「姐さんっ、
 移動教室、お疲れ様です‼
 教材、お持ちいたします‼」


 そう言っている、(あや)さんの隣にいる女子が。


 一体どうして?


「あの、
 大丈夫です」


「なんて謙虚なお方っ。
 どうか遠慮なさらず」


「本当に大丈夫です」


 終わらない、このままでは。
 このやりとり。


「あの、
 斐さんの方からお願いしてもらってもいいですか?
 教材は自分で持って行くので大丈夫です、と」


 リーダーの斐さん。
 彼女の言うことなら聞いてくれると思う。

 なので。
 頼んでみた、勇気を出して。


「姐さんっ‼」


 びっくりした。


 斐さん、いきなり大声を出したから。



 って。
 斐さん?
 顔、近いんですけど?


 斐さんは怖い雰囲気。

 だから。
 近いと、ますます怖い。





 一体どうしたのだろう、斐さん。

 もしかして。
 言ってしまった? 何かまずいことを。


 どうしよう。
 怒鳴られるだろうか。

 そう考えると。
 恐怖で全身に嫌な汗が。