ワイバーンホライズンズ~ゲーム作家の俺がログアウトしくじったら自作の龍を退治する羽目になったんだが

アルバートは舌打ちして、今度は別の呪文を唱えた。今度は、火炎の塊を撃ちだす「フレイムランス」火柱の魔法が放物線を描いてリリスに迫る。しかし、同じ様にリリスの前に張られたバリヤーに阻まれた。どう見てもこっちの攻撃が通らない、どうする?「リリスはMPが少ないみたいです」アルバートを応援してやりたい。が「アルバート。一旦逃げてくれ」と告げた「ああ、わかった」
「何言ってんだよ。今更逃げるなんて卑怯だ」と言いながら、カルバートが剣を抜いた。そして、カルバートは逃げ出した。アルバートも逃げた「おい、お前は戦わないのかよ!」と叫ぶと、カルバートの罵る声が聞こえた。
どうしたら、勝てる? 考えを纏める時間が欲しい。
リリスの背中に黒い影が現れた。「シャドウストーカー」実体化した暗黒騎士が襲いかかる。しかし、アルバートの意識が向いたのは、暗黒よりもむしろ、リリスの方にだった「うお、なんだありゃ」
リリスの周囲に複数のディスプレイが表示され、一斉に文字が躍った「ワイフ・リザード」リザード?竜の亜種か? リザード? ドラゴンの一種?「なあ、ワイフってなんだ? 女? 名前?」「さあ、知りません。アルバートさん、そいつは危険です、近づかないでください」
リザードはアルバートの注意を引きつける。そしてアルバートの視線が一瞬だけ逸れる。
チャンスだ「アルバートさん!」と叫んで僕は、駆け出した。そしてリリスが僕に手をかざした「ダメですよ、アルバートさんの敵討ちはしなくても」そうじゃない。そうじゃないけど。
僕はリザードに体当たりする「キャー」リザードが叫び声を上げた「邪魔をしないで!」アルバートの声で怒鳴られる。でも構わない、リリスを助けなくちゃ。リリス、僕が守ってあげる。
そして、僕の意識は途絶えた「ああああ、もう。アルバートさん、こんなに弱らせていたらワイフを殺せないじゃ無いですか」
僕はワイフに負けた。「ううう、情けないよ」涙が止まらなかった「ごめんなさい」リリスが優しく頭を撫でてくれる「ありがとう、リリスはやっぱり優しいね」僕は甘えることにした。「ところで、リリス。ワイフってなんだ? 教えてくれよ」アルバートの言葉を聞いて思い出した。そうだワイプ。ワイプ・アヘッドの連中の仕業だ。あいつらゲームクリアがどうとかって訳の分からない事をほざいて僕らを殺そうとしたんだっけ?「ワイブとは……。このゲームの運営組織の名前でしょうか?」と、言う事は「カルバート、お前はワイバーン・ロアの一味なのか!?」
カルバートは「ワイバーン・ロワ―」のメンバーだ。カルバートの父親は「ワイバーン・ロワー」の親分だった「なるほど、それで、ワイバーン・ロアの奴らは、俺たちを消す為にこんなことをしているのか」アルバートの推理は正解だった「ああ、多分な」とカルバートが答え、カルバートが「まあ、それはともかく、カルバートも一緒にやろうぜ、ワイバーン」
カルバートが首を横に振る「ワイバーンって何だよ」カルバートの問いにバーグマンが答える「ワイバーンって言うのはな、この世界のボスキャラだ」「じゃあ俺に倒せるわけ無いだろ!」カルバートの反論は尤もだ。ワイバーンはドラゴンの一種でこの世界でも最強の一角を占めている、ワイバーンに勝つにはワイバーン以上の力が不可欠だ「大丈夫だって。俺に良いアイデアがあるんだ」
アルバーのアイデアは単純で、まずワイバーンより強くなってからワイバーンをぶっ殺すと言うものだ「まあ、やって見るよ」こうして三人は、ワイバーンに戦いを挑む事となる「よし、準備完了だ、行くぞ」アルバートの言葉と同時に周囲の景色が変わる「ようこそ、バーチャルワールドへ、ここは貴方達の為に創られた世界で貴方達が創造主なのです。あなた方の運命は我々が決めます。我々はあなたの決断を尊重しましょう。では選択をどうぞ、ワイバーンを討伐しますか? それとも放置しましょうか」アルバートの口角が上がる「ワイバーンを倒してやる」アルバートは宣言する
「はい、分かりました。あなた方が勝利することを心から祈っております」
そして、視界が暗転してワイバーン戦が始まる ワイバーン戦のフィールドを抜ける。そこには草原が広がっていた。そしてワイバーンがいた。「ワイバーンだ!」
「ワイバーンですね」アルバートが大剣を構える「アルバート、待て」カルバートの制止を無視してアルバートが突進する。
「グオオ!」ワイバーンは炎を吐く「熱っちぃ!」アルバートが飛びのいて、火傷を負う「アルバート! 避けたほうがいい」カルバートが忠告する。ワイバーンは火炎ブレスの第二射に入る「今度こそ! 喰らえぇぇ!」アルバートは渾身の力を込めて剣を突き出すが、「あれ、手応えが、ない」ワイバーンはそこに居なかった。「逃げられたな」