「王国騎士こそ悪だ。俺は確かに罪を犯して大罪人となったが、お前達も罪を犯している! 罪を犯す人間に加担をしている!」
「正義を成す王国騎士が罪など犯すはずがない! 私達は国王様の命のもとに動いているんだ!」
馬鹿らしい。
国王の道具となっている現状をおかしいと思っていないようだ。むしろそれが正しい行いであると疑っていないようだ。
「俺にはそれが正しいとは思えないね。ステラの話を聞く限り、間違っているのは国王の方だ。お前達は国の間違いも正す力を持つのに、それを間違った方向に振りかざしている」
「大罪人が分かったような口を! お前の言葉は私をイラつかせる……とっとと断罪の裁きを受けろ!」
「馬鹿らしい。確かに俺は罪を犯した大罪人だが、断罪を受けるのはあんたも同じだ。王国騎士は守るべき国民を守らずに、惰眠を貪る王族しか守っていない! この体制を崩し、正当な組織にするのに力を注ぐべきだったんだ!」
うるさいと言いながらリルは何度も攻撃をしてくる。
風切り音と共に剣が迫るが、先ほどまでとは違いとても荒い。冷静さを欠いていることがノアへの憎しみで溢れている表情から読み取れる。
「どうして! どうして当たらない! 何かしたのか!」
「何かって、俺はまだ魔法すら使ってないぞ。単純にあんたが弱いからだろ」
「わ、私は弱くなんてない!」
「なら、最近いつ戦闘をした? 全くここ最近していないんじゃないのか?」
王国騎士というからには選ばれた存在だと思っていた。
だが、荒い太刀筋や身体の体捌きがおかしい。剣を握ったことが殆どないのではないかと思うほどだ。
「知ったような口を聞くな! 私がどれほど戦闘をしていないかなど関係ない!」
「そうか。もういい、一気に終わらせる!」
ノアは素早くリルとの距離を詰めると、連続で腹部に拳を叩きつけた。
一瞬怯んだリルはすぐに態勢を整えて連続で攻撃をしてくるが、その攻撃は先ほどよりも速度が遅かったので簡単に避けることができた。どうやら腹部の痛みが凄まじいようで、力を入れられないように見える。
「弱いな。次で終わらせる!」
痛みに悶えているリル目掛け駆け出すと、横からステラが「もうやめて!」と叫びながら飛び出してきた。
「急に飛び出してくるな! 危ないだろ!」
「黙ってもう見ていられない! これ以上戦うのはやめて!」
「やめてって、始めたのはあいつからだぞ! ロゼを突き飛ばして、大罪人にしようとした悪だ!」
「それでも、リルさんは私の大切な人なの! これ以上傷つくのは見たくないわ!」
生温い考えだ。
ロゼに謝りをしないで許すことは無理だ。
同じような痛みを与え、苦しめたいとノアは考えていた。
「ロゼはどう思う? このまま許してもいいのか?」
腕にできた傷に包帯が巻かれていた。
どうやらステラが治療をしてくれたようで、ヘリスがもう大丈夫だと言っている声が聞こえてくる。
「私はもう平気だよ。特に怒ってないし、お姉ちゃんも無理しなくていいんだよ」
「む、無理とはなんだ! 私は無理なんてしていない!」
ロゼが言う無理とは何だろうか。
ノアから見ても無理をしているようには見えないし、本心で言っているように見えるのだが。
「お姉ちゃんは無理してるよ。だって、本当はステラ様やノアお兄ちゃんと仲良くしたいんだよね?」
「ステラ様はお守りする対象なので当然です。だけどそこの大罪人は違う! 薄汚れた犯罪者です!」
「嘘だよ。お姉ちゃんはまた嘘をついてる。私ね、人の気持ちの揺らぎが見えるの。どうしようとか、こうしようって考えていることが見えるんだ。お姉ちゃんは身体の周りに噓をついている揺らぎが見えるよ」
「わ、私はそんなこと……」
ロゼの言葉を聞いたリルは、地面に膝を付いて涙を流してしまったようだ。
まさか大罪人に看破されるなんて思っていなかっただろう。しかしなぜそこまで嘘をついてまで国王を庇う必要があるのか、ノアには理解ができないでいた。
「ロゼ、その魔法はあまり使わない方がいいぞ」
「どうして? これ結構役に立つんだよ?」
「目に魔力を無意識に集めて見ていると思うんだが、使う度に負担をかけていずれ失明をすると思うぞ」
衝撃の発言だ。
