太陽が昇り、また沈む。昨日と同じくらいの時間、私はまた図書室へ行った。今日はそのまま、司書さんの方へ直行の予定だ。ラブレターのためだけに来たから。昨日借りた本は、まだ読み終わっていない。

「あ、十和さんじゃん。ラブレター?」

私に気が付いた司書さんは、ちょっと待っててねーと言い、クリアボックスを開けた。昨日よりも少し中身の手紙が増えているのを見て、みんな恋をしているんだな、と思う。

「合言葉、教えてくれる?」
「今日は”I”です。また大文字で」
「そこは同じなんだね」

司書さんから手紙を受け取った後、「元気?」と聞かれ、とまどいながらも「元気です」と答えた。急になんでそんなことを聞くのかと不思議に思ったけれど、司書さんは一応先生だから、心臓のことを知っているのかもしれない、とも思った。それに、わざわざ聞くことでもない。

然し、ふと思った。なんか最近、そういうこと聞かれすぎじゃない? と。手紙やら、司書さんやら。

病気のこともあって、私は心配されることがあまり得意じゃなかった。病院生活の中で、いつも思っていた。言えるわけがないことを。

我慢できるくらいの余裕はあるのだし、かまわないでほしい。
返答するときに気を遣うし、とにかく。かまわないでほしい。
言葉で痛みが消えるわけじゃないのだから、かまわないでほしい。何も変わらないのに。

とにかく私は、かまわないでほしかった。
今ではもう思い出になりつつあるけれど、そのころはずっと、そう思っていた。