住まわせてもらうことになった、諏藤くんの家に。
その理由は二つ。
一つ目。
私を二度と危険な目にあわせたくない。
だから。
守りたい、私のことを。
できるだけ龍輝くんが私のそばにいて。
二つ目。
把握できない、入れ替わりのタイミング。
だから。
龍輝くんと一緒に暮らす。
そうすることで。
少しでも防ぐ、別々の場所で入れ替わってしまうことを。
今、諏藤くんのご両親は。
仕事の都合で海外暮らし。
期間は。
ゴールデンウィーク明け。
その日から一年間。
そして。
諏藤くんのお姉さんは。
結婚して違うところで暮らしている。
お兄さんは。
家を出て一人暮らし。
そういうこともあり。
住まわせてもらうことができているのかもしれない。
私の両親にも許可はもらっている。
……だけど。
さすがに言えなかった。
男子の家でお世話になるとは。
それから。
もう一つ決まったことが。
それは。
龍輝くんが転校する、近いうちに。
私が通っている学校に。
私と龍輝くん。
二人とも同じ学校。
その方が。
安心、少しでも。
私のことを守ることも。
入れ替わってしまったときも。
龍輝くんは。
考えてくれている、いろいろと。
そんな龍輝くんの心遣い。
感謝の気持ちでいっぱい。
ついに。
来た、この日が。
「神賀龍輝です。
よろしくお願いします」
転校して来た、龍輝くんが。
私が通っている学校に。
しかもっ。
同じクラスっ。
龍輝くんと同じ教室で学校生活を送る。
それは。
照れくさい、少しだけ。
そう感じていると。
クラスメートたちの騒ぎ声が耳に入ってきた。
黄色い声を上げている女子たち。
ざわざわしている男子たち。
そんなクラスメートたちの様子を見て思った。
やっぱり。
龍輝くんは人目を引く容姿とオーラがある。
「茉蕗、
改めてよろしくな」
あ。
シンとした、教室内が。
龍輝くんの一言で。
そしてっ。
一斉に見たっ、私のことをっ。
「茉蕗ちゃんっ、
神賀くんと知り合いなのっ⁉」
質問攻め。
その内容が一番多い。
巻き込まれている、質問攻めの嵐に。
そんなとき。
歩いてくる、龍輝くんが。
席に着くために。
そうしたら。
再びシンとなった。
やっぱり。
龍輝くんの存在感と威圧感。
それらは群を抜いている。
……さすが『白龍』の総長。
* * *
「それにしても
茉蕗が神賀くんと知り合いだったとはねぇ」
「神賀?」
「今日、転校生が来てさ、
すっごいイケメンなんだよね」
「そういえば、
私らのクラスでも騒ぎになってたわ、
『ものすごいイケメンが転校して来た』って」
「それでさ、
その神賀くんと茉蕗が知り合いみたいで」
昼休み。
今、屋上で昼食を食べている。
帆夏ちゃんと南穂ちゃん。
それから《ピンク・ラビット》のメンバーで。
今の会話は。
帆夏ちゃんと斐涼楓さん。
二人でされていたもの。
「神賀って、
下の名前は何ていうんだ」
「龍輝くんだったかな」
「神賀龍輝……
その名前、どこかで聞いたことがあるような……」
涼楓さん?
知っているの? 龍輝くんのことを。