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『これも美味しいですね。』

『口に合って良かったよ。それに、してもソフィーは、本当に美味しそうに食べるね。』

『だって本当に美味しいんですもの。当然じゃないですか。』

『当然か…。ソフィーは、素直で可愛いね。』

ポッと顔が赤らむ。ランディ様は、褒めすぎというか、褒めの垣根が低すぎると思うのは勘違いでしょうか?

『ランディ様は私を褒め過ぎだと思います。』

『そうかな。全然、まだ、褒めたりないんだけど…。』

『えっ?』

ランディ様がおかしなことを言った気がします。気のせいでしょうか?』

『ソフィーは、凄く恥ずかしがり屋でしょう?』

『それはランディ様が、恥ずかしくなることを言ったり、やったりするから…。誰だって恥ずかしいと思います。』

言うだけで、恥ずかしくなりました。もう顔が熱いです。

『それだけ言うだけでも、真っ赤になっちゃうでしょ。十分、恥ずかしがり屋だと思うけどな。だから、 褒めるの我慢してるよ。すっごくね。』

『すっごく…ですか…?』
(なんだか恐いです。)

『うん。そうだよ。だってすっごくソフィーは可愛いんだから。それとも我慢しなくていい?』

『いえ。引き続き我慢をお願いします。』
(身がもちません。)

『後でご褒美もらいたいな?』

『……?』
(どうしてそうなります?)

『ご褒美貰えないなら、我慢するの辞めようかな?』

(どっちを選んでも危険な香りしかしないのですが…。我慢を辞められたら大変です‼︎)

『私にできるご褒美なら…。』

『約束だよ。ソフィー。』

(…不安です。してはいけない約束をしてしまった気が凄くします。忘れて下さらないかしら…。こういうお願いは叶えて貰えないんですよね…。)

買い物が終わり、レストランのテラス席で、今、窮地に立たされています…?
あっ、違いました。お食事しています。

格式高そうな宝石店に連れて行かれてしまったので、このまま、高級なレストランに入ってしまったら、どうしましょう…?と不安になって、
「ランディ様のおすすめの店を紹介して下さい。」
と言ってしまったことを正直、後悔していましたが、馬車に戻り、来た道を少し戻り、賑やかな通りで、馬車から下り、少しカジュアルな雰囲気のレストランに入ったので、ホッとしました。

料理も、盛り付けがお洒落でとても美味しいですが、コース料理ではなく、普段、食べ慣れているようなものだったので、一気に力が抜けてリラックスできました。

『外食というのは、室内だとばかり思ってましたけど、こういうお席もあるんですね。
ランディ様に出会ってから毎日、初めての体験ばかりです。』

『ソフィアの初めてを色々、共有できて僕は役得だね。』

『そう言って下さると嬉しいです。街並みや、人の賑わいや流れを感じながら、お食事するのは、楽しいんですね。』

『気に言ってくれたみたいだね。』

『はい。素敵なところに連れて来て下さってありがとうございます。』

『これから一緒に、色々なところへ行って色々な体験をしようね。ソフィー。』

『はい。とっても楽しみです。』

『この海老のクリーム煮も美味しいよ。ほら、食べてみて。』

海老が刺さったホークを差し出されました。
これは、このまま食べろということでしょうか?考えただけで頬が熱くなって来ました。

ランディ様が笑顔で待ってます。

あぅ。これは食べないとダメそうです。意を決して、パクリと食べました。

ジュワッとソースが滲み出て、歯応えがプリプリで、美味しいけど、恥ずかしくて、刺激が強いです。

『どう?』

『凄く美味しいです。ジュワッとしました。』

『ふふっ。ジュワッとしたんだ。ソフィーは、言うことが一々、可愛いね。』

ランディ様が凄く甘い笑顔をしています。胸の奥がツーンとして幸せ過ぎてなんだか泣きそうです。ランディ様に出会ったのは、私には、奇跡のようです。この奇跡がずっと続いたらいいと願ってしまいました。

食事の後、お手洗いに行って戻って来たら、ランディ様が、綺麗な女性2人に声を掛けられています。あの美しさは、龍神の方ですね。とても親しげにランディ様に、話し掛けていらっしゃいますので、知り合いっぽいです。

なんだか気後れしてしまいますが、こうやって引いてしまうことは辞めようと決めたばかりなので、意を決して向かっています。

近くに来たら、ランディと名前を呼んでいるのが聞こえました。見ると、ランディ様に腕を絡ませています。

「急にランディ様は私のです。」
と叫びたい気持ちにかられて、気づけば、
『ランディ様‼︎』
と大きな声で呼んでいました。

ランディ様が驚いた様子で、女性の腕を振り払って、振り向かれました。私を見つけると溢れるような笑顔を向けて下さいました。
それを見たら、なんだかホッとしてランディ様のところに歩いて行くと、

『おかえりソフィー。』

いつもみたいに甘い目で見つめられて、頬や髪、耳を撫で、先程買っていただいたイヤリングの石を愛し気にいじられました。

石の色はランディ様の瞳の色、私がランディ様の花嫁だという印です。

いつもはドキドキして恥ずかしくて、頭の中が、どうしましょう…?で一杯になるけど、今は、そうされていることが泣きそうに嬉しくて…、されるがままに任せていました。

ランディ様の気が済んだのか?撫でるのを辞め、肩を抱き寄せて下さいました。

『ソフィアと一緒だから、出掛けられない。
それから、ミア、君にランディと呼ぶことを許したことは無い。僕をランディと呼んでいい女性は、ソフィアだけだ。誤解されるからいい加減辞めてくれ。』

『その人が噂の花嫁なの?』

噂…?

『僕の花嫁だ。』

『聖女認定で不正をしたアリシアって子の姉なんでしょ。本当に龍の巫女なの?その方も不正じゃないの?』

『魔力判定に立ち会ったから、間違いない。ソフィアの名誉を傷つけることを言うのは辞めろ。』

『なによ。魔力判定で認定されても、蛇巫女じゃ、出来損ないじゃない‼︎大した力もないんでしょう?ちゃんと力があるか?見せてみなさいよ‼︎そしたら認めてあげてもいいわよ。どうせ出来ないでしょうけど…。』

私の肩に回されたランディ様の腕に力が入るのがわかりました。

『お断りします。私の力は、力を認めて貰ったり、見せびらかすためにあるわけではありませんから。それから、ハルは、私の大事な家族です。ハルを馬鹿にするのは辞めて下さい。』

ギロッと睨まれました。怯みそうになりましたが、必死に堪えました。

ハルがスリスリしてくれます。ひんやり気持ちがいいです。

『行こう。ソフィー。』

『はい。ランディ様。』