* * *


「おはようございます‼ (ねえ)さん‼」


 一時間目の授業が終わり休憩時間に入った。


 二時間目の授業は美術。
 そのため美術室へ向かう。

 そのときのこと。


「申し訳ありませんっ、
 本当は朝一番に姐さんに挨拶をしようと思い、
 姐さんのクラスの教室に伺おうと思ったのですが、
 こいつらが寝坊をしてしまいましてっ、
 姐さんに挨拶をすることが遅れてしまいましたっ。
 ほんっとうに申し訳ありませんっ」


 一体何がどうなっているのか。







 今、私の目の前で頭を下げて謝っている女子五人組。



 これは幻覚ではない。

 確かにそれは行われている。


 私に頭を下げている。
 その女子五人組は。
 誰もが恐れる、あの《ピンク・ラビット》―――っ‼





 なぜ《ピンク・ラビット》が私に頭を下げているのか。

 その光景だけでもパニック状態になる。

 それなのに私に謝っているなんて。



 そして中心になって謝っているのは。
《ピンク・ラビット》のリーダー、(あや)涼楓(すずか)さん。

 斐さんに続くように。
 斐さんと一緒にいる四人も深々と頭を下げ謝っている。





 ……なんだか。
《ピンク・ラビット》である彼女たちの今の言動。

 それは。
『逆に怖いっ‼』
 そう感じる。



 彼女たちは私に謝る必要など全くない。

 それと。
 わざわざ挨拶に来る必要もない。


 それなのに……。





 あまりの出来事に。
 驚きと困惑が頭と心の中でグルグルと忙しく回っている。


 そうなりながら。
 移動教室を共にしている水嶋さんと黄宮(こみや)さんの方を見る。
『一体どうしたらいいの?』
 そういう気持ちを込めて。

 だけど。
 水嶋さんと黄宮さんは見ているだけ、私の方を。
 にんまりした表情(かお)をして。



 なぜ水嶋さんと黄宮さんがそんな表情(かお)をするのか。

 わからない、全く。
 その理由が。