ベン・ネヴィス教会は、商業都市グレンカダムの四方を囲んでいる山脈の内、西のベンロマック山脈の(ふもと)建立(こんりゅう)された聖教会である。

 そしてそのベン・ネヴィス教会の更に奥、険しい岩壁から成るベンリアック聖山(せいざん)の壁面に沿うように建立されているのが、魔法神を崇敬(すうけい)する人々が住まう神殿――ベン・リアック神殿と修道院。

 数十年前まではその教会と神殿への行き来は、岩壁の峡谷に架けられた長さ100メートル超の不安定な吊り橋しか無かったのだが、あるとき勢いとノリに任せてベンロマック山脈をぶち抜いて鉄道を作り始めた頭がおかしい仕事中毒(ワーカホリック)な岩妖精達が、ついでとばかりに本能と職人魂と趣味の(おもむ)くままに、当時としては貴重で希少な魔鋼鉄製アーチ状の橋梁(きょうりょう)()()()()作っちゃったのである。

 当時、というか現在もなのだが、枢機卿(すうきけい)である森妖精のアーリン・ティム・ジンデルは、岩妖精のその行いに最上級の感謝と祈りを捧げたのだが、彼、彼女らはそれらを一切受け取らずに去って行ったという。

 その慈悲深く無欲な姿に更に感動した彼は、その岩妖精を率いていた女性を〝橋梁の聖女〟と勝手に認定し、橋が開通した日をやっぱり勝手に記念日にした。

 ちなみに聖女認定も記念日も、当り前に彼の独断であるため非公式である。

 枢機卿猊下(げいか)は、聖女萌えだった。

 一応だが教会本部には、枢機卿から「そうしたい。そうするべきだ。そうじゃなきゃヤだ」とかに限りなく近い、年齢数百歳のくせに駄々っ子のような内容の書状が届いたらしいが、また始まったと呆れ果てた教皇様が念のためその勝手に聖女認定されちゃった女性―― ヴラスチスラヴァ・ヴィレーム・スペイサイドへ、本当にして良いのかを確認したところ、

 ――絶対(ぜって)ぇヤだ!

 と、マジギレ返答があっために却下されたそうな。

 彼女ら岩妖精からの反論は、

「ノリと勢いと趣味と本能と煩悩と自己満足の(おもむ)くままにやった。反省はしているが後悔はしていない」

 ――だ、そうである。

 そして感謝と祈りを受け取らずに去った理由は、「それだと腹が膨れないから」という実にシンプルでごもっともなものだった。

 それはさておき。

 ベン・ネヴィス教会がベンロマック山脈の麓に()るのは前述の通りであり、そして当り前だが連なる山々の総称である「山脈」自体の麓にあるわけではない。
 厳密に言えば、古くより「聖山」と呼ばれ崇められている、低木帯の岩山であるベンリアック山の真正面に位置するように、深さ150メートルの(けん)(こく)(へき)である峡谷の底から垂直に建材や石材を積み上げて建立されている教会で、建立開始から完成まで、実に五十余年の歳月が費やされた。

 ちなみに、立地が何故にベンリアック聖山の真正面に位置しているかというと、神々の通り道という意味があるらしい。
 そのわりには架かっているのが吊り橋と、あまりにお粗末であったとツッコミが入りそうなのだが、幅100メートル超、深さ150メートルの圏谷壁が立ち塞がる峡谷にそれを架けるのは、あの岩妖精でも難しい技術であるため勘弁して欲しいと、関係者なら誰しも口を揃えて言うであろう。

 それほどの歳月を()して建立されたその教会は、峡谷の底から突出しており、山稜(さんりょう)に達して初めて()()()教会となる。

 その外観は、中央に尖塔が(そそ)り立つ白を基調とした外壁で構成され、採光窓は全て美しく、だが華美にならない(ステ)(ンド)(・グ)(ラス)嵌め殺し(フィックス)窓で統一されていた。

 そしてそのベン・ネヴィス教会の背後、ベンリアック聖山の壁面に、教会と同じく建材と石材を積み重ねて建立されたのが、聖女萌えな枢機卿猊下や司教などの聖職者が住まう神殿――ベン・リアック神殿なのである。

