思考は、はじめの疑問に戻ってしまった。晃光に対して、会いたいと思っている自分がいるのか、父のように傍にいたいと思っているのか――。

 けれど、今は、じっくりと考えてもわからなかった。

 香澄は指輪をしまった。家に戻ると、計ったように晃光の母親から電話が入った。誕生日の祝いを形式的に述べ、晃光には相応しい女性の候補がいるのだと淡々と続けた。

「晃光が女性に優しくなったこと、あなたにはとても感謝しているのよ。人に対する気遣いが見えるようになったわ。人付き合いも以前よりぐっと多くなって、――そうそう、よく親しくしている女性がいるのよ。あなたと会えなくなって当然だわ、あの子はね、彼女と楽しそうにしていたもの。付き合いがてらのパーティーの出席なんてあたり前でしょう? 晃光は、それはそれは注目されていますからね。あの子も、もう三十二歳になるわ。そろそろ結婚してもいい頃合いだと思うのよ。貴女はまだ若いものね、すぐの結婚なんて考えられないでしょう?」