『あ〜、やっと聖女として認められますわね。お母様。』

『はしゃいでいるわね。アリシア。』

『当然よ。この日の為にずっと努力してきて、やっと聖女として認定されるのよ。』

『そうね。魔力が安定して発揮できなかった時は、心配したわ。だけど、しっかり安定して…、魔力量も増えて、この日を迎えられて本当、良かったわ。誰かさんと違って、アリシアは、私たちの誇りよ。ねえ、貴方。』

『あーそうだよ。今日までよく頑張ったね。アリシア。』

『ありがとうお父様。お母様。
今夜の私のお披露目パーティーに、ランドール様いらっしゃるかしら。』

『王族、貴族、龍神族も皆、こぞって参加するからいらっしゃるんじゃないかしら。』

『龍神一族の中でも、一番、見目秀麗だと噂ですもの。お会いするの楽しみだわ。』

『アリシアは聖女だから、龍神の花嫁にはなれないよ。』

『お父様は、すぐそうおっしゃるけど、聖女から、龍巫女になって、龍神の花嫁になった方はいらっしゃるのよ。
これだけ光の魔力があるんですもの。龍の加護を得て、龍巫女になってもおかしくないはずよ。』

『そうよ。貴方。アリシアの光の魔力は、歴代の聖女の中でも強いって評判なんだから。』

複数の足音が近づく音がして、暫くすると、ノックの音が響く。

『お迎えにあがりました。』

『はぁ。いよいよね。お姉様も、行くわよ。』
と、アリシアが騎士たちに聞こえぬように耳元で囁く。

『はい。かしこまりました。』

迎えに来た騎士たちに、連れられて、アリシアとお父様、お母様が、控室を出ていく。

その数歩後ろを着いて行こうとすると、騎士に歩みを止められた。

『認定式には、聖女候補とその家族しか参加できません。侍女の方は、こちらでお待ち下さい。』

いつもは、外出する時は、聖女の服を着ている。
だけど、今日は、義妹のアリシアの侍女として、ここに連れられてきたから、当然、侍女の服を着ている。

家族です。姉です。と言えればいいけど、じゃあ、その格好は何?って話になる。我か家、ガパトーニ子爵家の評判が悪くなる。

ここは、王宮だ。降格されることにでもなったら大変だと思うと何も言えない。

『あらやだ。ソフィア。侍女は一緒に行けないってさっき教えたじゃない。』

『お母様、そんなに叱らないであげて。姉妹のように育ったから、私の晴れ姿を見たかったのよ。』

『嫌だわ、姉妹だなんて…‼︎こんなに大きな差があるのに、勘違いも甚だしいわ‼︎
聖女に認定されたら、身元のしっかりした侍女に変えましょう。貴方、いいわよね。』

『ああ、その方がいいだろう。』

『ソフィアは、その部屋で、私たちが戻るまで待っていなさい。
さあ、アリシア、行きましょう。
皆様、お待ちだわ。』

『ええ。お母様。』

アリシアが振り向いて、嘲るようにニヤッと笑うと、誇らしげに歩いて行った。