イケメン総長とキケンな関係 ~出会いは突然の入れ替わり⁉ 愛はそこから始まった~




『今、茉蕗(まろん)と一緒にいる奴ら、
 桐生聖夜と諏藤(すどう)來空(らいあ)と平岡梨央(りおん)だけど、
 覚えてるか?』


 思い出した。


 龍輝くんのスマートフォンの画像。
 そこに写っていた人たち。










 桐生聖夜くんは高校三年生。



 そんな桐生くん。
 見えた、大学生くらいに。

 とても落ち着いていて。
 見える、大人っぽく。


 それから。
 目鼻立ちは整っていて。
 モデル並みの美少年。

 街中を歩いていたら。
 皆の目を引くだろう。





 諏藤來空くんは高校二年生。


 彼も人の目を引くくらいの美少年。





 平岡梨央くんは高校一年生。


 やっぱり彼も注目の的になるくらいの美少年。







 そんな桐生くんと諏藤くんと平岡くん。
 彼らは龍輝くんの幼なじみで親友。





茉蕗(まろん)
 俺との通話が終わったら、
 俺の部屋(そこ)から出てほしい。
 聖夜たちには
『コンビニに行ってくる』
 とでも言って』


 助かります、龍輝くん。

 事情を知らない桐生くんたち。
 彼らと一緒の部屋にいるのは厳しいと思っていたから。


 そう思いながら。
 頷く、「うん」と。





 今。
 座っている、ベンチに。

 場所は。
 龍輝くんの家の近くの公園。


 公園(そこ)で。
 待っている、龍輝くんのことを。



茉蕗(まろん)……?」


 待っている、しばらく。
 龍輝くんのことを。

 そのとき。
 聞こえた、声が。





「……龍輝くん……?」


 やっぱり変な感じ。


 私の目の前には。
 私の姿になっている龍輝くんが。



 そうして私も。
 呼んでいる、龍輝くんの声で龍輝くんの名前を。

 それは。
 不思議な感じがする。


「……なんか不思議な感じがするな。
 入れ替わったお互いの姿を直接見るというのは」


 龍輝くん(私の姿)は少しだけ苦笑い。


「……そうだね」


 私も。
 少しだけ苦笑い。


「隣、座ってもいいか?」


「もちろんだよ」


「サンキュー」





「思ったより早かったな、
 俺たちの入れ替わり」


「そうだね」


 本当だ。
 早かったなぁ、二回目。



「お兄ちゃん、
 ボール取って」


 いつ元に戻るのだろう。

 どうしよう、こんなことが頻繫に起こってしまったら。

 
 そう考えると。
 かなり参ってしまう、精神的に。



 そんな気持ちになっているとき。
 聞こえた、誰かの声が。


 その声に反応するように見ると。
 走ってくる、小学生低学年くらいの男の子が。
 転がってくるボールを追いかけて。


茉蕗(まろん)
 あの子『ボール取って』って言ってる」


 そうだった。

 周りから見たら。
 私が龍輝くん。


 そのことに気付き。
 拾う、転がってきたボールを。

 大きさはドッチボールくらい。



 ボールを受け取った男の子は。
「お兄ちゃん、ありがとう」
 そう言って。
 走って行った、友達のところに。





 友達のところに戻って行った男の子。

 その子のことを見届け。
 再び座る、ベンチに。



「不思議な感じだな、なんか。
 茉蕗(まろん)が『お兄ちゃん』って呼ばれるのって。
 でもまあ、そうなるのか、
 周りから見たら」


 そうだね。


 思わないよね、周りの人たちは。

 私と龍輝くんが入れ替わっているなんて。





「あのさ、茉蕗(まろん)
 入れ替わりのこと、聖夜たちに話そうと思う」


 龍輝くんの言葉。
 驚いた、ものすごく。


聖夜(あいつ)らは
 すげぇ信頼できる」


 それでも。
 伝わってくる、ものすごく。
 龍輝くんの思いが。


「だから、
 聖夜(あいつ)らに助けてもらおう。
 俺と茉蕗だけで抱えるのは限界があると思う」


 確かに。
 龍輝くんの言う通り。


「信頼できる他人(ひと)たちに
 俺と茉蕗のことを知ってもらっている。
 それだけで心強いと思う」


 精神的に強そうな龍輝くん。


 そんな龍輝くんも。
 平気なわけではない。

 抱えている、本当は。
 心配や不安を。


「俺にとって信頼できる他人(ひと)たちは、
 聖夜と來空(らいあ)梨央(りおん)だ」


 信頼できる他人(ひと)がいる。

 それは素敵なことだと思う。


「家族のことも、もちろん信頼している。
 だけど家族には逆に話しづらい。
 心配させたくないという気持ちもあるしな」


 確かに。


「一方的に話を進めてしまったけど、
 俺としては、そうしたいと思った」


「いいと思う」





 今、龍輝くんの部屋の前。


「わりぃ、待たせたな」


 龍輝くん(私の姿)はドアを開け。
 声をかけた、桐生くんと諏藤(すどう)くんと平岡くんに。


「おかえり、龍輝。
 ……って……。
 その子、誰?
 龍輝の友達?
 ……ものすごく元気がいいな……」


 そう思うよね、桐生くん。


 思わないから、絶対に。
 桐生くんと諏藤くんと平岡くんは。

 私と龍輝くんが入れ替わってしまっているなんて。





「細かく説明する前に
 俺たちの今の状況を先に言った方がいいな」


「……『俺』って……
 君、なんだかイメージと違うね……」


 困惑している、桐生くんたちが。

 無理もない。


「今、俺は
 ここにいる向陽(ひなた)茉蕗(まろん)という子になっている」


「……え?
 ちょっと、何を言っているのか……」


 引き続き。
 困惑している、桐生くんたちが。


 わかる、ものすごく。
 そういう反応をするのは。


「単刀直入に言う。
 俺と茉蕗は入れ替わっている」


 龍輝くんのストレート過ぎる言葉。


 その言葉に。
 驚き過ぎている、きっと。

 固まっているから、口をポカンとして。
 桐生くんと諏藤(すどう)くんと平岡くんが。