思うということから確信をもって発したわけではないと読み取れるが、それでも失明という言葉は衝撃的過ぎる。
ロゼはというと、両手で目を抑えて怖いと言っている。怖くて当たり前だ。今まで風痛に使っていた魔法が、まさか失明をする可能性があるとは思うはずがない。しかもまだ子供だ。これから先の未来を奪われる魔法を使っていた恐怖は計り知れない。
「で、でもさ! 可能性だから、使用頻度を落としたり魔力の扱い方を学べば大丈夫でしょ?」
「ま、そうだな。必要以上に巡らせているのも問題だろうしな」
ロゼの魔法のことを話していると、リルがステラの前に移動をして「申し訳ございませんでした」と頭を下げて突然謝ってきたのだ。
行動が読めないのが怖いが、何か心境の変化でもあったのだろうか。それとも嘘を見抜けれて正直に話すと決めたのか。
ノアにとってはどちらでもいいが、まずはロゼに謝るのが先だ。子供を突き飛ばして怪我をさせたのだから、その罪は重い。
「リルさんだっけ。まずはロゼに謝るのが先じゃない?」
「大罪人……そうだね。君の言う通りだよ」
「お、おう。早く謝ってくれ」
素直過ぎて鳥肌が立ってしまう。
先ほどまでの態度とは違いすぎる。なぜかこちらが悪いことをしているみたいだが、明らかにリルが悪い。ステラとロゼに謝ったくらいは許すことはできない。
「ロゼちゃん、ごめんなさい。腕痛い?」
「もう大丈夫だよ。謝ってくれてありがとう」
屈んで目線を合わせて謝っている。
もしかして本当は子供に優しい人なのではないかと思うが、突き飛ばした前科が消えるわけではない。感情的な部分が多いので、ロゼを近づかせたくはない人間だ。
「もっと早く謝るべきだったけど、もういいわ。どうしてあんなことをしたの?」
「それは……ある命令があったからです……」
「私が知ってはいけないの?」
「はい。姫様には絶対に知られてはいけない命令でした」
どんな命令なのだろうか。
第三王女にすら知られてはいけない命令が想像つかない。暗殺か虐殺か。その類で、もし知られたら潰される命令なのだろうか。
ノアが思考を巡らせて考えていると、リルが「ステラ様の暗殺です」と衝撃的な言葉を発したのだった。
「正義を成す王国騎士が罪など犯すはずがない! 私達は国王様の命のもとに動いているんだ!」
馬鹿らしい。
国王の道具となっている現状をおかしいと思っていないようだ。むしろそれが正しい行いであると疑っていないようだ。
「俺にはそれが正しいとは思えないね。ステラの話を聞く限り、間違っているのは国王の方だ。お前達は国の間違いも正す力を持つのに、それを間違った方向に振りかざしている」
「大罪人が分かったような口を! お前の言葉は私をイラつかせる……とっとと断罪の裁きを受けろ!」
「馬鹿らしい。確かに俺は罪を犯した大罪人だが、断罪を受けるのはあんたも同じだ。王国騎士は守るべき国民を守らずに、惰眠を貪る王族しか守っていない! この体制を崩し、正当な組織にするのに力を注ぐべきだったんだ!」
うるさいと言いながらリルは何度も攻撃をしてくる。
風切り音と共に剣が迫るが、先ほどまでとは違いとても荒い。冷静さを欠いていることがノアへの憎しみで溢れている表情から読み取れる。
「どうして! どうして当たらない! 何かしたのか!」
「何かって、俺はまだ魔法すら使ってないぞ。単純にあんたが弱いからだろ」
「わ、私は弱くなんてない!」
「なら、最近いつ戦闘をした? 全くここ最近していないんじゃないのか?」
王国騎士というからには選ばれた存在だと思っていた。
だが、荒い太刀筋や身体の体捌きがおかしい。剣を握ったことが殆どないのではないかと思うほどだ。
「知ったような口を聞くな! 私がどれほど戦闘をしていないかなど関係ない!」
「そうか。もういい、一気に終わらせる!」
ノアは素早くリルとの距離を詰めると、連続で腹部に拳を叩きつけた。
一瞬怯んだリルはすぐに態勢を整えて連続で攻撃をしてくるが、その攻撃は先ほどよりも速度が遅かったので簡単に避けることができた。どうやら腹部の痛みが凄まじいようで、力を入れられないように見える。
「弱いな。次で終わらせる!」
痛みに悶えているリル目掛け駆け出すと、横からステラが「もうやめて!」と叫びながら飛び出してきた。