 その立地は、麓とはいえ険しい野山や峡谷を切り開いて建立された建造物なだけはあり、その場所へ行くだけでも相当な労力が必要であった。

 それに以前は先に述べた通りに其処への往来が、直下150メートルを超えるという険しさとは別種の試練である吊り橋であったため、それはもう一部の高所が嫌いな人々じゃなくても色々と命懸けな行程であったのである。

 皮肉というかなんというか、岩妖精達のノリと勢いと気紛れと、好きなことの前に立ち塞がる障害が高いほどに燃えて萌える変態的趣味人としての(プラ)(イド)によって、偶然か必然かそれらがうっかり重なってしまって出来上がったその橋梁が、結果的に教会と神殿を更に発展させる要因となったのであった。

 ――いや、要因というより()()と言った方が、もしかして適当かも知れない。

 そんな岩妖精達の案外軽いノリで作られちゃったその橋梁は、ベン・ネヴィス教会の正門へと滑らかに繋がれ、一部の違いも狂いすらない配色で作られており、継ぎ目も一切見えないという徹底ぶりであった。

 そしてその橋梁は「聖ヴィレーム橋」と枢機卿猊下がやっぱり勝手に名付けてしまい、挙句橋梁の入口にそのように碑文として刻まれた石碑をデカデカと置いちゃったそうな。

 本当は高欄(こうらん)親柱(おやばしら)に刻みたかったのだが、何をどうやっても傷一つ付けられなく、更に無理にそうしようとすれば、付与されている強化魔法が消滅して橋自体が崩壊すると予測されたため、それは断念したそうである。

 枢機卿猊下はどうあっても刻みたかったらしいのだが、最終的に誰も引き受けなかったために泣く泣く諦めて、代わりにその石碑を置いたらしい。

 明らかに景観として合っていないが。

 そうしてベン・ネヴィス教会への出入りは容易になったのだが、そもそもな立地が西の(はて)であるベンロマック山脈であるため、グレンカダムからの交通手段が徒歩か馬車であった時分では辿り着くだけでも数日を要し、よって教会で〝(よわい)の儀〟を受けようとする者など限りなく少なかった。

 だがそれも、幸か不幸か鉄道が開通したことで利便性が増し、別に教会を訪れる人々のために作られたわけではないのにその門前町のような役割になっちゃっている、過去の迫害と侵攻により落ち延びた落人(おちゅうど)がひっそりと生活していた集落と、今度確実に訪れるであろう観光客の助けに僅かにでもなるようにと作られた駅により、誰でも容易に訪れるのを可能としたのである。

 その集落はリトルミルと呼ばれ、身長僅か1メートル強の小妖精族が、前述の通り落ち延びた場所であった。

 あと誤解している者どもが多数いるのだが、小妖精族が住まうから「小さい粉(リトルミル)」ではない。

 彼、彼女らが某帝国の侵攻から(のが)れて辛うじて落ち延び、だが過酷な逃避行に年老いた者達は次々と倒れてしまい、最後は年若い者しか残らなかった。
 そのようにしてこの地に辿り着き、そして住まうと決めたとき、(たと)え小さき者であっても千の想いを以って誇り高く生きるべしという誓いと願いを込めて名付けたのである。

若き千(リトルミル)」――と。

 岩妖精達が何故そのリトルミルに駅を作ったのか。それは決して同情や憐憫(れんびん)ではなく、絶対に教会や神殿のためでも、二度目になるが決してない。

 リトルミルに駅をつくった理由、それは――鉄道工事のためにたまたま立ち寄った其処に、見付けてしまったのだ。

 源泉掛け流し、ちょっと熱めの炭酸水素塩泉を!

