イケメン総長とキケンな関係 ~出会いは突然の入れ替わり⁉ 愛はそこから始まった~




「……だけど不思議だな」


 少しの沈黙があり。
 桐生くんは静かに口を開いた。


「入れ替わり、
 信じるには難しい話」


 そう思う、桐生くんが。

 それは。
 当たり前のこと。


「どう見ても、
 向陽茉蕗ちゃん(その子)
 向陽茉蕗ちゃん(その子)にしか見えない」


 うん。
 わかる、それも。


 どう見ても。
 姿は私。

 龍輝くんの話し方でも。


「そのはずなのに……
 向陽茉蕗ちゃん(その子)が龍輝に思えてくる」


 私も。
 桐生くんと同じ感覚。

 そのことは本当に不思議だと思う。


「そう思えるのは、
 俺と茉蕗(まろん)が入れ替わっているからだ。
 これで、わかってくれたか」


「そういうことではなく、
 まだ湧いてこない、実感が」


 そうだよね。

 わかる、なんとなく。
 桐生くんが言いたいこと。


「だけど、
 姿は龍輝じゃないのに
 龍輝に思えてくるということは、
 そういうことなんだろうな」


 それでも。
 理解しようとしてくれている。
 桐生くんたちは。


「あぁ、そういうことだ。
 それで、さっそくだけど、
 聖夜と來空(らいあ)梨央(りおん)に説明する。
 俺と茉蕗が入れ替わってしまったことについて」





「それにしても、
 これからどうするんだよ」


 龍輝くんの説明。

 それを全て聞き終えた、桐生くんと諏藤(すどう)くんと平岡くん。


「元に戻ることができても、
 また入れ替わってしまうかもしれないんだよな」


 桐生くんの言う通り。


 だから。
 憂鬱になってしまう、そのことを考えると。


「今は龍輝の部屋(ここ)だからいいけど、
 他の場所の場合、困るよな」


 うん。

 かなり困る。


「スマホで連絡を取り合っても
 限界があるからな」


 今は。
 一緒にいる、龍輝くんと。

 だから心強いし行動も取りやすい。


 だけど。
 私一人だけでは。
 無理、絶対に。
 落ち着いて行動することなんて。


「それから、
 まだわかってないんだろ?
 入れ替わりと戻るタイミング」


 本当に困る。
 わからないままでは。


「初めてのときは眠っている間。
 今回は眠っていないとき」


 どうして違うのだろう。


タイミング(それ)がわからないとなると、
 かなり厄介なことにならないか」


「聖夜の言う通り、
 厄介だろうな」


 頷いている、龍輝くんも。
 桐生くんの言葉に。


「タイミングを知ることができればいいけど、
 知ること(それ)ができなかったときは、
 対策もしなければいけない」





「だけど、とりあえず今は今のことを考えたい。
 それでさ、來空(らいあ)、頼みがあるんだけど」


 龍輝くん、どんな頼み事だろう。


「今日、來空(お前)の家に泊めてほしいんだけど。
 茉蕗(まろん)も一緒に」


 驚いた、少しだけ。
 龍輝くんの言葉に。


「もちろん。
 龍輝くんの頼みなら喜んで」


 快く受けてくれた、諏藤(すどう)くん。





 言ってくれた、龍輝くんは。


 諏藤(すどう)くんは。
 今日から明日の夕方まで一人で家にいるとのこと。

 なので。
 泊まりやすい、私と龍輝くんが。





 龍輝くんの提案に。
 救われた、ものすごく。


 今の姿では。
 家に帰ることはできないから。



 いろいろと考えてくれている龍輝くん。
 家に泊めてくれる諏藤くん。

 二人に感謝の気持ちでいっぱいになった。





「今日は一日が長く感じるな」


 そう呟く。
 窓から夜空を見ながら。


 今いるところは。
 諏藤(すどう)くんが貸してくれた諏藤くんの家の中にある部屋の一室。



茉蕗(まろん)、起きてるか』


 眺めている、窓から夜空を。


 そのとき。
 聞こえた、ドアを小さめにノックした音。

 それと。
 小声で私の名前を呼ぶ私の声(心は龍輝くん)が。



 なので。
 ドアの方に行き。
 開ける、ドアを。


 目の前には。
 立っている、龍輝くん(私の姿)が。


「今、部屋の中に入っても大丈夫か。
 少しだけ茉蕗と話がしたい」


「私も。
 龍輝くんと話がしたい」


 思っていた、龍輝くんと同じことを。

 そのことが。
 嬉しい、ものすごく。


 そう思いながら。
 龍輝くん(私の姿)を部屋の中に。




「今、茉蕗(まろん)は何してた?
 俺は今まで窓から夜空を眺めてた」


 部屋に入ってすぐ。
 龍輝くんが言った言葉を聞いて。
 嬉しい気持ちになった。

 私も龍輝くんと同じことをしていたから。





「今夜は特に空がきれいに見える」


 今は。
 見ている、龍輝くんと一緒に。
 窓から夜空を。


茉蕗(まろん)と一緒に見てるからだろうな」


 龍輝くん。
 その言葉、ものすごく嬉しい。


 それに。
 思っていた、私も龍輝くんと同じことを。

 龍輝くんと一緒に見る夜空は。
 ものすごく美しい。


「茉蕗と一緒にいると、
 食べ物も、より美味く、
 見るものも、より美しく、
 楽しいことも、より楽しく感じる」


 龍輝くん。
 全く同じ、私も。


「それから、
 辛いことや厳しいことも、
 茉蕗と一緒なら乗り越えることができる」


 私も。
 全く同じ、龍輝くんと。


 龍輝くんと一緒にいると。
 湧いてくる、エネルギーが。
 自分でも驚くくらいに。





茉蕗(まろん)とは付き合いは短いけど、
 深い繋がりを感じる」


 私も。
 龍輝くんと同じ。


「それに茉蕗のことは、
 もっともっと前から知っているような感覚もある」


 私も。
 同じような感じ、龍輝くんと。

 なんだか懐かしいような。
 そんな感覚がある。


「だけど、そういう感覚になるだけで、
 具体的には全くわからないし思い出せない」


 それも。
 同じ、龍輝くんと。


 龍輝くんのこと。
 感じる、懐かしいと。

 それなのに。
 全く思い出せない、龍輝くんとの思い出。


「どちらにしても、
 今は茉蕗と一緒にいるから
 幸せだけどな」


 龍輝くんっ。
 ものすごくストレートな言葉っ。


「って、
 こういう状況なのに
 そんなふうに思ってはいけないのかもしれないけどな」


 姿は私。

 それなのに。
 ドキッとした。
 龍輝くんのストレートな言葉を聞いて。


 あぁ。
 不思議、本当に。





 元に戻った、私と龍輝くんが。

 それは。
 翌日の昼過ぎ。



 ソファーに座っていたら。
 突然、私と龍輝くんが目を閉じぐったりとした。


 その約一分後。
 私と龍輝くんは目を開けた。

 そのときは。
 戻っていた、自分の姿に。


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