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夕食には、ランディ様のお父様、リアム様も同席されました。

緊張しましたが、穏やかで暖かく茶目っ気のある方で、直ぐに、リラックスして、食事も会話も楽しませて頂きました。

今、用意して下さったお部屋で休ませて頂いています。

ランディ様が、私の作った料理をべた褒めされたので、

(どう考えても、出して下さった食事の方が美味しいので、居た堪れない気持ちにもなりましたが、私に甘々な評価をして下さるランディ様の気持ちがくすぐったいけれど、嬉しく心がポカポカ暖かかったです。)

『私も、ソフィアの料理食べたかったわ。』
とオリビア様がしきりと残念がり、料理を作る約束を致しました。

リアム様も、
『私の分も頼むよ。娘の手料理は、是非、食べたいからね。倭國の味か…楽しみにしているよ。』
と仰って下さいました。

貴族令嬢が家の使用人に混ざって料理を作るなんて非常識ではしたないとは、リアム様も、オリビア様も、仰いませんでした。

家の使用人の様子やら、これからのことや、家族のこと、聞かれるままにお話し致しましたが、思いや考えを否定なさらず、聞いて下さり、励ましや慰めの言葉を沢山掛けて下さいました。

ランディ様もそうですが、リアム様も、オリビア様も、私が私でいることを喜び、そうあれるように支えて下さっている様に感じて、

あっ‼︎ランディ様が、仰っていた
「私らしい花嫁になればいい。」
と言うのは、こういうことなのですね‼︎

と突然、気づいた私は、

『ランディ様、私、気づきました。ランディ様が、仰って下さった、私らしい花嫁になるためには、私であることを望んで下さる方々がいらっしゃらなければ、望むこともできないことだったんですね…。

ランディ様も、リアム様も、オリビア様も、私が私でいることを喜び、そうあれるように支えて下さります。

この様な恵まれた環境と機械を与えて頂けたのですから、【私らしい花嫁】に試行錯誤しながらなっていきたいと思います。
私、頑張りますね。』

気持ちが昂って思わず、皆様の前でそう宣言してしまいました。

思い出したら、大層な大口を叩いてしまったと…今更、やってしまったことに身悶えしています…。

食事は楽しめましたが、龍神族の方々は、本当に皆様、見目麗しくて…、

アリシアが侍女やお義母様と、
『見目の良い方は目の保養になるわ〜。』
とよく話していましたが、

あんまりにも、規格外に見目の整った方に囲まれてしまうと、現実味が感じられないのだと食事中しみじみ思いました。

どこもかしこも綺麗に整えられた広いダイニングルームで、この世のものとは思えないような見目麗しい方々に囲まれて、
(仕えていらっしゃる方々まで龍神族の方ですもの…。)

今まで、話しなどさせて貰えず、頭ごなしに否定ばかりをされることが当たり前の日常を過ごしてきたのに、

ランディ様、リアム様、オリビア様と、3人もの方々から、関心を持って話しを聞いて頂いて、思いやりのある言葉を適宜、掛けて頂いていたら、突然、御伽の国に迷い込んでしまったような不思議な感覚に襲われました。

一人になって落ち着いてきたら、今度は、夢から覚めてしまうんじゃないか?
とどうしようもなく不安になってきました。

『ねぇ。ハル。今、私に起きていることって、現実よね?夢じゃないわよね?』

『現実じゃ。』

『そうよね。明日、目が覚めても、私はここに居るわよね。』

『あー、居る。心配するな。…そうだ。後で、風呂を用意してくれると言っておったじゃろ。もう直ぐ声を掛けに来るんじゃないか?ゆっくりしてきたらいい。気持ちが落ち着くじゃろう。』

『お風呂だなんて…。贅沢よね…。
ここに来てから、見るもの、口にするもの、耳にするもの、全て素晴らし過ぎて…、雲の上を歩いているような心許ない気持ちがするの…。』

『大丈夫じゃ。じきに慣れる。案ずることはない。』

ハルがいつもより体を大きくして、巻きついて、頭をスリスリと頬に擦りつけて撫でてくれる。鱗がひんやりして、暫くすると温かい体温が伝わってきて心地が良い。

『ハル。ずっと一緒に居てね。』

『あー、勿論。何処までも、ずっと一緒じゃ。』

『うん…。ありがとう、ハル。』