と不思議になったので田中さんに連絡をとってみた。そして私は、驚きの事実を知った。
そうしてしばらくの間会話をしていると、 【今から行く】
【私に気づかれないようにしてください】
というメッセージを受け取って通話を終えることになった。
田中さんは私より先に墓場に着いたようだった。私は田中さんが来るまでの間に母の写真を拝んでおいた。
数分して田中さんの姿が現れた。いつもの格好とは違う服だったけど一目見て田中さんだとわかる容姿をした田中さんが、
『こんばんは、お待たせしてすみません』と頭を下げてくる。
私も、お待ちしておりました、と答える。そして、母との話を聞いてもらいたくてここに来たのだ、ということを伝えると、それを聞いた彼女は、私についてきて、と言って私の横を通り過ぎる。そして私をどこかに案内してくれた。そこは薄暗くて長い廊下を進んだところにある部屋だった。そして部屋の奥で田中さんが立ち止まる。
「ここで待っていてもらえるかしら」と田中さんが言ってから部屋を出ていくのを見てから私も立ち上がり扉の向こう側に行こうとするが、 田中さんに「待った」と言われる
「ちょっとだけそこで待っていてほしい」
私は言われたとおりに立ち止まった。すると彼女が私のもとへ近づいてくるのが見え、そのまま抱きしめられる。「田中さん?」そう呼びかけても答えてくれることはなく、彼女の腕の力が強くなるだけだった。
そのまま何分くらい時間が経っただろう、田中さんの腕が離れると私は再び部屋の中央あたりに立たされた。すると彼女はポケットの中に手を入れて、何かを取り出して私の目の前に立った 私は彼女に手渡されたものを見る。それを手に取ったまま見上げると彼女は私を見下ろしていた。
手の中の物をしっかりと握って私はこう思った。
(この人なら私に母と同じ言葉を贈ってくれるかもしれない)私が受け取った物は、一通の手紙だった。
10 手紙を読み終えた私はそれを丁寧に折りたたんで胸の前で抱きしめながら、 【ありがとうございました】
とだけ書き込んだ。そして、田中さんにその事を伝えると、彼女は満足そうに私から一歩下がった。
私は彼女の方を見て、少しの間目を合わせていた。そして互いに笑いあった。
私は、彼女から受け取った手紙を胸元に持ってきて抱きしめながら、部屋を出た 外に出ようとしたとき振り返り 【母に会いに来てくれて、ありがとうございます】
そう告げて、私はその場を去った。……。
●沼田製薬中央研究所
日本全国から集められた体液サンプルが24時間体制で分析されていた。金曜病とは果たしてウイルスなのか心因性の病気なのか、公害なのか、解明が急がれていた。今週金曜の発症者は先週比で2倍。昨晩は全国で12名が金曜症候群を発症している。今朝の時点で原因不明。金曜症患者の増加を食い止めるには治療法の確立が急務であった。
そんな中、製薬会社で主任研究員として勤める田中真由は同僚の高橋という女性に金曜病の話をしていた。「それでさー、その人が言うにはこの会社で昔働いていた人の血液を使ってDNA解析したけど、特に問題は無かったって」「まぁこの会社は大病院との繋がりもあるから」などと話してる二人の元に二人の男が現れる。「お二人は仲が良いみたいですね」という質問に対して「ええ」「はい」。
「ところで沢木さんっていう男性、最近、ここに出入りしてなかった? あと、笹谷亜希という研究員も。彼女、3年前までここのスタッフだったらしくて」と尋ねると、「いえ」と答える高橋に「そうですか」と言ってその二人を探し出すことにした。「でもさーその人の言ってることよくわからないよね」と疑問を口にする二人に「いや、確かに意味がわかんないですけど」と答えながら資料室へと向かった二人。「えっと笹谷さんは……」
資料室内では一人の男性が床に座って本を読んでいた。「あの、沢木って人を探されているんですが」
そう聞くと男性は、立ち上がり「あぁそれ、俺です。……なにか?」
田中は「金曜症候群の原因がわかったので来てもらえますか」
笹谷はその言葉に眉間にシワを寄せ 田中は笹谷に説明を始める。そして田中の話を聞いていた笹谷は怒りの形相で「じゃあなんだ?! 俺は毎週死にそうな思いをしながら働いてたってことか!!」
田中は静かに話を聞き、そして最後に「あなたは悪くありません。私が保証します」と話す。「……そんなこと言われたって……もう無理だ……こんなところ辞める。明日からまた仕事探しだ……」
笹谷は落ち込んでいた。「じゃあそろそろ行きましょうか」