「それからさ、
俺の正体を茉蕗に言わなかった……言えなかったのは、
茉蕗がそれを知ったとき、
俺のことを避けるかもしれない。
だから、やっぱり茉蕗には言わない方がいいと思ったんだ」
有り得ない、龍輝くんのことを避けるなんて。
「私にとっても龍輝くんは大切な存在。
避けるなんて絶対にない」
伝えたい、龍輝くんに。
そういう思いが強かったから。
『龍輝くんは大切な存在』
そう言ってしまった、大胆に。
なんだか。
恥ずかしくなってきた、ものすごく。
「ありがとう、茉蕗。
そう言ってくれて、すげぇ嬉しい」
うわぁっ。
ものすごい破壊力、龍輝くんのピュアな笑顔。
それから。
龍輝くんは話をしてくれた。
海翔さんと北邑さんは。
私や龍輝くんと同じで高校三年生。
次は龍輝くん率いる『白龍』のこと。
『白龍』のメンバーには。
桐生聖夜くん。
諏藤來空くん。
平岡梨央くん。
彼らもいるとのこと。
桐生くんは『白龍』の副総長。
そんな桐生くんは。
賢くて冷静なことから。
『『白龍』の頭脳』
そう呼ばれているらしい。
話してくれる、龍輝くんが。
いろいろなことを。
そのことが。
ものすごく嬉しくて幸せで。
ん?
なんだろう、この気持ち。
これは……。
五月の中旬。
その頃から。
住まわせてもらっている、私と龍輝くんは。
諏藤來空くんの家に。
今日で一週間になる。
住まわせてもらうことになった、諏藤くんの家に。
その理由は二つ。
一つ目。
私を二度と危険な目にあわせたくない。
だから。
守りたい、私のことを。
できるだけ龍輝くんが私のそばにいて。
二つ目。
把握できない、入れ替わりのタイミング。
だから。
龍輝くんと一緒に暮らす。
そうすることで。
少しでも防ぐ、別々の場所で入れ替わってしまうことを。
今、諏藤くんのご両親は。
仕事の都合で海外暮らし。
期間は。
ゴールデンウィーク明け。
その日から一年間。
そして。
諏藤くんのお姉さんは。
結婚して違うところで暮らしている。
お兄さんは。
家を出て一人暮らし。
そういうこともあり。
住まわせてもらうことができているのかもしれない。
私の両親にも許可はもらっている。
……だけど。
さすがに言えなかった。
男子の家でお世話になるとは。
それから。
もう一つ決まったことが。
それは。
龍輝くんが転校する、近いうちに。
私が通っている学校に。
私と龍輝くん。
二人とも同じ学校。
その方が。
安心、少しでも。
私のことを守ることも。
入れ替わってしまったときも。
龍輝くんは。
考えてくれている、いろいろと。
そんな龍輝くんの心遣い。
感謝の気持ちでいっぱい。
ついに。
来た、この日が。
「神賀龍輝です。
よろしくお願いします」
転校して来た、龍輝くんが。
私が通っている学校に。
しかもっ。
同じクラスっ。
龍輝くんと同じ教室で学校生活を送る。
それは。
照れくさい、少しだけ。
そう感じていると。
クラスメートたちの騒ぎ声が耳に入ってきた。
黄色い声を上げている女子たち。
ざわざわしている男子たち。
そんなクラスメートたちの様子を見て思った。
やっぱり。
龍輝くんは人目を引く容姿とオーラがある。