電話を終える頃には、ぐったりと疲れていた。

 今から五年前、桜宮家から初めてお見合いの通知が来たことを思い出す。四年前には二度目の催促をされ、両親とともにホテルへ赴いたのだ。

 ――どうして、お見合いの招待状が自分にも来たのか。

 すべては、あれから始まったのだと香澄は思った。

 なんとなくだけれど、自分と晃光の人生は、あきらかに接点をもたないはずだったような気がしてならない。

 母の死や会社の閉鎖、父の病気、そのあとで自分は普通のOLをして、平凡な人生を歩んでいくだろう。

 晃光が入って来ないその人生の方が、香澄は想像しやすかった。

       ◇◇◇

 父は香澄の誕生日を見送って安心したように、その翌週に倒れて病院へ運ばれた。

 容体は悪化し、はじめに宣告された余命の期日がより早まった。

 それでも夏をどうにか過ぎ切り、香澄と一緒に病室で秋を迎えた。穏やかな涼しさを含んだ秋は、しだいに冷たさを増してきていた。

「雪、降るかなあ」

 父は時々窓を眺めては、明日の天気を述べるように自分のことを語り出すのだ。