「……だけど不思議だな」
少しの沈黙があり。
桐生くんは静かに口を開いた。
「入れ替わり、
信じるには難しい話」
そう思う、桐生くんが。
それは。
当たり前のこと。
「どう見ても、
向陽茉蕗ちゃんは
向陽茉蕗ちゃんにしか見えない」
うん。
わかる、それも。
どう見ても。
姿は私。
龍輝くんの話し方でも。
「そのはずなのに……
向陽茉蕗ちゃんが龍輝に思えてくる」
私も。
桐生くんと同じ感覚。
そのことは本当に不思議だと思う。
「そう思えるのは、
俺と茉蕗が入れ替わっているからだ。
これで、わかってくれたか」
「そういうことではなく、
まだ湧いてこない、実感が」
そうだよね。
わかる、なんとなく。
桐生くんが言いたいこと。
「だけど、
姿は龍輝じゃないのに
龍輝に思えてくるということは、
そういうことなんだろうな」
それでも。
理解しようとしてくれている。
桐生くんたちは。
「あぁ、そういうことだ。
それで、さっそくだけど、
聖夜と來空と梨央に説明する。
俺と茉蕗が入れ替わってしまったことについて」