ワイバーンホライズンズ~ゲーム作家の俺がログアウトしくじったら自作の龍を退治する羽目になったんだが

黒いドラゴンの口から禍々しい漆黒の炎が放たれた。アルバートは回避しようと身を捻るが、ドラゴンの放った攻撃の衝撃波によって吹っ飛ばされてしまう そして地面に倒れたアルバートが身を起こした時、そこにあったのは自分の愛車の姿だ
「おいっ!」「おいっ!」「嘘だ!」「アルバート・フレイザー」
身体を激しく打ち付けられた激痛よりも。自分の車が燃えている光景がショックを誘う 炎上する車は火柱を上げて崩れ落ちた そして煙が立ち込める中に佇む人影が見えた気がしたが次の瞬間には何も見えなくなった
「どうする?どうすれば……」「落ち着け!」「おいっ!」
3人は途方に暮れるしかなかったが 突如、黒い竜の首が宙を舞った そして血飛沫が上がると、今度はカルバートを包んでいた光が消えていく その傍らに一人の男が立った。
カルバートと似たような格好をした、カルバートと同じような年齢に見える男 彼はゆっくりと振り返り、カルバートを睨み付けた。
カルバートはその男の視線を受けて後ずさった「何故、俺を狙うんだ?!」
男はカルバートを見つめてこう言った「私はカルバートではない」
そして彼はワイバーンを操縦する。カルバートと同じような仕草だ。しかし、どこかぎこちない動きだ。カルバートのように自由にワイバーンを動かすことは出来ないのかもしれない。それでも男はカルバートと同じように戦って見せた そして最後にアルバートと目が合った。彼は一瞬だけ笑ったように見えた。そしてアルバートも理解した「彼はカルバートではない」しかし、彼の正体はすぐにわかった。彼がアルバートのよく知っている人物だということに 彼はかつてアルフと呼ばれていた。
ゲームの名前は『アルフ』
彼はこのゲームを作った張本人だ。
アルフの本名を知っているのはこの世界に彼しかいない 彼は現実世界には存在しないはずなのに。どうして??? そして、アルバートは目を覚ました そこは見慣れぬ部屋の天井だ。ここは一体どこなのか?自分はどうなったのか?記憶は混沌としている アルバートが横になっているベッドの横には女性が椅子に座って寝ていた 彼女は目を閉じたままアルバートに語りかける
「気分はどう?大丈夫?」
「あんたが助けてくれたのかい?あれ?ここはどこなんだ?
「私の家だよ」
女性に促されて体を起こそうとしたが全身が痺れて力が入らない「駄目。そのまま寝てて」
再び横になったアルバートはぼんやりとマーサの美しい顔を眺める。顔の作り、目の形、鼻の高さ、口の形。そして耳。全てが完璧に整った完璧な美人だ この世のものと思えない。まさに美の女神が人の形を借りて具現化したような美女。そんな女神の膝の上にいるアルバート アルバートは照れ隠しからか、つい軽口を叩いた
「いいね。こういうシチュエーション。まるで映画みたいだ」
アルバートがそういう感想を述べるとは思いもしなかった。
「何言ってるの?まだ寝ぼけてるの?」
「俺はどれくらい眠ってたんだい?」
「3日よ。その間はずっと付きっきり。だからあなたが起きてくれないと、私、困っちゃうわ」
「それは悪い事をしたな」
マーサが手を伸ばし、アルバートの頬に触れる。ひんやりして気持ちが良い。アルバートは目を閉じ、甘えるように、もっと撫でろ、と催促する アルバートを撫でながら、彼女は少し意地悪を言う「あらあら、子供みたいな反応しちゃて」「うるさいよ」
二人は笑い合う
「ねぇ……これから先。あなたの力が必要なの。お願い、起きて」
「仕方ないなぁ。それじゃあ起きるとするかな」
アルバートが再び目を開けて周りを見渡すと部屋の中にはアルバートとバーグマンの姿があった。2人とも、怪我らしい傷はなく無事でホッとしたがアルバートの意識はまだ朧気で視界が定まらない。頭の中で何かがチカチカと光り続けているようだ。頭が重く、体がダルい「おはよう。調子はどう?体の具合が悪いところはない?頭痛はしない?」「うん、もう、平気だと思う」
「良かった~」
「おぅっ!」
バーグマンは勢い良く立ち上がった アルバートは突然の大声に飛び上がって驚いた
「どうしたんですか」
「あ、あ、ああああ」言葉にならない「あー!!!!
「落ち着いて下さい」アルバートは落ち着かせる為に肩を掴んで座らせた アルバートは今一度状況を整理した「まずは現状を打破する」
「その件に関しては、私が」バーグマンが口を開いた「君が?!」
アルバートは怪しんだ「あなたはカルバートの側に居たのでは」
「彼はもう居ません。我々はある意味解放されたのです」
「はあ?!」「解放?どういうことだ!」「どうなってんだ!」