どうしてこんなに臆病な性格になってしまったのかは、香澄自身わからない。
物欲のない幸せすぎる環境のせいなのか、香澄はそれが不意に壊れてしまうのではないか、という恐怖を持っていた。
家や会社は暖かく、外はアスファルトの冷たさがまでもが身に染みる。路上で擦れ違う人間は誰もが無関心で、風は異国の匂いを孕ませている。そこから正体のわからぬ不安がどっと押し寄せてきて、都会の一角にある香澄の大事な場所を壊してしまうのではないかと日々怯えた。
香澄は、両親と会社の社員たちが好きだった。何も失いたくはなかった。
物事を敏感に察知して、必要以上に気を使ってしまう子どももいる。香澄はまさにそれで、楽しいけれど辛い仕事に励む両親を、決して引き止めはしなかった。
香澄は幼い日、自分が出来ることを日々探した。模索しているうちに、自分にはほとんど何も出来ないのだと思い知った。
物欲のない幸せすぎる環境のせいなのか、香澄はそれが不意に壊れてしまうのではないか、という恐怖を持っていた。
家や会社は暖かく、外はアスファルトの冷たさがまでもが身に染みる。路上で擦れ違う人間は誰もが無関心で、風は異国の匂いを孕ませている。そこから正体のわからぬ不安がどっと押し寄せてきて、都会の一角にある香澄の大事な場所を壊してしまうのではないかと日々怯えた。
香澄は、両親と会社の社員たちが好きだった。何も失いたくはなかった。
物事を敏感に察知して、必要以上に気を使ってしまう子どももいる。香澄はまさにそれで、楽しいけれど辛い仕事に励む両親を、決して引き止めはしなかった。
香澄は幼い日、自分が出来ることを日々探した。模索しているうちに、自分にはほとんど何も出来ないのだと思い知った。