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今日は、昨日、約束しましたので、夕方、メグとメグのお母さんに会う予定です。

その前に、ランディ様が行きたいところがあるということで、今日も、一緒に出掛けることになりました。

ということで、また、ランディ様と馬車に乗っています。

ですが、今回は、ランディ様の隣の「座席」に、「ちゃんと」座っています。

馬車で座席に座るのは、何の変哲もない当たり前のことですが、ランディ様と馬車に乗って初めてのことなので、つい、強調してしまいました。

2回も続けて、馬車に乗った瞬間に、体を持ちあげられて膝の上に乗せられてしまったので馬車に乗る時に、つい身構えてしまいました。

あっけなくランディ様の横の座席に座れましたので、拍子抜けしました。

今日のランディ様は、私が足りているようです。

着いてからのお楽しみだからと、行き先は教えて下さいませんでしたが、馬車は、どんどん王都の中心部に向かい、今は、華やかな店が立ち並ぶ、賑やか通りを走っています。

見たことのない景色に、はしたないという考えも吹き飛んでしまい、馬車の窓に被りつくように窓の外を流れていく景色を眺めてしまいました。

『話には聞いたことがありますが、王都の商店街を初めて見ました。凄く色鮮やかで華やかなんですね。まるで御伽の国みたいです。』

『そんなに喜んでくれるなら、一緒に来て良かったよ。今日は、ここで、昼食を取ろうね。昨日の料理のお礼だよ。』

『お礼だなんて…。大したものは作っていないのに…、申し訳ないわ。色々なことをして頂いているのは、私の方なのに…。』

『そんなことを言わずに、ご馳走様されてね。』

(そうですよね。せっかくのお申し出をお断りするのは、かえって失礼ですよね。)

『はい。ありがとうございます。』

『良かった。』

嬉しそうな笑顔を向けて、
『何が食べたい?』
と聞いて下さいます。

(神々しさと犬のような無邪気な可愛らしさがタックを組んでいらっしゃって…、笑顔の破壊力が凄いです。暫く見惚れて思考が停止してしまいました。)

『…外食をしたことがなくて…、わかりませんので、ランディ様のおすすめを教えて下さいませんか?』

『うーん。そう言われちゃうと、あれもこれもソフィアに食べさせたくなって迷っちゃうね。昼までにじっくり考えるから、楽しみにしておいてね。』

『はい。楽しみです。』

本当に楽しみで答える声が弾みました。

ランディ様の手がスッと伸びてきて、頬や耳を撫でると、頬に柔らかいものが当たりました。

…えっ‼︎今、口を…、くちづけというものを頬にされましたよね…?…どうしてそうなったんでしょう?

『ふふっ。また、真っ赤だね。可愛い。僕がソフィアを真っ赤にさせてると思うと堪らないな。』
そう言って、頭を撫で撫でします。

(ランディ様の甘いモードのスイッチが入りました。危険なのは膝の上だけじゃないことは、わかりましたが、何がきっかけでスイッチが入るのか?サッパリわかりません。どうしたら良いのでしょう…?)

あっ、馬車が停まりました。

『ソフィー、下りるよ。せっかくだからね。少し歩こう。』

馬車から、下りて通りを曲がると、明らかに先程、馬車で通った店より高級感のある店が立ち並んでいました。

場違い感が半端ない気がします。それに、すれ違う女性の方が、ランディ様を見てうっとりされ、隣に目が移り、私を見つけると、上から下まで眺めて、ジトっとした視線を繋がれた手に向けます。

握られた手が汗ばんでいくのを感じます。

男性の方と手を繋いで歩くことがこれほど緊張の伴うものだとは知りませんでした。

『やっぱりソフィアを可愛くして出かけるのは問題があるな。僕のソフィアが皆んなに注目されて減っちゃう。』

嫉妬の籠る眼差しに、心は確かに削れそうというか、削られてますけど、ゴリゴリと…。

可愛くて、注目されてることだけは、決して無いと思うのですが…。

ランディ様が本気で私が減っちゃうと思っている様でなんだか可笑しくなってきました。