「俺たちが君のことをここに連れて来たのは、
『白龍』の総長にとって君が大切な人だと思ったから。
 ……言い方が悪くなってしまうけど、
 君のことを利用させてもらったんだ。
 君がここにいるということを『白龍』の総長が知れば
 きっと来てくれる、ここに。
 そう思ったんだ」


 そうか。
 だから私はここに連れてこられたんだ。


 確かに、よく考えたらそういうことになる、のかな。



 思っていた、海翔さんや北邑(きたむら)さんは。
 私のことを『白龍』の総長さんの彼女だと。

 最近『白龍』の総長さんに相手にされていなかった海翔さんや北邑さん。
 二人にとっては私はエサだったということになる。
『白龍』の総長さんのことを呼び出すための。


 エサ……。
 自分でそう例えることは虚しくなるけれど。


「そのために茉蕗(まろん)ちゃんには手荒なことをしてしまっているけど」


 自分で悲しい例えをして虚しくなっていると。
 海翔さんは申し訳なさそうに頭を掻きながらそう言った。


「あの……
 訊いてもいいですか」


 縛る、手足を。
 ここに連れてきて。

 海翔さんや北邑さんたちが私にしていること。
 それは、かなり強引なやり方だと思う。


 だけど。
 知ることができた、とりあえず。
 私がここに連れてこられた理由を。

 そのことは少しだけスッキリしたかもしれない。



 一つ疑問が解決する。
 そうすると他に気になることが出てくる。

『白龍』と海翔さんや北邑さんたちは何のチームなのだろう、と。

 そして『白龍』と海翔さんや北邑さんたちは何で勝負をしているのだろう、とも。

 私のことを『白龍』の総長さんを呼び出すためのエサとして利用までする勝負。
 それは一体どんな勝負なのだろう。