目の前の(テーブル)には、宝石より眩しい菓子や果実が並んでいる。
 甘い餡がたっぷり詰まった包子(パオズ)や、元宵団子(げんしょうだんご)、桃、瓜、梨、柚子、その他多くの世界中の珍しい食べ物たち。

 私はそれらの食べ物たちを、ひとつ、またひとつと口に運んでは、こっくんと飲み込んでいく。

「うんー! 美味しい……幸せ」

 頬に手を当てながら、私は口の中いっぱいに広がる桃の果汁を噛み締める。

「そなたは本当に花より団子だな」

 呆れた表情で卓に頬杖をつきながら、陛下が言った。けれど、その瞳には慈愛の色が滲んでいる。

「美味しいものがこんなにたくさん! 私今、世界一幸せな妃です!」
「そうか」

 苦笑する陛下に、私はにっこりと満面の笑みを返した。

 私の名前は、(リー)雪玲(シューリン)。帝国・(ずい)の若き皇帝、(ツァイ)颯懍(リェン)貴妃(きひ)だ。

 これは、一庶民の私が貴妃に上り詰めるまでの序章である。