「それにしても、先ほど通りかかったのが蓮妃様でよかったです。あそこは梅園殿が近いから、梅妃様だったらどうなっていたことか」
「梅妃様だと何か問題が?」
玲燕は鈴々の言い方に引っかかりを覚えて聞き返す。
「梅妃様は良くも悪くも後宮の方なのです。万が一あそこで玲燕様が花の一本でも踏み潰そうなら、大変なことになっていました。妃の身分であられるので、さすがに鞭打ちにはならないと思いますが──」
鈴々は肩を竦める。
「良くも悪くも──」
後宮は皇帝のためにある園だ。そこにあるものは、地面に落ちている小石ひとつをとっても皇帝のものであるという考え方をする人も多い。そして、梅妃はそういう考え方をする妃なのだろう。もし女官が花の一本でも手折ろうものなら、鞭打ちにすることも厭わないのかもしれない。
(つまり、妃の身分によって私はある程度守られているってことなのね)
玲燕は茶を啜る天佑を窺い見る。
とんでもないことをしてくれたものだと思ったけれど、彼なりに玲燕を守るために名ばかりの妃の座を用意したのかもしれない。
「梅妃様だと何か問題が?」
玲燕は鈴々の言い方に引っかかりを覚えて聞き返す。
「梅妃様は良くも悪くも後宮の方なのです。万が一あそこで玲燕様が花の一本でも踏み潰そうなら、大変なことになっていました。妃の身分であられるので、さすがに鞭打ちにはならないと思いますが──」
鈴々は肩を竦める。
「良くも悪くも──」
後宮は皇帝のためにある園だ。そこにあるものは、地面に落ちている小石ひとつをとっても皇帝のものであるという考え方をする人も多い。そして、梅妃はそういう考え方をする妃なのだろう。もし女官が花の一本でも手折ろうものなら、鞭打ちにすることも厭わないのかもしれない。
(つまり、妃の身分によって私はある程度守られているってことなのね)
玲燕は茶を啜る天佑を窺い見る。
とんでもないことをしてくれたものだと思ったけれど、彼なりに玲燕を守るために名ばかりの妃の座を用意したのかもしれない。