんだから、上手くやって貰えばいい。ソフィアは、心配することなかろう。』

『ハルは強気ね。』

ノックの音が響いた。

『入るよ。』

『はい。』

慌てて立ち上がる。

『立たなくていいよ。座って。彼は、イーサン・ガルシア。僕の秘書。一緒に話を聞かせてね。いいかい?』

『はい。はじめまして。
ソフィア・ガパトニーです。』

『僕の花嫁だよ。』

『…また、そんな…。』

『いきなり言われて信じられないかもしれませんが、ランドール様が花嫁だとおっしゃるなら、間違いはありません。』

『って言っておるぞ。ソフィア。わしも、間違いないと思うぞ。』

『ハルまでそんなこと言って…。』

『こちらが神獣、ハル様ですね。お初にお目にかかります。』

『イーサン様も、ハルが見えるの⁈』

『ええ。ハッキリと。龍神ですからね。』

『龍神族は、皆、ハルが見えるの?』

『同じ神力を持つ者じゃからな。』

『魔力じゃダメなのね。』

『魔力と神力は根本的に違うからの。』

『…そうなの。あれ、でも、龍巫女のアンナ様の加護龍様は、みんなに見えるわ。』

『それは、祭事様のパフォーマンスで見せておるんだよ。見えれば有難いだろう?』

『えっ?そういうことなの?じゃ、ハルも皆に姿を見せようと思えばできるの?』

『そりゃぁ。そうさ。神獣じゃよ、わし。それぐらい造作も無いさ。』

『…そうだったの…。知らなかったわ。』

丁度会話が途切れたところで、ノックの音が響く。

『お茶の用意をお持ちしました。』

『入って。』

『私がやりますから、もういいよ。下がって。』

『イーサン様。私が淹れます。』

『こちらは私に任せて、ソフィア様は、ランドール様とお話しを続けて下さい。』

『イーサンに任せたらいいよ。なかなか、美味しいお茶を淹れるからね。』

『はい。では、お言葉に甘えて…。』