ピッ、ピッ、ピッ、ピッ。

目覚ましの音が嫌いになったのは、いつからだっただろうか。

ピピッ、ピピッ、ピピッ、ピピッ。

目を開けると、カーテンの隙間から射す朝日の眩しさに、思わず顔をしかめる。

ピピピピピピピピピ-------------------------------------・・・・・・・・・・・・・

急かすようにだんだんリズムを早める目覚ましを止め、ベッドから出たとき、ふと足元に気配を感じた。その気配の正体に手をのばす。みゃーお、とそれは可愛らしく鳴いた。

「かわいいねえ、おまえは」

白い毛並みを優しく撫でると、気持ちよさそうに目をつぶった。
カーテンを開けると、向かいの空き地に白いたくさんの小さな花がこれでもかと咲き誇っていた。

こんな花、咲いてたっけ。
一瞬彼女は首を傾げた。しかしすぐにカーテンを閉めると、慌てて出かける支度を始めた。
遅刻なんてするわけに行かない、とベッドを整え、ヘアアイロンがあたたまるのを待ちながら彼女は一人呟いた。
なんてったって今日は、めでたい日なんだから。
きっと、素敵な一日になるに違いない。そうでしょ、と傍らの猫に話しかける。

猫は、彼女の言葉に応えるかのように、みゃお、と小さく鳴いた。
彼女は、小さい頃からこれと言って何かに苦労したことはなかった。勉学においても、スポーツにおいても申し分なく、おまけに美男美女の両親の遺伝子をしっかり受け継ぎ、かなり整った顔立ちをしている。彼女の完璧さに嫉妬していじめが起きることもなく、友達にも恵まれた彼女の人生は、いわゆる”勝ち組”と言うやつだ。

----------というのは、彼女についての噂話をするときによく囁かれることである。
実際、たしかに彼女は恵まれていた。神は彼女に二物どころか、三物も四物も与えた。

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