「急に飛び出してくるな! 危ないだろ!」
「黙ってもう見ていられない! これ以上戦うのはやめて!」
「やめてって、始めたのはあいつからだぞ! ロゼを突き飛ばして、大罪人にしようとした悪だ!」
「それでも、リルさんは私の大切な人なの! これ以上傷つくのは見たくないわ!」
生温い考えだ。
ロゼに謝りをしないで許すことは無理だ。
同じような痛みを与え、苦しめたいとノアは考えていた。
「ロゼはどう思う? このまま許してもいいのか?」
腕にできた傷に包帯が巻かれていた。
どうやらステラが治療をしてくれたようで、ヘリスがもう大丈夫だと言っている声が聞こえてくる。
「私はもう平気だよ。特に怒ってないし、お姉ちゃんも無理しなくていいんだよ」
「む、無理とはなんだ! 私は無理なんてしていない!」
ロゼが言う無理とは何だろうか。
ノアから見ても無理をしているようには見えないし、本心で言っているように見えるのだが。
「お姉ちゃんは無理してるよ。だって、本当はステラ様やノアお兄ちゃんと仲良くしたいんだよね?」
「ステラ様はお守りする対象なので当然です。だけどそこの大罪人は違う! 薄汚れた犯罪者です!」
「嘘だよ。お姉ちゃんはまた嘘をついてる。私ね、人の気持ちの揺らぎが見えるの。どうしようとか、こうしようって考えていることが見えるんだ。お姉ちゃんは身体の周りに噓をついている揺らぎが見えるよ」
「わ、私はそんなこと……」
ロゼの言葉を聞いたリルは、地面に膝を付いて涙を流してしまったようだ。
まさか大罪人に看破されるなんて思っていなかっただろう。しかしなぜそこまで嘘をついてまで国王を庇う必要があるのか、ノアには理解ができないでいた。
「ロゼ、その魔法はあまり使わない方がいいぞ」
「どうして? これ結構役に立つんだよ?」
「目に魔力を無意識に集めて見ていると思うんだが、使う度に負担をかけていずれ失明をすると思うぞ」
衝撃の発言だ。
思うということから確信をもって発したわけではないと読み取れるが、それでも失明という言葉は衝撃的過ぎる。
ロゼはというと、両手で目を抑えて怖いと言っている。怖くて当たり前だ。今まで風痛に使っていた魔法が、まさか失明をする可能性があるとは思うはずがない。しかもまだ子供だ。これから先の未来を奪われる魔法を使っていた恐怖は計り知れない。
「で、でもさ! 可能性だから、使用頻度を落としたり魔力の扱い方を学べば大丈夫でしょ?」
「ま、そうだな。必要以上に巡らせているのも問題だろうしな」
ロゼの魔法のことを話していると、リルがステラの前に移動をして「申し訳ございませんでした」と頭を下げて突然謝ってきたのだ。
行動が読めないのが怖いが、何か心境の変化でもあったのだろうか。それとも嘘を見抜けれて正直に話すと決めたのか。
ノアにとってはどちらでもいいが、まずはロゼに謝るのが先だ。子供を突き飛ばして怪我をさせたのだから、その罪は重い。
「リルさんだっけ。まずはロゼに謝るのが先じゃない?」
「大罪人……そうだね。君の言う通りだよ」
「お、おう。早く謝ってくれ」
素直過ぎて鳥肌が立ってしまう。
先ほどまでの態度とは違いすぎる。なぜかこちらが悪いことをしているみたいだが、明らかにリルが悪い。ステラとロゼに謝ったくらいは許すことはできない。
「ロゼちゃん、ごめんなさい。腕痛い?」
「もう大丈夫だよ。謝ってくれてありがとう」
屈んで目線を合わせて謝っている。
もしかして本当は子供に優しい人なのではないかと思うが、突き飛ばした前科が消えるわけではない。感情的な部分が多いので、ロゼを近づかせたくはない人間だ。
「もっと早く謝るべきだったけど、もういいわ。どうしてあんなことをしたの?」
「それは……ある命令があったからです……」
「私が知ってはいけないの?」
「はい。姫様には絶対に知られてはいけない命令でした」
どんな命令なのだろうか。
第三王女にすら知られてはいけない命令が想像つかない。暗殺か虐殺か。その類で、もし知られたら潰される命令なのだろうか。
ノアが思考を巡らせて考えていると、リルが「ステラ様の暗殺です」と衝撃的な言葉を発したのだった。