 そう、美肌とリラックス効果で有名な、ちょっとしょっぱめヌルヌルな()()温泉である。

 発見した当時、それぞれ鉄道工事と開墾に従事していた岩妖精と土妖精は、それらを率いていた者達の鶴の声で、仕事そっちのけで湯治施設を瞬く間に造り上げてしまった。
 そして温泉を心行くまで楽しみ、その後その管理を小妖精たちへと委託した――というか押し付けたのである。

 落ち延びる原因となった某帝国の侵攻とは別の意味で、小妖精達はメッチャ戸惑ったらしいが。

 そんな無茶振りをされたのだが、元来小妖精は朴訥で真面目な種族であり、それに岩妖精や土妖精、そして草原妖精と親和的であったため、それを快く引き受けた。

 だがそんな性格な種族である小妖精は、簡単に悪い奴らや(こす)い奴らに騙されてしまうと予想されるため、岩妖精と土妖精の女王と王、そして草原妖精の首領、更に、実は湯治大好き鬼人族の総意により鬼王が、それぞれ連名で管理協力者として名乗りを上げ、挙句の果てにグレンカダムに遣わしている(じゅ)(んけ)使(んし)館《かん》の役職員へ、定期的に巡検するように命じたのである。

 その巡検の役割は競争率が非常に高く、毎回熾烈な争いが繰り広げられているそうなのだが、それはどうでも良いだろう。

 あ、あと嘘か本当か不明だが、子宝安産の温泉でもあるそうで、発見当時に岩妖精と土妖精の代表が一週間くらい其処に滞在しちゃって工期が押したそうだが、それもどうでも良いだろう。
 その遅れは張り切りまくった両名のおかげで、僅か二日であっさりと取り戻したそうだし。

 それから小妖精なのだが、争いを忌避(きひ)してはいるが実は決して戦闘能力が低いわけではない。むしろ高い。

 彼、彼女らは確かにその身は小さな体躯ではあるのだが、()(がん)(そう)(もく)(ふう)の属性魔法に精通しており、そしてなにより魔法の波長を他者に重ねる(すべ)に長けていた。
 よって複数人が同時に同じ魔法を行使することにより、儀式を行うことなく強力な魔法を行使可能なのである。

 その効果は、高位の儀式魔法である〝(サン)(クロ)(ニシ)(ティ)(・マ)(ジー)〟と同等かそれ以上。

 更に、実は狩猟民族でもあるため探知能力と気配を断つ技術が凄まじく、野生動物ですらそれらを察知出来ないほどであった。

 帝国のぉ! 科学力はぁ! 世界一ィィィィ!! と宣言していて、ついでに魔法大嫌いと公言している、最強でいなければ気が済まないという痛い思想な某帝国が危険視するには、それで充分である。

「戦わなければ生き残れない!」と合言葉のように言い合っているらしい殺伐とした某帝国が小妖精族に強襲を仕掛けたのは、実はそういう理由であった。



 ――で。



 そんな歴史をつらつらと能書きのように並べて現在に至る小妖精族の町リトルミルに、特に深い考えもなくシェリーは一人で訪れていた。

 深い考えがないとはいっても、目的は興味本位で〝齢の儀〟を受けるためであるのだが。

 数十年前は、最速でも一週間程度の旅になる往来であったのだが、現在はグレンカダムから鉄道に乗って数時間でリトルミル駅に着き、其処から乗り合い馬車に揺られて数十分でベン・ネヴィス教会に到着するという、案外お手軽なお出かけ感覚で行けてしまうようになっていた。

 げに、鉄道技術は偉大である。

 もっともリトルミルは温泉地として名を馳せているため、巡礼目的ばかりではなく、湯治や保養、そして教会への観光目的な旅行者も少なくない。というかどちらかというと其方の方が多かった。

 全く()て、鉄道技術は偉大である。

 シェリーがこの町を訪れた目的は、先に述べた通り〝齢の儀〟を受けるためなのであるが、本音を言えば退屈凌(たいくつしの)ぎに旅行に来ただけで、商業都市として発展しているグレンカダムから離れてノンビリしたいと衝動的に考えただけだった。

