角ばったプレートには『夜行列車』と金色の装飾で明記されていた。
真新しいレールに収まった、重々しい機体と車輪の間から蒸気が上がっている。
その列車には、小さな窓がいくつも並び、後方は闇の中に溶けて見えないほど長かった。
(どうしてこんなものが、街中に……)
様子を観察しつつ先頭車両を目指して歩いてみた。
機関室の窓だけが、明るい電灯を灯して開いていた。白いシャツに、見慣れない機関帽をかぶった若い男が顔を覗かせている。
「さあさあ、夜行列車はもうじき発進するよ! お嬢ちゃん、乗るのかい? 乗らないのかい?」
やけに古い言い方をする青年だった。小麦色に焼けた肌に、楽しそうに笑った口元からは白い八重歯が覗いている。
奥にはもう一人別の男がいた。彼はずんぐりとした身体に肌着を覗かせた着流しをはおり、顔を隠すように深々と軍帽を下ろしている。
「夜行、列車……?」
香澄は、知らず知らずに呟いた。
青年が表情豊かな顔を顰め、馬鹿を見るような具合に片眉を引き上げた。
真新しいレールに収まった、重々しい機体と車輪の間から蒸気が上がっている。
その列車には、小さな窓がいくつも並び、後方は闇の中に溶けて見えないほど長かった。
(どうしてこんなものが、街中に……)
様子を観察しつつ先頭車両を目指して歩いてみた。
機関室の窓だけが、明るい電灯を灯して開いていた。白いシャツに、見慣れない機関帽をかぶった若い男が顔を覗かせている。
「さあさあ、夜行列車はもうじき発進するよ! お嬢ちゃん、乗るのかい? 乗らないのかい?」
やけに古い言い方をする青年だった。小麦色に焼けた肌に、楽しそうに笑った口元からは白い八重歯が覗いている。
奥にはもう一人別の男がいた。彼はずんぐりとした身体に肌着を覗かせた着流しをはおり、顔を隠すように深々と軍帽を下ろしている。
「夜行、列車……?」
香澄は、知らず知らずに呟いた。
青年が表情豊かな顔を顰め、馬鹿を見るような具合に片眉を引き上げた。