ワイバーンホライズンズ~ゲーム作家の俺がログアウトしくじったら自作の龍を退治する羽目になったんだが

アルバートは訳がわからない。だが、事態が好転しているわけでもないことはわかっている バーグマンの言うとおりだとすれば、カルバートがこのゲームに囚われた状態、すなわち、この世界自体がゲームと同じ仕組みならゲームクリアの条件が整えば終わるはずだ。ならば、やる事は一つだ。
「とにかく、ゲームをクリアしよう」
「そうです。しかし、今の私たちにできるでしょうか」
「弱気はいけねえ」「でも、相手はカルバートですよ」
「奴が相手だろうと関係ない。奴を倒せば良いだけだ」
「倒すってどうやって」
「決まってるだろ。俺のワイバーンで奴のワイバーンをぶち殺すんだよ」
「ワイバーン・デストラクション」
「奴のワイバーンを皆殺しにするんだ!」
カルバートが作り上げたのは、広大な世界のどこかに隠されている「竜殺し」を探し出して討伐する事。それがゲームの趣旨。
カルバートはゲームを通じてプレイヤーに自分の正しさをアピールし、正しい者の勝ち、正しくない者は死ぬ、が正しいルールであると信じている。つまり、「死は悪徳で、生きている事が正義」なのだ。
カルバートはこの世界をゲームではなく宗教にしたかった。「神を殺せ!」を旗印に信者を集めてカルト化し、自分が絶対の権力を手に入れるつもりだ。そのためにカルバートは「正義は勝つ」と知らしめ、勝利条件は「竜殺し」を見つける事でなくてはならない、とした。「見つけられなければお前たちは間違ってる」と宣言したのも、その為だ。しかし、これは間違いだ。「正義は負ける」のだから。
アルバートはゲームのルールを逸脱する方法を見つけた。それは、アルバートのワイバーンをワイバーンにぶつけること。つまり、相手のドラゴンを倒す、だ。
しかし、それは無謀と言うよりは馬鹿げている。ドラゴンをワイバーンで倒した場合、勝ったドラゴンは経験値をたくさん得ることができる。
そして、レベルが上がりステータスが上昇し、スキルも覚え強くなる。
逆に、ワイバーンをドラゴンにぶつければ、負けたワイバーンのレベルが上がる、さらにスキルを覚え強くなっていく。
「ドラゴン・イコライザー!!」アルバートが叫んだ カルバートが作ったワイバーン・デストロイヤーに戦いを挑む「さすがに、ドラゴンの群れの中に突っ込むのは無茶よ」「心配するな、ワイバーンどもの弱点は既に分析してある」「ドラゴンの鱗がワイバーンよりも硬い事を知っているのね」「ああ、ワイバーンに効く攻撃は殆ど通じなかったからな」
カルバートは「鱗が柔らかい箇所を攻撃する事」を条件に付けていた「それでもワイバーンは固いのよ」アルバートのワイバーンは翼を広げた。そして、飛び立った「行けえ、アルバート!私のワイバーン!」
「ドラゴン・イコライザー!突撃!」「うおおお!」
「ワイバーンの弱点は目だ!」「了解!」
アルバートのワイバーンはカルバートのワイバーン目がけて急降下、そしてそのまま突進した 激突の寸前に、アルバートのワイバーンの頭部のツノが変形して巨大な槍状になった そして、カルバートのワイバーンは頭頂部から串刺しになって倒れた
『やったあ!』
二人は手を取り合った。しかし、喜びもつかの間、すぐに次の戦闘が始まった カルバートのワイバーンは、たった一撃で死にかけたが死んではいない。それどころかまだ息がある「こいつら強すぎる」アルバートが焦りをにじませた。
そして、再びワイバーンが攻撃に転じた時、アルバートは決断を下した ワイバーンの攻撃をあえて受けてから反撃に出る。これが唯一の活路。「うおら!」アルバートは剣を横薙ぎに振って敵の頭を叩いた。そして「くらぇい!」ワイバーンの横腹を蹴った。
そして、敵は再びワイバーンに襲いかかってきた「やあ!」アルバートはワイバーンに体当たりして押し飛ばした。そして「ワイバーン!今度こそトドメだあ」
ワイバーンは倒れこみながら、アルバートのワイバーンの頭部の先端に噛み付いた「ワイバー・・・ング!?」
カルバートは「なんだ?」と驚いた「おい、どうしたんだ」
アルバートのワイバーンは苦しみ、痙攣を起こしたように体を震わせている「やめろ・・・離れろ・・・離れろぉ!」「どうなってるのアルバート? 大丈夫なの?ねぇ、アルバート」
アルバートのワイバーンは暴れる。ワイバーンに噛み付かれたままのワイバーンは振りほどこうとする。しかし、ワイバーンは離さない。必死の形相でしがみついている「どうすれば良いの?どうしたら助かるの?ねえアルバート!」
「助けてくれ、俺はこんなゲームやりたくないんだ!早く終わらせたいんだ!」
カルバートが駆け寄る「ワイバーンに喰らいついてる方だ!」アルバートはカルバートの方を向いた「ワイバーンを引き剥がしてくれ」
「ワイバーンって言うな! ワイバーン様と呼べ!」