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アリシアの聖女認定式が、中止になったことで、夜に開催されるパーティでの聖女のお披露目も中止になった。

代わりに、龍巫女ソフィアのお披露目をしたいとノア王に困った顔で頼まれて断れず、急遽、ランドール様のエスコートを受けパーティに参加することになったソフィア。

迅速にドレスや装飾品が用意され、上機嫌でソフィアのドレスや装飾品を見立てるランドールが時折、見せる極上の笑顔と甘い言葉に翻弄されてるうちに、着るドレスや装飾品が決められ、沢山の侍女に囲まれて、あれよ、あれよと着飾られた。

鏡で着飾った今まで見たことが無い自分の姿を見た途端、とんでもないことを安易に引き受けてしまったことに気づいて、すっかり狼狽えてしまったソフィア。

『今まで、侍女服と聖女の服しか着たことが無かったのに、こんな華やかなドレスとお化粧と宝石で着飾って、パーティに一度も、参加したことがない私が、国王主宰のパーティの主役で出るなんて…。無謀にも程がある話だったわよね。ハル。
社交とか挨拶とかの前に、こんなふわふわのドレスを着て、上手く歩ける気すらしないわ。どうしましょう。』

『ランドールがエスコートしてくれるんだから頼って、ソフィアは、心配せずに、楽しめばいいんじゃ。』

『そんな…とても楽しむ心境にはなれそうにないわ。』

困惑と戸惑いとどうしようもない不安に狼狽えていると、

『迎えに来たよ。ソフィア。準備は出来ているかい?』
とランドールの爽やかな声が扉から響いて来た。

『えっ‼︎もう…どうしましょう…。ハル。』

泣きそうな声で助けを求めるソフィアに、非常にも、

『入っていいぞ。』
と勝手に返事をしてしまった。ハル。

開かれた扉の前には、輝く金髪に、エメラルドの瞳をした見目秀麗なランドールが、スーツに身を包み華やかさと色気を放って立っている。

…なんて美しい方なのかしら…。

何もかも吹き飛んで見惚れてしまう。

『ソフィア。とっても綺麗だよ。パーティで、こんな綺麗なソフィアをエスコートできるなんて、僕は幸せ者だよ。』

『そんな…幸せ者なのは、私の方です。』

甘い言葉に、頬を赤らめながら、思わず言う。

『なんて可愛いことを言うの。ソフィア。』
と、手をとって口づけした。

えっ‼︎…今、手にキスした…⁈…なんで、どうして、そうなったの‼︎

頭の中がパニックになったまま、手を引かれるままに、会場まで連れて行かれる。