『もう一つ、ずっと気になってることがあるんだけど…。ランディ様…。』

『なんだい?』

『私、子爵令嬢とは名ばかりで…。普通の貴族子女が身につけていることを何も習得していません。だから…、その…、

私がランディ様の……その…奥様になったとしても、色々、困るんじゃないかな?と思って…。』

『どんなことが?』

『え、えっと…、今まで家の中では、使用人として食事の支度や掃除、畑や牛舎の世話をして働いてたから、貴族の奥様の暮らしが、私に出来る気がしないし…。

『龍神族は、貴族じゃないよ。ソフィー。』

『だけど…、妻の役割として社交は必要でしょう?

私、ドレスを着たのも、パーティに参加したのも今日が初めてで、お茶会だって参加したことないし、ダンスもしたことない。

勉強も練習も必要なことはなんでもするつもりよ。…だけど、私では、最初から結婚相手として役不足じゃないかなって…。』

『今日のパーティーの様子を見ていて、ソフィアには何も問題はなかったよ。凄く可愛かったし…、いや、可愛すぎるのは問題か…、後、皆んなに見せつけたいから、ソフィアとダンスはしたいな…、うん。だから、ダンスは、練習しようね。』

なんか根本的に趣旨がズレてる気がするのだけど…。そんなに緩くていいのかしら…?

『王族、貴族の妻には、求められる役割が確かにあるね。そのために、貴族子女は、幼い頃から色々なことを身につけるべく教育を受けていることは知っているし、龍神族の妻にも、求められるものは、確かにある。

それに、今まで家や親の役に立つことを求められてきたソフィアが、そういうことを気にするのは、わかるけど、

ソフィアはね、もう龍の巫女で、龍神である僕の花嫁になったんだよ。

それは、他とは比べられない、比べようがない、王族・貴族や、龍神族が子女や妻に求めるものの【圏外の存在】になったてことだよ。 』

『圏外の存在ですか?』

『そうだよ。ソフィアは、今、エルドラ王国、唯一の龍の巫女の花嫁たよ。

決められた花嫁の型などない。だから、こうでなきゃと型に縛られることなんかない。ソフィーらしい花嫁になったらいい。』

『私らしい花嫁なんて、難し過ぎて何をしたらいいかわからないわ。』

『難しく考えることはないよ。
ソフィアが望むことをし、祈り、ただ、ソフィアでいたらいい。

僕が、僕の花嫁に求めるのは、幸せそうに笑って僕の隣に居ること』

『ただ、私でいる。そんなの許されるの?』

『そうで居てくれないと困るよ。』

『でも、それだと何をしていいかわかないわ。』

『考えるより、実際、辺境地に行って見れば、何かしたいことが浮かぶんじゃないかな?浮かばなかったら、浮かぶまで、ゆっくり休んでいたらいいよ。』

『そんなに楽をしていいのでしょうか?』

『何を言っているんだい。ソフィー。
神獣ハルが
「ソフィーの親が、ソフィーを働かせ過ぎてソフィーの力の封印が解ける神力がたまる暇かまなかった。」
って話してたでしょう。
ゆっくり休んで、神力がたまって、ソフィアの力の封印が解けるのは、龍の加護の国であるエルドラ王国、全ての者の願いだよ。』

『そうですね。早く立派な龍の巫女になってハルの姿を元に戻さないといけないですね。』

『〜しないといけないという考えは良くないよ。そういう考えは、焦りや力みを生む。

ソフィアは、ハルの加護巫女なんだ。
ちゃんと時がくれば、封印は解けるようになっているんだ。信じてゆったり構えて、笑ってて。ソフィー。』

『…とっても難しいわ…。』