イケメン総長とキケンな関係 ~出会いは突然の入れ替わり⁉ 愛はそこから始まった~




 訊いておきたい、せめて。

 こんなにも怖い思いをしたのだから。


 なんだろう、不思議。

 今の私。
 勇気があるらしい。


「『白龍』はどういう人たちなのですか。
 どんな勝負をしているのですか」


 気になる、ものすごく。


「……あっくん、
『白龍』の正体と俺たちのこと、
 茉蕗(まろん)ちゃんに話してもいい、のかな」

「……好きにしろ」


 お許しが出た、北邑(きたむら)さんから。


「あのね、茉蕗ちゃん」


 ついに。
 聞くことができる。


「『白龍』と俺たちはね……」





 話してくれた海翔さんは。


 その内容。
 聞いた限り……。
『白龍』、海翔さんや北邑(きたむら)さん。
 彼らの正体は『暴走族』。
 感じた、そう言ったように。



「驚いた?」


「……はい」


「やっぱり、そうだよね。
 あっ、それで、
 俺たちのチーム名は『(まむし)』」


 海翔さんや北邑さんたち。
 彼らのチーム名は『蝮』。

 なんだか強そう。



 だけど。
 負け続けている。
『蝮』は『白龍』に。


『白龍』
 どのくらい強いのだろう。





 そういえば。
 どんなことをするのだろう。
 暴走族の人たちの勝負って。

 まさかっ。
 殴り合いをするとか⁉


「あのっ、
 勝負って、どんなことをするんですかっ」


 どうしようっ。
 本当に殴り合いだったら。


「知らない方がいいと思うよ。
 茉蕗(まろん)ちゃんが『白龍』の総長の彼女じゃないのなら」


 海翔さんっ。

 そんなふうに言われたら。
 余計に考えてしまうっ、良からぬことをっ。





「そうだ、
 茉蕗(まろん)ちゃん、
 楽しみにしてなよ」


 海翔さん、満面の笑み。


「『白龍』の総長、
 あっくんや俺のように超イケメンだから」

「自分で言うな」


 北邑(きたむら)さん、静かなツッコミ。


「いいじゃん、
 あっくんだって本当は自分のことイケメンだと思ってるでしょ」

「うるせぇ、
 海翔(お前)、少し黙ってろ」

「照れ屋さんなんだから、あっくんは」





“ガチャッ”


 聞こえた、今。
 ドアを開ける音。


「来たね、いよいよ」


 気付いた、海翔さん。


 来たっ、ついにっ。
『白龍』の総長っ。





 えぇっ⁉

『白龍』の総長さんの正体って……‼


「待っていたぞ、神賀」


 龍輝くん、だった―――っ⁉


茉蕗(まろん)の手足を縛っているものを解け」


 睨んでいる、ものすごい勢いで。
 龍輝くんは北邑(きたむら)さんのことを。


「それはできない」


 見ている、北邑さんも。
 厳しい表情(かお)で龍輝くんのことを。



 って。

 あれっ?
 解いてくれないのっ?


「解かなければ勝負はしない」


 出してくれた、龍輝くんが条件を。


 北邑さんの返答は?




「解いてやれ」


 よかった、やっと解放される。


「オッケー」


 解いてくれたのは海翔さん。


 手足が自由になる。

 それは。
 本当にありがたい。

 そう感じている、しみじみと。



「さっさと(勝負を)済ませて
 連れて帰る、茉蕗(まろん)のことを」


 龍輝くんの厳しい表情(かお)
 今まで見たことがない。

 いつもやさしくて穏やかだから。





神賀(お前)
 知ってるのか、向陽茉蕗(彼女)のこと」

茉蕗(まろん)は大切な存在だ」

向陽茉蕗(彼女)神賀(お前)のことを知らないと言っていた」

「……話してなかったからな、
 茉蕗に俺の正体を」

「話してなかったのか、
 大切な存在なのに」

「…………」





「まぁ、いい。
 神賀(お前)の事情なんて知ったことじゃねぇ。
 さっさと行くぞ」

「あぁ」


 始まってしまう、とうとう。
 龍輝くんと北邑(きたむら)さん。
 二人の勝負が。


茉蕗(まろん)
 帰ってくる、必ず。
 勝って」


 こんなときでも。
 見つめてくれる、龍輝くんは。
 やさしい表情(かお)で。



 私は。
 どんな表情(かお)をすればいいの?
 何て声をかけたらいいの?


 本当は。
 してほしくない、勝負なんて。





「神賀龍輝は知ってるみたいだね、
 茉蕗(まろん)ちゃんのこと」


 部屋を出て行った、龍輝くんと北邑(きたむら)さん。

 そのあと。
 海翔さんが口を開いた。


「茉蕗ちゃんは?
 知ってるの? 神賀龍輝のこと」


「……はい。
 知っています」


「言ってないんだね。
 神賀龍輝は茉蕗ちゃんに。
 自分の正体」


 そう。
 教えてもらっていない。
 龍輝くんから。


「……はい」


 なんだろう。
 複雑な気持ち。


「そうか。
 なんで茉蕗ちゃんに言わなかったんだろ」