はじめて見合いの話しが舞い込んで来たのは、女子大へ入学してから間もない頃だった。

 見慣れた風景に溶け込んだ高層ビルの大手企業のマークが入った案内状のような手紙が、藤野の会社に届けられたのだ。

 なんで、どうして、と思ったのは香澄だけではなかった。

 桜宮家が次男である晃光の婚約相手を探していることは、当時話題になっていた。数年前からは、あてずっぽうにオーディションのような見合いを続けているらしい。

 その多くの中の一つとして白矢が立ったのだろう。

 しばらく社員達とみんなで考えてそう腑に落ち、香澄も「なんだ」と同じように緊張を緩めた。

「ったく、驚かせやがって。これ『見合い』の文字がなけりゃあ、どう見たってパーティーの招待状だあ」
「なんでも、令嬢にはみーんな出しているらしいじゃないか。とうとう困り果てて、うちに出すぐらいまでに範囲を広げたんじゃないのか?」
「それもそうだなあ」

 香澄の父は頭をかいた。母は神妙顔で頷き返す。