「あの、
水嶋さん、黄宮さん」
再び、歩いている。
美術室へ向かう廊下を。
「帆夏でいいよ、茉蕗」
「南穂でいいよ、茉蕗」
水嶋さんは『帆夏』。
黄宮さんは『南穂』。
そう言ってくれた。
「帆夏ちゃんと南穂ちゃんに訊きたいことがあって……」
「うん」
「どうして《ピンク・ラビット》のメンバーは、
私にここまで丁重に接するのか、
帆夏ちゃんと南穂ちゃんは何か知ってるかな、って」
「知ってるというか……
ほら、さっき皆が言ってたでしょ。
茉蕗が《ピンク・ラビット》に一人で立ち向かって勝った、って」
「うん、それは聞いたんだけど、
どんなふうに接したのかな、って」
「……茉蕗、
本当に覚えてないの?」
帆夏ちゃんが私の顔を覗き込む。
「もしかして茉蕗には
自分でも気付いていない、もう一人の茉蕗がいるってこと?」
南穂ちゃんも私の顔をじっと見つめる。