 やっぱり、深い考えなどない。

 もちろんシェリーが一人で出掛けるのを猛烈に反対した過保護な父親(アイザック)もいたのだが、既に成人しているし、そもそも九歳から魑魅魍魎(ちみもうりょう)跋扈(ばっこ)しているような取引商会の相手をして来た彼女が、母親(エセル)譲りの魔法の才に加えて最近では〝六重詠唱(シス・ソール)〟を修めて〝七重詠唱(セットゥ・ソール)〟の修練を始めている上に、義理の母親(エイリーン)から徒手空拳(としゅくうけん)の格闘術――龍纏武術(りゅうてんぶじゅつ)というらしい――も伝授されている彼女が、その辺にいる中途半端に腕が立つと自称している奴らに後れを取る筈がない。逆に、狙った方が哀れである。

 そんなある意味で、実力的に歩く凶器とか一人(スト)(ラテ)(ジー)(・ソ)(ルシ)使い(エール)扱いされそうなシェリーなのだが、現在の格好は年齢通りの女の子をしているわけで、具体的に言えば、初夏らしい白のワンピースに黄白(クリーム)色のサマーカーディガンを合わせ、同じく白の鍔広帽子を被り、小さめのキャリーバッグを引いて足取りも軽くリトルミル駅の構内を歩いていた。

 因みに宿は既に取っていた。多少値は張るが、商業ギルド管轄の温泉宿を紹介して貰い、電信で予約したのである。
 お支払いは、商業ギルドにあるシェリー名義の貯蓄から自動で引き落とししてくれる、ポイントも付く便利なギルドカードで。
 シェリー名義のそれは、どういうわけか光沢のある(メタ)(リッ)(ク・)(ブラ)(ック)製で、それの意味など全然知らないが、綺麗だからお気に入りであった。

 ちなみに其処に幾ら入金されているのかというと、実はシェリーは把握していない。
 無くなりそうになったら連絡が来るだろうと、深く考えずにのほほ~んとしているから。

 だが実は、母親(エセル)から相続した特許の期間が結構残っており、バカみたいに使わないと全然減らないくらいな金額が、雪ダルマなネズミ算方式で増えまくっている事実を、シェリーはまだ知らない。というか意図的に目を逸らしているだけかも知れないが。

 まぁそれはともかく、殆どの客層が家族連れとかイチャコラ男女やワケありカップルだったり同性カップルであったりするために、一人(ソロ)の旅行者は案外珍しく、個室の予約は簡単であった。

 宿や部屋の質に関しては、ギルドのサブマスターに一任しちゃったけど。

 本当は、同じく〝齢の儀〟を受けていないリオノーラと来たかったのであるが、現在彼女はレストランの経営が(かんば)しくなく、そんな余裕はないらしい。

 その原因の殆どが、アップルジャック商会が倒産して食材確保が難しくなったからなのだが。

 まぁそれでも、伝手を辿ってダルモア王国のとある農場から良質の食材を取り寄せているらしく、それでなんとか回っているらしい。
 肉とか鮮魚に関しては、レスリーがやたらと(せわ)しなく港町や海や河川や野山を駆け回ってなんとかしているらしいし。

 ――いや物理的に狩猟してんのかーい!

 と、それを見ていたシェリーが全霊のツッコミを入れ、言われたレスリーは、とーっても妖艶で満ち足りた良い笑顔を浮かべたそうな。
 鬼人族である彼女が返り血を浴びた姿でそんな笑顔を浮かべても、それは恐怖体験でしかない。しかもレスリー自身が美女であるため、より恐怖度が増すばかりである。

 関係ないが、鬼人族の女は陽に当たっても日焼けしないし火膨(ひぶく)れにもならないそうだ。熱や火に対して絶対的な耐性があるらしい。実に羨ましい限りである。

 それはともかく。

 取り敢えずリトルミル駅を後にし、駅前にある案内板の前に立ち、目的の宿が何処にあるのか探していると――

「お嬢ちゃん、一人かい? オレたちもこの汽車で来たんだが、困ってるなら一緒に観光しないか?」

 ――チャラい男達にナンパされた。

 おお、人生初ナンパ。などとどーでも良いことを考えながら、だが残念ながらそんなものには一切興味もなく、更に言うなら周りに最高な異性しか居なくそれを見慣れているシェリーは、言ってしまえばそんな程度の低い奴らなど塵芥(ちりあくた)程度にしか感じられない。

