列車は、何事もなかったかのように走り出した。
男は少年の向かいに腰かけた。青年は向かい合う二人の間に立ったまま、おもむろに煙草を取り出す。
「父さん、車内は禁煙ではないのですか?」
「今日だけは俺が機長なの。ルールは俺が決める」
青年は言い切ったあと、若々しい顔に不似合いな、歳老いた男の怪訝そうな表情を浮かべて少年を見た。
「で、坊や。さっきの質問なんだけどよ、望むのならきっと叶うぜ? 夜行列車は、お前が願い望んだ場の、スタート地点へと導いてくれるだろう。けど、いいかい? 頑張るのはお前なんだ。奇跡だの運命だの、魔法だのをあてにしちゃあいけねえ。決めるのも進むのも、お前自身だ」
くわえ煙草に火もつけず、青年は唇の端を引き上げた。
「どうするよ」
「ぼ、僕は……」
急に回答を求められて、ついしどろもどろになった時だった。
男が咳払いを一つして、少年の注意を自分へと向けさせた。
男は少年の向かいに腰かけた。青年は向かい合う二人の間に立ったまま、おもむろに煙草を取り出す。
「父さん、車内は禁煙ではないのですか?」
「今日だけは俺が機長なの。ルールは俺が決める」
青年は言い切ったあと、若々しい顔に不似合いな、歳老いた男の怪訝そうな表情を浮かべて少年を見た。
「で、坊や。さっきの質問なんだけどよ、望むのならきっと叶うぜ? 夜行列車は、お前が願い望んだ場の、スタート地点へと導いてくれるだろう。けど、いいかい? 頑張るのはお前なんだ。奇跡だの運命だの、魔法だのをあてにしちゃあいけねえ。決めるのも進むのも、お前自身だ」
くわえ煙草に火もつけず、青年は唇の端を引き上げた。
「どうするよ」
「ぼ、僕は……」
急に回答を求められて、ついしどろもどろになった時だった。
男が咳払いを一つして、少年の注意を自分へと向けさせた。