「乗車一名の予定なんだが、ここで夜行列車を呼んだのはお嬢ちゃんじゃないのかい? ほら、ポケットに切符が入っているはずだよ」
「素人はこれだから困る」
ずんぐりとした男が、口元に深い皺を刻んだままむっつりと言った。
香澄は慌ててコートのポケットに手を突っ込んだ。
そこには、硬質なカードのような感触が指先に触れた。まさか、と思って恐る恐る取り出してみると、それはカードほどの大きさと形をした銀白の切符だった。
「お、こりゃあ上等もんを持ってるなあ。高かっただろうに」
香澄は、意味が分からなかった。
「え? い、いつの間にか財布から支払われてここにあるということ? ほんと、いつの間に……」
「いいから乗りな。夜行列車は長居無用だぜ。いろいろなところを走り続けているんだ」
香澄は、慌てて駆け寄った。
大きな男の方が無言のまま、香澄の腕を取って引き上げた。背後で硬質な音がして扉が閉まる。
「素人はこれだから困る」
ずんぐりとした男が、口元に深い皺を刻んだままむっつりと言った。
香澄は慌ててコートのポケットに手を突っ込んだ。
そこには、硬質なカードのような感触が指先に触れた。まさか、と思って恐る恐る取り出してみると、それはカードほどの大きさと形をした銀白の切符だった。
「お、こりゃあ上等もんを持ってるなあ。高かっただろうに」
香澄は、意味が分からなかった。
「え? い、いつの間にか財布から支払われてここにあるということ? ほんと、いつの間に……」
「いいから乗りな。夜行列車は長居無用だぜ。いろいろなところを走り続けているんだ」
香澄は、慌てて駆け寄った。
大きな男の方が無言のまま、香澄の腕を取って引き上げた。背後で硬質な音がして扉が閉まる。