「本当に、佳織には悪いね」

「私も今日は楽しみにしてるんだから。遠慮なくいってらっしゃい!」

 午前中は商店街のお土産店などをまわり、予定通りに昼食を済ませた後、菜都実を保紀に預けた。

「じゃぁ……、甘えることにする。埋め合わせはするから」

「そんなのいいって。ただ、明日の飛行機間に合うようにね。他の便は満席だったから、乗り継ぎも含めて全部取り直しになっちゃうぞ」

「分かった。それは守る。茜音とちがって、二人だし」

「その二人だから心配なのさぁ」

 佳織がその言葉を待っていたかのようにニッと歯を見せて笑う。

 今朝のホテルを出るとき、菜都実は明日までの必要最低限の荷物を持ってきていた。予定では明日の空港での合流になる。

 残りのメンバーは、その待ち合わせまで二人の邪魔はしないつもりだ。

 その場に現れない可能性もリスクとして残る。ただ、二人とも次は失敗したくないという意向をはっきりと示していたから、それを信じることにしている。

「じゃあ保紀君、菜都実のこと一晩お願いね」

 前の晩に続いて、お昼ご飯をご馳走になり、残りの三人がお店を後にする。



「じゃぁ、わたしたちも出よぉ」

 残りの三人で一度ホテルに戻って買ってきたお土産などの荷物を片づけてから、最初に佳織を空港に送り届けることになっている。

「佳織、本当にごめんね。お友達さんにもよろしくね」

「謝ることないじゃん。私にも予定あるんだし。茜音もうまくやるのよ?」

 横須賀からの土産を持った佳織を空港のロビーに送り届ける。

「帰りはバスで平良(ひらら)のホテルまで戻るから、私には気を使わないで?」

「本当にいいの?」

「こうやって、地方路線乗っておかないと、いざ茜音みたいに突然出かけると言ってもなかなか答え出ないでしょ? 空港だからタクシーもいるし何とかなるわ」

 佳織のスマートフォンには、石垣島を出たという連絡がすでに入っている様子で、楽しみがちゃんとあるというのも嘘ではなさそうだった。

「茜音もうまくやるのよ?」

「ありがとう……。でも、わたしも焦らないでいいよね」

「もちろん。健君と二人で考えられるでしょ?」

 佳織は茜音の肩をポンと叩いて、空港ロビーの到着口の方に歩いていった。

 


「これからどうしようか?」

 健が車の中で待っていてくれて、茜音の帰りを待っていてくれた。

「そうだねぇ。また海が見たいな。いつも忙しいから、ゆっくりお話しがしたい」

 そんな場所を茜音は菜都実と保紀から昼食の時に聞き出していた。

 昨日行った浜は菜都実の大切な場所だから2組のバッティングは避けたい。そんな気持ちを悟ったのか、菜都実は笑いながらお店にあった観光地図に油性のサインペンで書き込みをしてくれた。

「それじゃあ、行ってみようか」

 二人きりになった車の中、助手席の茜音の手を握って車を走らせた。