「うまいぜ」
「……見たこともないお菓子ね」
「大人はお菓子なんて食わねえだろ。だから知らないんだ」
「そうね。食べたことないわ」
香澄は、褪せた色彩のプリントがなされた菓子の包みを開けた。『うまい棒』に似ているけれど、大きさはそれよりも一回り小さく、食べてみると質素な味が口の中に広がった。菓子の包みの裏を見やると、やたらと見慣れない標示で漢字が多い。
「この会社、聞いたことないけど……」
「ったく、大人ってのは、すぐ製造会社とか知りたがるんだ」
侮蔑が込められた言葉だった。
「ごめんなさい」
気を悪くさせてしまったらしい。香澄は素直に謝った。少年はすっかり調子が狂ったように唇をすぼめる。
「別に、いいけどよ」
列車は、変わらず凍える暗闇の中を走り続けていた。
「それ、遺骨だろ」
少年がちらりと盗み見した。香澄は「そうよ」と頷いて見せる。
「なんか、訳ありって感じだな」
「でも、遺骨だってよくわかったわね」
「……見たこともないお菓子ね」
「大人はお菓子なんて食わねえだろ。だから知らないんだ」
「そうね。食べたことないわ」
香澄は、褪せた色彩のプリントがなされた菓子の包みを開けた。『うまい棒』に似ているけれど、大きさはそれよりも一回り小さく、食べてみると質素な味が口の中に広がった。菓子の包みの裏を見やると、やたらと見慣れない標示で漢字が多い。
「この会社、聞いたことないけど……」
「ったく、大人ってのは、すぐ製造会社とか知りたがるんだ」
侮蔑が込められた言葉だった。
「ごめんなさい」
気を悪くさせてしまったらしい。香澄は素直に謝った。少年はすっかり調子が狂ったように唇をすぼめる。
「別に、いいけどよ」
列車は、変わらず凍える暗闇の中を走り続けていた。
「それ、遺骨だろ」
少年がちらりと盗み見した。香澄は「そうよ」と頷いて見せる。
「なんか、訳ありって感じだな」
「でも、遺骨だってよくわかったわね」