スズメの涙
      佐藤清美

その女の子はスズメを見ていた。そしていつもと同じ服を着ていた。
同じ服というか7日間、同じ服を持っていました。

その女の子の家族は何の変りもなくいてほしい存在でした。

その女の子の名前は由利といいました。

由利はどこかへ行くときには必ずハンドバックをたすき掛けをしていました。

ある時「遊園地に行こう」と兄の勇は言いました。
兄とは5歳離れていました。
由利は嬉しそうに「行こう!」「楽しみだね」と言いました。
由利は遊園地のコーヒーカップの乗り物が好きでした。
母親は苦手だったみたいだけど、由利が嬉しがることの方が大事だと思って一緒に
乗っていました。由利はあまり嬉しがる子供ではなかったのです。

友達はいつも2人くらいでした。大勢いるのが苦手でした。

ある時、熱を出して外へ出られない時、友達が宿題を持ってきてくれた時がありました。

由利が体調が悪くなるときは大抵、雨が降る時でした。

どうしてかは家族は知りませんでした。

由利は朝の通学の時間になる時スズメと唄いながら歩いていました。
ある朝の日、由利は黙ったスズメが涙を流していたのを見たことがありました。
その次の日は雨になりました。その光景を見たのは1回だったけれど、その時から由利は
あのスズメを思い出す時は雨になる前の日でした。そして体調が悪くなっていました。

スズメが涙を流すなんて知る人はいないけれど、由利は季節ごとに変わる天気のことを
知るようになって、少女から成長する中学生の頃や高校生の時も体調が変わりそうな
頃は体調を整えていました。女性に近くなる時、初めて恋人ができる頃、スズメの
事は忘れていました。

恋人は小鳥を家で飼っていました。由利はその小鳥と一緒に唄っていました。
楽しいひと時と愛情を知りました。なつかしく唄って思い出していました。


由利には実はある力があったのです。天気予報を見た時必ず鳥の声が聞こえてくる
のでした。その能力は子供のころ押さえている感情でそうなっていたのだけど、
体調を整えて、治したけれどその力はまた戻ってきたのです。

愛情というものを知ったのがキッカケとなったのでしょう。

その飼っていた小鳥のくーちゃんが亡くなった時、由利は精神病を患い、ある事が
キッカケで直ると信じ、また体調を整えて普通に戻ろうとしていました。

病院に通院していたある時スズメを見ました。
そのスズメは、たくさんいたのに1羽だけ残って人間にびくともしないスズメでした。

涙を流していたのです。きっと人間に通じる何かを持っているスズメなんだと思います。
由利はまた雨のことかも?と思い出したけれども、今度は違う事に気づきました。
このスズメは由利を最後に見てこの世の中から消えるのだと分かったのです。
由利はスズメの声を聴いたのです。スズメは「あなたは、この通りを今日で通らなく
なるよ」と教えてくれたのです。

そのあと由利は普通の女性になり、子どもを産みました。