 まぁ最高の異性とはいっても、色々問題があるのばっかりだけど。()()()()()()()という意味で。

 心中でそんな独白をし、だが言い寄る男達を一瞥しただけで華麗に無視(スルー)する。そしてそのような態度をとると、そういう男達はまぁテンプレ的に一つの行動をとるわけで、案の定というべきかお約束というべきか、しつこく声を掛けるだけではなく取り囲むようにして行く手を(さえぎ)り始めた。

 因みにどのように声を掛けられ続けていたのか、シェリーは一切覚えていないし聞いてすらいない。人は路傍(ろぼう)の石が転がる音に、興味など持てる筈などないのだから。

 取り囲んで周囲から見えないように肉壁を作ろうとする男たちの行動を待つわけがないシェリーは、その囲いが完成するより早く、僅か一歩だけ踏み出してその囲いの完成を妨げる。所詮素人の動きなど、目の粗い(ざる)のようなものだ。

 そしてその動きを捉えられなかった男達は、案の定何が起きたのかが理解出来ず、だがすぐに何かを大声でがなり立ててシェリーに掴み掛かる。

 そんな大声を上げれば誰でもその異常に気付くのは当然なわけで、シェリーに掴み掛らんと伸ばされたその手が、真下から突然現れた小さな手に捕まれ阻まれた。

 それはシリキ紋様が刺繍されている駅員装を纏った、小妖精の駅員であり――

「おぎゃぐさん、こったらどごでさわがねんでけねすか。ほがのふとさわりすべ」

 ――そして男達を見回して、鋭くもつぶらな黒い瞳のキメ顔でそう言った。ただし、(なま)りが酷くてなにを言っているのかが全く伝わらなかったが。

 その所為もあり――いや、その所為でしかないのだが、男達は逆上して更に喚き立てる。

「駅員が俺たちの出会いを邪魔してんじゃね――」

 だがそんな脅しに屈する小妖精ではない。なにしろ彼は今、仕事中なのだから!

「さわがねんでけれってへったすべ。なしにわがねだべこのびっきわらしっこ」

 そして小妖精の言葉も、やっぱりなにを言っているのか判らない。

 ちなみに翻訳すると最初のは、

「お客さん、こんなところで騒がないでくれませんか。他の方に迷惑です」

 という意味で、次のは、

「騒がないで下さいと言いましたよね。どうして判らないのでしょうかこのクソガキ」

 で、ある。字幕スーパーがないと、きっと一部の人しか解さない言語であろう。

 もちろんシェリーにも、彼がなにを言っているのかは全然判らない。だが判っているのは、この駅員は並々ならぬ実力の持ち主で、そして仕事中であるということだ。
 なにしろ小妖精は性根が何処までも真っ直ぐで、更に「バカ」が付くほど生真面目であるため業務は確実に(こな)す優秀な人材揃いなのである。
 よって業務遂行に支障を(きた)す要素の排除には、一切の容赦をしない。

 そして数秒後――

 男達はたった一人の、身長1メートルに満たない小妖精により制圧されていた。

「助けて頂き、ありがとうございます」

 意識を刈り取られた男達を、集まって来た小妖精の駅員達数名が「おいさ、おいさ」と山車(だし)のように担ぎ上げて何処かへ運んで行くのを首を傾げて見送り、シェリーはその小妖精に頭を下げる。

(大し)(たこ)(とは)(あり)(ません)

 その駅員はシキリ紋様の鉢巻きをクイっと直し、口角をニヒルに上げてニヤリと笑った――つもりなのだろうが、身長と見た目が愛らしい小妖精の容姿補正によって、格好良いじゃなくほんわか和んでしまう。

わやらねっ(自分がやらな)たっておめ(くても貴女が)ぼでぐりま(ぶっ飛ばして)わしたべ(いたでしょ)こったらど(こんなところ)()()()()(使)られてぐね(われたくあり)ったいに(ませんから)

 そしてそうキメ顔で言った――らしいのだが、やっぱり訛りが酷くてシェリーは一切理解出来なかった。