自分を愛してくれた婆様が恋しかった。

 離れていく爺様の傍に、ずっといたかった。

 そして――脳裏に焼き付いて離れない、未来の美しい風景。

 少年は、あの未来が欲しいと強く思った。そして、女性の隣にいる、未来の自分を想像した。

 憧れなのか恋なのか、今はわからない。けれど――再び彼女の顔を見ることができれば、また会えれば、そして大きくなるに従ってこの気持ちははっきりとするのだろう。

 大雪が激しく車窓を叩いた。

 途端に、白い吐息がかじかむ。

 少年は、隣に腰かけた男のコートで暖を取りながら、その時を待っていた。

 宙へと浮かび上がった列車が、氷のレールを駆け上がっていく。そして間もなく蒸気をめいいっぱい吐き出して――夜行列車は停車した。

「え~、夜行列車は目的地へと到着いたしました」

 くたびれた煙草の先に紐つけないまま、青年が寒さも感じさせない表情でそう言いながらやってくる。

「到着した駅は、桜宮家別荘地二階駅ぃ。桜宮家別荘地二階、子供部屋駅に到着です~」