恋というのは、理屈や理論で通るものではないらしい。
「恋をする予定はないのですが……してみないと分からないものだ、ということは分かりました」
「おいおい、香澄ちゃん、相変わらず真面目だねぇ。おじさん心配になってきちゃったよ」
「心配はご無用ですよ。あっ、お父さんにあまりおつまみはあげないようにね。晩御飯で取る塩分を考えると、オーバーしてしまうわ」
「お母さんに似てしっかり者になったなあ」
「ええぇ、酒は飲んでないし、もう少し南原と食べたいんだが……」
「だめです」
香澄は少しだけ心が軽くなって、そう父達に笑い返した。
退院してしばらく、晃光から音沙汰はなかった。
父の退院の日に祝いの言葉をもらったきりだったが、寂しくはなかった。父との二人きりの生活を楽しむことが出来た。
(――寂しい、なんて。まるで私が特別に想っているみたいではないの)
そんな関係ではない。二人は、たまたま――いや、彼がお見合いで、妙なことに、自己紹介を見ただけで婚約を望んでしまったせいだった。
◇◇◇
「恋をする予定はないのですが……してみないと分からないものだ、ということは分かりました」
「おいおい、香澄ちゃん、相変わらず真面目だねぇ。おじさん心配になってきちゃったよ」
「心配はご無用ですよ。あっ、お父さんにあまりおつまみはあげないようにね。晩御飯で取る塩分を考えると、オーバーしてしまうわ」
「お母さんに似てしっかり者になったなあ」
「ええぇ、酒は飲んでないし、もう少し南原と食べたいんだが……」
「だめです」
香澄は少しだけ心が軽くなって、そう父達に笑い返した。
退院してしばらく、晃光から音沙汰はなかった。
父の退院の日に祝いの言葉をもらったきりだったが、寂しくはなかった。父との二人きりの生活を楽しむことが出来た。
(――寂しい、なんて。まるで私が特別に想っているみたいではないの)
そんな関係ではない。二人は、たまたま――いや、彼がお見合いで、妙なことに、自己紹介を見ただけで婚約を望んでしまったせいだった。
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