変えようもない未来が、そこにはあった。

 泣いて喚いてもどうにもならないことを、香澄は母の死後に悟っていた。

 年を越す前、二度ほど晃光から電話が入った。何者かに急かされるように話しながらも「会いたい」と悲痛に訴えてきた。

 香澄は、電話越しで小さく首を横に振った。

「忙しいのでしょう? 私は平気よ」

 比較的柔らかい降雪量をぼんやりと眺め、香澄は言葉を切った。

 その夜には、晃光の母親から電話があり、くどくどと説教のような言葉を受けた。

 香澄は疲れ切ってしまっていた。それでも父が大切だった。少しの野菜と、やっこ豆腐の入った味噌汁、柔らかい白米が少々と漬物。そして、一日の合間に何度かは果物を切って父に食べさせる日々が続いた。

 林檎や梨はもう、父には固すぎるので砂糖で少し蒸して柔らかくしていた。それを口にすると、父はとても幸せそうに笑った。